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side.L 第15話:カラオケに行くわ 後半

 そうして曲を選ぶ機械に入力したのはアニソンというジャンルの曲だった。意を決して曲を流そうとしたとき、横から入力画面を見ていた姫子が口を開いた。


「あ、その曲知ってるよ。こないだまでテレビで放送してたアニメだよね。異世界物のやつ。私、異世界物のアニメとか小説とか最近ちょっと気に入ってて観てたんだ」

「い、異世界!?」


 突然姫子の口から異世界という言葉が出てきて、私は非常な驚きを見せてしまった。姫子はリノスの事なんて知らないはず。なのになんで異世界なんて言葉が姫子の口から出てくるの?


「え、どうしてそんなに驚くの?海入君はそのアニメを観てたんじゃないの?」

 姫子は不思議そうな顔をしている。待って、これは何か話が噛み合っていないわ。一旦冷静になって考えなきゃ。

 よく考えれば、海入が異世界という言葉を知っているから私も理解できるのよね。じゃあこの世界には異世界という言葉の概念が一般的に存在しているということ?というか、海入の記憶のそのアニメを探ってみれば分かることよね。

 私は頭をフル作動させて、そのアニメをざっと確認する。ああ、やっぱりこれはリノスとはまた別の異世界の話なのね。日本ではこういう想像上の異世界を扱った文学作品が数多く存在しているのね。なんて紛らわしいの・・・。

 まあ今はそんなことに文句を言っている場合ではないわ。今はごまかしよ、ごまかし。ああもう、私はこの世界で何回ごまかせばいいのかしら?先が思いやられるわ。


「あ、いや、もちろん観てたよ。ただ、姫子がこのアニメを観てたのが意外だっただけなんだ」

「えー、そんなに意外だった?まあ確かにこういう作品に目を通すようになってまだ日は浅いけどね」


 私も慣れたものね、簡単に姫子を納得させられたわ。でも、いつまでもこうして姫子に対してごまかし続けるっていうのはあまりいい気分になれないわね。いっそのこと私がリノスから来たってことを全部話してしまおうかしら?異世界の話が好きなら理解してくれるかも・・・、いや、むしろ作り話にしか聞こえなくて変人扱いされるだけよね。

 リスクのある選択はできないわ。姫子とはこれからも仲良くしていきたいし、極力怪しまれるような発言をしないように気を付けるしかないわね。

 そうと決まればちゃんとこの場に合った行動を取らないと。


「何にせよ姫子が俺と同じ趣味なのは嬉しいよ。今度そのことについても話したいな。それとこの曲、姫子も知ってるなら一緒に歌おう」

「そうだね。この曲、デュエットソングだし。えへへ、海入君とデュエットなんて嬉しいなあ」


 ああ、この曲、二人で歌う奴だったのね。ちょうど良かったわ。

 それからは私も歌うことに集中したわ。メロディーは海入の記憶頼りだったし正直ちゃんと歌えている気はしなかったけれど、そんなことお構いなしに軽快な音楽に乗せて大声を出して歌うことはとても楽しかったわ。




「海入君、今日は本当にありがとう。私が落ち込んでたから励ますために誘ってくれたんだよね?」

時間が来てカラオケは終了し、姫子が帰るための駅に向かっている最中に姫子はそう言った。

「バレてたのか。でも、始めは確かに姫子のためにって思ってたけど、俺も心がモヤモヤしてたのがかなり晴れたし、結果的に俺の方が助けれらたかもな」


 音楽の良さを教えてもらったことも含めてね。


「そうだったんだ。・・・そのモヤモヤって、やっぱり神楽のことだよね?」

 結構鋭い。姫子にとって神楽は今でも大切な友達だから、気になるのかもしれないわね。

「そうだよ。宇水さんには嫌な気持ちにさせられた。でも、彼女は何か大きな悩みを抱えている、それは間違いない。俺はまだ本当の彼女を知らないし、ちゃんと彼女と話をするまで俺のモヤモヤは解消されないと思う。

 彼女は他人と関わりたくないみたいだったし話をするのは無理だと思っていたけど、今日こうやって姫子と一緒に居て考えも整理できて、まだ何とかなりそうな気がしたんだよ。だから、明日勝負に出てみようと思うんだ」

「勝負に出るって、一体何を・・・。ううん、分かった。私を気づかってくれたみたいに、海入君なら神楽のことも助けてくれると信じるよ。私に手助けできることがあったら何でも言ってね」


 随分と信頼されたものね。私が考えているのはそんな確実なものじゃなくて博打もいいところなのだけれど。でも、期待されているからには何としてでも神楽に思いの丈を話させてみせるわ。


読んで下さってありがとうございます。

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