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side.L 第14話:カラオケに行くわ 前半

 図書室での一件があってから一週間が経過した。

 あれから心の中がモヤモヤしっぱなしだわ。確かに宇水さんの態度には問題があったとは思うけれど、姫子の訴えへの反応を見る限り彼女が何か大きな悩みを抱えているのは間違いないはず。あそこは落ち着いて会話を求めるべきだったわ。

 お陰で授業にも集中できなくて、今日も数学の壁を乗り越えることはできなかったわ。


「海入君、今日も一日お疲れ様・・・」

 後ろの席から姫子が話しかけてきた。姫子もあの件ですっかり元気が無くなっちゃったわね。事の切っ掛けを作ったのは私だし、せめてどうにかして元気を取り戻させてあげられればいいのだけれど・・・。ちょっと遊びにでも誘ってみようかしら?


「お疲れ、姫子。良かったら今日の帰りに寄り道していかない?」

「あ、うん、いいよ。それでどこに行くの?」

「姫子が行きたいところがいいかな。姫子がどんなことに興味があるのか知りたいし」


 姫子が好きなところへ遊びに行く。それが手っ取り早く姫子に元気を出させることができる方法だと思うの。それに姫子の行きたい所なら女の人がいないといけないような場所の調査もできるかもしれないし。私は今は男の姿だものね。


「えっ、私がいきたいところかあ・・・。じゃあ、カラオケとかあんまり行ったことが無いし行ってみたいかな」

 カ、カラオケ!?それって歌を歌いに行く場所よね。歌なんて私にとっては数学と同じで、役に立たないからあまり関わりたくないものなのだけれど・・・。でも、この世界ではそんな認識は全然ないみたいね。高校という勉強する場所でまずやったことが校歌斉唱だったくらいだもの。

 いいわ、今日は姫子のために動くって決めたんだから、カラオケでもなんでも付き合ってみせるわ!


「分かったよ、それじゃカラオケに行こう!」



 

 そして姫子とカラオケ店にやって来たわ。歌を歌うだけの施設なのにこの世界の建造物の類に漏れず立派な作りになってるわね。歌うための部屋の間は分厚い壁で仕切られていて、声を拡大するためのマイクという機械を使って歌っても声が他の部屋に聞こえないようになっているという徹底された空間に、私は呆れる他なかったわ。全く、どれだけ大声で歌いたいのよ。

 というか、勢いできてしまったけれど、私ちゃんと歌を歌えるのかしら?地球ではもちろん、リノスでも歌ったことなんてない。知っている音楽自体、海入の記憶の中にあるものしかないわ。ああもう急に不安になってきたわ。ドリンクバーで色んな飲み物を飲んでみるのだけやって帰りたい。


「どっちが先に歌おうか?」

 姫子が聞いてきた。そうね、ここはまず姫子に歌ってもらって様子を見ないといけないわ。それで私にもやれるかを判断するの。


「姫子が先に歌ってよ。姫子が来たがってたんだからさ」

「分かった、お言葉に甘えるね」


 良かった、先に歌ってくれるのね。

 姫子が選んだ曲は、今年流行った有名女性歌手の歌みたい。音楽っていうと理解していない人が聴くと眠くなってしまう、上流階級の人間の娯楽ってイメージだった。でも、この音楽は何も知らない私でも何となく心が弾むような楽し気な作りになっているわ。楽しそうに歌う姫子の声も相まって、私の中の音楽の悪いイメージが一気に払拭されたわ。

 やがて音楽は終わり、姫子は満足そうにマイクを机に置いた。


「すごく良かったよ、姫子!姫子が楽しそうに歌う様子を見てたらこっちまで楽しくなってきたよ」

「海入君も楽しんでくれたんだね、良かった~。私、歌うのって結構好きなの。あまり上手くはないんだけどね」


 嬉しそうにそう言う姫子。正直私には歌の上手さとかは分からないわ。でも、最近ずっと落ち込んでいた姫子がここまで楽しそうにしているのだから何の問題もないわね。そう思った矢先、


「じゃあ、次は海入君の番だね。まだ曲を選んでいないみたいだけど、一体何を歌うのか楽しみだなあ」

 そういえば次は私が歌うことになっているんだったわ!姫子の歌に聞き入っていたから何も対策を練れなかったわ・・・。次も姫子に歌ってもらおうかと思ったけれど、姫子はすごく気を遣う人だから自分だけ連続で何回も歌うなんてできないわよね。

 これはもう覚悟を決めて歌うしかないわね・・・。曲は一体どれがいいのかしら?そんなの考えても分からないし、ここは海入のセンスに任せて海入が一番気に入ってる曲にするわ!


読んで下さってありがとうございます。

活動報告で作品タイトル変更について書いてます。

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