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第5話:王城にて その3

「さて、国王としての心意気も固まった。余は今一度、国民を第一として行動しよう。カイリよ、余はお主に魔法を使わねばならぬ。この国の外にお主が持つ知識を漏らさぬためにな。

 この封印魔法はお主が我が国以外で行う発言と行動に著しい制限をかけるものだ。これはお主にとって枷になるであろうが、外部の連中に狙われることを防ぐことにも繋がるため保護することにもなる。受けるがいい」

 国王は厳格な面持ちとなり、側に控えていった鞭を握った女性に目配せをした。うん、この有無を言わせぬ感じ、国王っぽくていいね!

 ・・・って、っそんなことを考えている場合じゃない。封印魔法をかけるって言って何で魔法使いじゃなくて鞭使いが出てくるの?もしかして封印魔法という名の物理的調教をされる!?それで悦ぶ人も居るだろうけど、俺には生憎そんな趣味はない。いくら相手が美人さんだからってこんな大勢が見ている前でSMプレイなんて嫌だ!

 今更逃げ出すことなんてできないとは分かっていながらも、目の前で女性に鞭を振り上げられ、思わず身構え目をつむる。そして次の瞬間、バシィィィン!という音とともに体中に痛みが!・・・走らなかった。

 何が起こったのか分からず恐る恐る目を開けると目の前には鞭を地面に叩きつけた状態のまま、


「終わりました」

 と告げる鞭使いの女性の姿があった。


「ご苦労だった」

 国王も淡々と告げる。

 えっと、物理的に調教されるなんて思ってた俺が馬鹿だった感じか?別に魔法使いじゃなくても魔法を使えるんだね。

 調教なんて嫌だと思いつつも、一発くらい食らってみたかったなんて今更思う自分もいるような・・・ってそんな趣味はないだろ!と気を持ち直す。


「封印魔法はこれで終わりだ。次はお主を保護するための刻印魔法を余が直々にお主に施す。心して受けよ」

 え、刻印魔法?聞いてないけど、この体は5年後にルティアが戻ってくるための大切な体でもあるんだから、その時まで守らなきゃいけないんだった。ていうか、国王も魔法を使えるんだな。

 案外誰でも魔法を使える世界なのか?魔法は異世界の醍醐味だしその辺は詳しく知りたいところだ。

 そう考えている内に国王が玉座から立ち上がり、手に握った凶悪なハンマーを高く振り上げた。え、まさかその全てを破壊し尽くしそうなハンマーで保護って嘘だろ?破壊と創造は表裏一体とかそんな馬鹿げた話もあるまい。

 しかし目の前には振り上げられたハンマー、それを今にも振り下ろさんとする国王。もうヤバい気しかしないけど、今はこの国王信じるしかない。気を引き締めてことの次第を待つ。

 一瞬気合をためた国王は、神速の勢いで俺の目の前にハンマーを振り下ろした。次の瞬間、ドゴォォォンという轟音とともに、一筋の閃光がハンマーから放たれた。

 その後、国王は何事もなかったかのようにハンマーを肩に担いで玉座へと座りなおしたのだった。


「これでもしお主の身に重大な危険が迫ったとしても、余程のことがない限り死ぬことはない。お主にかける魔法は全て終わったが気分はどうだ?」

 おお、やっぱり今のが魔法なのか。魔法の時は目をつむっていてよく分からなかったけど、今回は魔法!って感じが伝わった。それにしても・・・、


「気分はどうだとも申されましても、目の前で鞭やらハンマーやらを振るわれてその衝撃に身がすくむ思いだとしか・・・」

 今回も率直に感じたままに言ってみた。


「ふっ、強引に魔法を使われて不快な思いをしているかと思ったが、やはり中々に面白い奴だ。お主が我が国に定住する以上、お主は余の国民だ。何か困ったことがあれば余を頼るがいい」

 また何か都合よく受け取られたみたいだ。というか、さっきの刻印魔法って、転身の体で大切だというだけじゃなくて、国民を守るって意味合いもあったのかな?だとすればやっぱりこの国王はすごいお方だ。


「さて、取り急ぎ行わねばならぬことは終わったが、知っての通り余はお主が持つ異世界の知識に興味がある。どのようなことでも構わぬゆえ、異世界のことを教えてくれぬか?」

 そっか、そうだよね。元の世界での知識のために呼ばれたんだ。俺も今ではこの国のためになることなら何でも話そう、という気になっていた。しかし・・・、


「あの、私のいた元の世界のことをお話ししたいのは山々なのですが、まだこちらの世界の記憶が定着しておりません。こちらに何があって何がないのかを熟知してから話すのが一番良いのではないかと愚考いたしますが、如何でしょうか?」

 そう、こちらの世界のことをよく知らないと、何を話せばいいのかが分からないのだ。焦る必要が無いのなら、もう少し時間をおいてからでも問題ないはずだ。


「なるほどな。それならば仕方あるまい。異世界の知識についてはまた後日、ということにしよう。では、お主がどのような人間かについて語ってもらうことにしよう」

 よしよし、分かってくれた。と思ったら、俺がどのような人間かだって?ただの田舎者の高校生なんだけど。

 でもまあ何も話さずに城を発つよりはと思い、話すことにした。

 日本という国の田舎で生まれたこと、変な向上心に流されて都会の高校に通っていたこと、そこで虐められていたことなど・・・

 良く考えれば話さなくてもいいことを話してしまった気がするが、あまりこの国王の前で隠し事をする気にもなれなかった。


「ふむ、お主の世界は魔物が居らずこの世界よりも安全だと思っておったが、それでも民を守り切れぬのか・・・」

 国王がそう言って憂いでいる。正直気にするところそこなの!?と突っ込みたいが、国を治めるものとしては気になるところなのかもしれない。俺へのいじめは軽いものだったけれども、日本ではいじめが原因の自殺が多発してるし、確かに注目すべき大きな問題点なのかも。

 あ、学校って言葉でふと思ったんだけど、俺ってこれから5年間はこの世界で暮らすんだよな。だったら元の世界に戻ったときに周りに大幅な遅れを取らされていることになるかもしれない。ルティアが俺の体でどういう風に過ごすのかは分からないけど、すごく優秀だからもしかしたら大手企業とかに就職しちゃってるかも。そうなったら凡人の俺じゃ仕事についていけなくなる!?どうなるのか分からないけど、そういった場合に備えて可能な限り自分を磨かないと・・・。そう思い至った俺は、国王に一つお願いしてみることにした。


「どんな世界も完全に安全なわけじゃなくて、何か問題を抱えるものなんだと思います。そして私は元の世界の問題から解放されてこの世界へとやってきました。そこで、もし願いを聞き届けて頂けるなら、私をこの世界の学校で学生生活をやり直す機会を頂けないでしょうか!?」


読んで下さってありがとうございます。



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