side.L 第12話:これは勉強会どころじゃないわ
この世界に来てから4日目になり、この日の授業が終わって放課後を迎えた。今から私と姫子と宇水さんの3人で図書室に集まって勉強会をすることになっているわ。
宇水さんが私に対して何か思うところがあるようだけれど、ほんと、一体何なのかしら?私が異世界の人間だってことがバレた、なんてことは流石に無いだろうけれど会って確認してみないといけないわね。
帰りのホームルームが終わり、私は姫子と一緒に図書室へと向かった。図書室に入ると、綺麗に棚に収納された大量の本が目に映った。娯楽としての文学作品が多いみたいだけれど、中にはこの世界の技術や知識について記されたものもあるみたいね。この世界の生活に慣れたら片っ端から読んで有用な情報を得たいところだわ。
でも、今は勉強会よね。宇水さんはもう来ているのかしら?私が周囲を探す前に姫子が口を開いた。
「あ、神楽、もう来てたんだね。ピアノの練習もしなきゃいけないのに付き合ってくれて本当にありがとう」
私は姫子が声を向けた先のテーブルで椅子に座っている女の人を見た。輝きを放つ綺麗な長い銀髪に目を惹かれる一方、彼女の瞳は鋭さと暗さを合わせ帯びた、姫子が言っていた通りの他人を寄せ付けない雰囲気を感じさせる物だわ。彼女が宇水さんね。海入の記憶にある最後の姿からはここまで悪い印象は受けなかったのだけれど。
「別に、私が気になることがあっただけから姫子に感謝される筋合いはないわ。
藤山君、あなたとは一年生の時同じクラスだったけれど、話をするのは初めてね」
冷たくそう言い放つ宇水さん。
「ちょっと、そんな言い方はしなくていいだろ。姫子は宇水さんに突き放されている気がして心を痛めていたんだぞ?」
「私のことはいいの。今日は神楽と海入君を引き合わせたかっただけだから・・・」
神楽の態度にムッとして少し喧嘩腰になってしまった私を姫子が引き留めた。
「確かに私の言い方が悪かったわね、謝るわ。それにしても、藤山君がそんなに強気な発言をしてくるなんて思わなかったわ。本当にあなたは変わったのね。一体何があって変わったのかしら?」
そう言って宇水さんは回答を促すように私を見つめてきた。でも、何があったかなんて言えるわけがないじゃない。異世界転身魔法で入れ替わってます、なんて言っても頭がおかしい人だと思われるだけだわ。
「何がって言われても・・・。夏休みの間に俺にとって都合のいい話が舞い込んできて、それに向けて色々頑張った結果こうなった感じかな」
即興で海入の生活と転身のことを織り交ぜて話を作ったわ。なんだかふわふわした話になっちゃったけれど・・・。
「都合のいい話?それってどういったものか聞いてもいい?」
宇水さんは再度質問を繰り出す。うぅ・・・結局そこに突っ込まれるのね。
「ごめん、ちょっとそれは話せないな・・・」
「そう、それなら別にいいわ。何にせよあなたは他人が切っ掛けで変わったってことね。それが分かればもう充分よ」
そう言うと薄井さんはもう私に興味がないと言わんばかりに私から目を逸らした。
「神楽、どうしてそうやって自分の中だけで完結しちゃうの?私、神楽が一人で悩んでいるのを見ていたくなんてないよ。ちゃんと話を聞かせてよ・・・」
姫子が目に涙を浮かべながら訴えかける。しかし・・・、
「悪いけど、私の問題は私にしか解決できないの。姫子にも、そして他の誰にも。今日こうやって藤山君の話を聞いてみたくなったのもほんの気の迷いだったと確信したわ。
そんなことより、今日は勉強会をするんだったわね。藤山君が数学で行き詰ってるって聞いているし、話を聞かせてくれたお礼に教えてあげるわよ」
姫子の訴えを歯牙にもかけず、神楽は勝手に話を進めていった。
「・・・自分で勉強会なんて雰囲気じゃ無くしておいて、よく言うよ。俺は友達のことも思いやれない人に教えを乞うつもりはない」
あまりに自分勝手な態度と物言いにカチンと来て私はつい拒否してしまったわ。
私がそう言うことを予想していたのか、冷たい表情を何一つ変えることなく宇水さんは、
「そう、じゃあもう解散でいいわね。私は帰るから、それじゃあね」
と言って席を立ち、引き留める暇もなく図書室から出ていってしまったわ。一体何なのよ、あの人は・・・。
久々のルティアサイド。
読んで下さってありがとうございます。
活動報告で後書きしてます。




