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第36話:イネとダイズ

 様々な店が立ち並び多くの人々が行き来する、王都で最も栄えている繁華街。


『何だか空気が湿っぽくなっちゃったし、模擬戦の祝勝会もまだやってないんだから、今から3人で繁華街に行くわよ!そこでパーッと遊びましょ、パーッと!』


 というジュイの提案があり、俺はセバリとジュイと共にそこへとやってきている。

 遊ぶという名目だが、この国の最先端を行くこの場所でももちろんカラオケ店やボウリング場なんてない。ここへ来たのは、ジュイがどうしても食べてみたい物があるから、ということらしい。


「あ、アレよ。あの屋台で売っている奴を食べたいのよ!」

 目をキラキラさせながらジュイが指で示した方向を見ると、そこにはピザ、フライドポテトなどが売られている屋台があった。

 正直、またジャンクフードかよ!と俺は思わざるを得ない。日本でもよく食べてたし、コマリさんの嗜好に合わせてミサさんが作りがちだし。


「わあ、僕、あまりこの辺りには来ないから見慣れないものばかりで新鮮だったけど、こんな変な食べ物まであるなんて、流石はこの国一の繁華街だね」

 セバリも興味津々だな。まあ、転身魔法のお陰でここ10年でこの国には大きな変革が起きているわけだし、この世界で暮らす人にとっては目新しいものがどんどん生まれているんだろう。

 各々ピザとフライドポテトを買い、適当な落ち着ける場所に座って食べ始めた。


「すごいわ、これ。薄いパン生地とチーズと燻製肉、これだけでも相性が良いのに、このケチャップっていう調味料がさらに味を強くしてて、とんでもなくおいしいものになってるわね」

「このフライドポテトっていうのも、カリっとした食感と程よい塩味でいくら食べても飽きない気がするよ。細切りのジャガイモを熱した油に入れるだけなら簡単に作れるし、父さんにも食べさせてあげたいなあ」


 ピザとフライドポテトを食べた二人はとても満足そうだ。俺の世界の物がここまで喜ばれるのはちょっと嬉しい。こんなに喜ばれるなら俺も何か二人に作ってあげたいな。

 でも、日本の料理を作るとなるとどうしても米と醤油が欲しい。元となる稲と大豆はミサさんに尋ねても聞いたことが無いと言われたし諦めかけていたけど、農家生まれのセバリと商人の娘のジュイなら何か知っているかもしれないしダメ元で聞いてみようかな。


「ねえセバリ、ジュイ。二人はイネとかダイズって作物を知らない?イネは小麦の仲間で、ダイズは豆の仲間なんだけれど」

 ルティアが知らない言葉なのでバリバリの日本語を使わざるを得なかった。言ってから気付いたけど、これじゃ絶対伝わらないよな。


「イネ?ダイズ?農作物の事なら結構自信があるけど、そんなのは聞いたことが無いなあ」

「あたしも知らないわね。国中で商売をしてきたお父様なら何か知っているかもしれないけど、そもそもそんな作物があるの?」


 案の定、何も知らないと言う二人。うーむ、自分にとって馴染みのある言葉が伝わらないのってなんだかもどかしい。


「私も詳しくは知らないんだけれど、イネって言うのは水に浸かった状態で育つ小麦で、小麦よりも背が低いわ。ダイズは親指の爪くらいの大きさの豆で、一つのさやに3粒入ってるのが普通ね。昔、この二つの作物がすごくおいしいって噂を聞いたことがあって、それがあれば皆でまた新しくておいしいものを食べられるかもって思ったの。でも、二人が知らないのならやっぱり無いのかしら」

 怪しまれないようにあくまで人から聞いたと言う体で特徴を説明した。


「へぇ、小麦って水に弱いのに、イネっていう仲間は水で育つんだ。そういえば、小麦に似た見た目なのに小麦と同じような育て方をしたら全然育たなかった植物があるって聞いたことがあるよ。今度実家に帰ったら父さんに確認してみるよ」

「私も、今聞いた特徴をお父様に話したら何か分かるかもしれないわね。おいしいなんて言われたらすごく気になっちゃったし、私も探すのに協力するわ」


 二人とも興味を示してくれたみたいだ。セバリは何か心当たりがあるみたいだし、これはまだまだ諦める段階じゃないな。

 この二つの作物が手に入れば、俺の、ひいてはこの国の食生活が大幅に改善されるだろう。俺はそんな野望を抱きながら、3人での祝勝会を楽しんだのだった。


読んで下さってありがとうございます。

活動報告で後書きしてます。

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