第35話:友人への説明
俺が物思いに耽っている間に世界史の授業は終わっていた。記憶を探るのに夢中で全然内容を聞いていなかったな・・・。
「ルティア、大丈夫?なんだか授業の間、ボーっとしてたみたいだけど」
セバリが心配そうに話しかけてきた。ああ、俺が授業を聞いていないのがバレていたか。
「今日の内容は既に勉強済みのところだったから、気が抜けてただけなの。だから別に大丈夫よ」
多分ね。でも授業の進め方って先生によって結構変わるし、歴史なんて特に先生の好みによって熱を入れる分野が違うイメージがある。やっぱりちゃんと聞いておいた方が良かったかな?次からは気を付けよう。
「ルティアって本当に不思議だね。僕よりも2歳も年下なのにレベルはこのクラスで一番高いし、勉強もすごく進んでるし。一体この学園に入る前は何をしてたの?」
「そうよ!前ははぐらかされちゃったけど、今日こそはあなたのことを話してもらうわ!」
セバリの疑問にジュイも急に割り込んできて便乗した。
もう言い逃れはできない状況だが大丈夫、この展開は読めていた。だから返答は先に用意してある。
「そんな問い詰めなくても、今日はちゃんと話すわ。二人は王立孤児院って知っているかしら?地方から選び抜かれた孤児たちに英才教育を施す施設なのだけれど、実は私も地方の孤児院から連れ出されてそこで教育を受けていたのよ。だから他の同年代の子たちよりも戦闘も勉強も先を行っているの」
転身魔法のことは国家機密なのでもちろん話せない。でも、嘘を吐き続けるのは俺の身が持たないので、ミサさんにせめて王立孤児院のことだけでも友達に話して大丈夫か聞いてみた。すると、王立孤児院の本質に触れなければ問題はないと言われた。本質とは、王立孤児院が素性が知られていない孤児特有の情報の秘匿性に注目して作られた、国の裏で暗躍する者を育成する機関であるということ。それが公になってしまうと王立孤児院にスパイを送り込まれる可能性があるので、さすがにその情報は広めてはいけないそうだ。
まあ、王立孤児院の表面上の顔については話しても問題ないのならそれで充分だろう。話の辻褄も合っているはずだし、これで二人にも納得してもらえるはずだが・・・。二人とも何も言わない。
そして何故か続く沈黙。あ、あれ?俺、何かまずい事言っちゃったかな?
「ルティアがまさかそんな大変な生まれだったなんて・・・」
「そうね、お嬢様だなんて勝手なことを言ってしまってごめんなさい。良い所の生まれどころか見守ってくれる両親すら居ないなんて思いもよらなかったわ」
ああ、なるほど。二人は俺のデリケートな話題に触れてしまったと思って反応に困っていたのか。俺自身が孤児院という施設に大した印象を持っていなかったから、それを聞いた人にどういう反応をされるかまでは思い至らなかった。ルティアの記憶を見る限りこの世界の地方の孤児院の環境は全く整っていないし、もっと留意しておくべきだったな・・・。
「そんなに気にしないで。私には両親についての記憶なんてないし、それが当たり前だったから孤児であることは大したことじゃないの。それに、こういう生まれじゃなければ二人と出会うことも無かったんだから、今ではこれで良かったって思えるの」
「ルティア・・・」
「もう、一番辛いのはルティアなのに、そんな気を使って。でもそうね、そんな過酷な人生を送ってきたあなたがこうして出会ったのが私たちなんだし、きっと運命の巡り合わせがあったに違いないわ。これからは皆で楽しくやっていくわよ!」
良かった。何とか雰囲気を明るくできた。せっかく仲良くなれたのに、これで距離を置かれていたら悲しいもんな。
それは良いんだけど、俺、勝手にルティアのデリケートな心情を話してしまったんだな。実際にルティアも両親については何も知らないのだが、そういう話を俺が勝手に他人に話すのは良くない気がしてきた。今回はもう過ぎてしまったことだから取り返しがつかないが、これからはもっとルティアの心に配慮した行動を心がけるべきだな。
俺は自分の思慮の足りなさを悔やみつつ、次からはもっとうまく事を運ぶよう心に誓ったのだった。
読んで下さってありがとうございます。
活動報告で後書きしてます。




