第27話:模擬戦 その2
俺も魔法を使った。今度はさっきみたいな極太の炎ではなく、相手の弓使いの腕の紙を狙った細い炎だ。セバリの結界は内側からの攻撃は通すようで、問題なく俺の魔法は発動される。
相手は結界を張れないから、届きさえすれば戦闘不能に追い込める。しかし・・・。
「甘いよルティアちゃん!」
弓使いが矢を射るのを止めると、突然俺の放った炎は勢いを失い、かき消されてしまった。
うーむ、なるほど、風の力で炎を防ぐ疑似的な結界を作ったのか。思ったより器用だなこいつ。
というか、炎魔法って、風魔法にかなり弱いんだな。これでは攻撃が通らない。でも、一つ思うところがある。
「あなた、結構強いのね。でも、その風魔法の使い方、結構MPの燃費が悪いんじゃないの?このままだといずれ、あなたのMP切れで私の炎が通っちゃうんじゃない?」
俺は相手の紙を狙ってできるだけMPの消費を抑えている。それに対して相手は俺の魔法をかき消すためにかなり強い風を生みだしているように見える。
「うん、そうだね。確かに俺の方が多くのMPを使っているみたいだ。でも、俺はルティアちゃんにかっこいいところを見せたいから、この根比べに絶対勝ってみせるよ!」
「あんたね、根比べってそういうのじゃないでしょ・・・」
何か馬鹿のことを言い出した相手の弓使いに、ジュイが呆れている。
でも確かに、見るからに分が悪い消耗戦に乗るというのは、意味が分からない。それに、相手に少し余裕が見えるのが気になるな。
相手の弓使いの弓が放つ光もそろそろMPの限界を示している。何もなければこのまま押し切れるのだが・・・。
「そろそろだな、『MPコンバート』!」
相手のナックル使いが呪文を唱えた。『MPコンバート』?なんだそれ?
何が起こるのかと警戒したが、こちらに何か攻撃がくる気配はない。そう安心したのも束の間、俺は重大なことに気が付いた。
「え!?弓の光が戻ってる!?」
これは完全にやられた。『MPコンバート』とは、自分のMPを消費して味方のMPを増やす魔法だったのだ。
ナックルの治療魔法は、基本的に味方の傷を治す『リカバー』しか使われない。ナックル適性自体が希少で治癒魔法を扱える者が少ないから、貴重な回復役としてリカバーの魔法ばかりが重要視される。
だから『MPコンバート』なんて魔法は殆ど認知されていない。それを逆手に取った奇襲戦法なわけだ。
「そ、そんな・・・。燃費の悪さをそうやってカバーするなんて・・・」
セバリも思いもよらなかったようで驚愕している。俺だけが知らないってわけじゃなくてよかった。
「だからさっき、馬鹿なことを言いながらも余裕だったわけね!何よ、そんな実戦で使わないような魔法で勝って嬉しいの!?」
ジュイがそうやってケチをつけた。しかし・・・。
「どんな手を使ってでも勝つのがこの模擬戦の流儀だ。実戦なんて状況次第でどう転ぶか分からないからね。常に柔軟な発想で臨まなければ勝利をもぎ取ることなんてできないんだよ」
弓使いはジュイの非難を全く受け付けない。得意気に正論を語るのが腹立つな。
しかし、見事にしてやられたのは間違いがない。まんまと相手の策にハマり、一気に劣勢になってしまった。
俺のMPも残り3割くらいしかない。このまま炎を放ち続けても俺のMPが先に切れ、すぐに矢の嵐が飛んでくるだろう。
こうなればこちらも奥の手を使うしかない。
読んで下さってありがとうございます。




