side.L 第8話:甘いものを食べてみるわ 後半
「そういえば、どうして姫子はいつも俺に朝の挨拶だけしてたんだ?他のクラスメイト全員にしてたわけじゃないみたいだけど」
「あ、えっと、それは私が海入君のことが気になってたというか・・・。別に変な意味じゃなくてね!?私、男の人が怖くて苦手なんだけど、海入君は他の男の人とは違って全然怖さを感じさせないっていうか、優しそうな雰囲気で安心できるの。だから、できれば仲良くしたいなってずっと思ってて」
あら、そういうことだったのね。その気になればいつでも姫子と仲良くなれたのに、海入はずっとその機会を逃してたのね・・・。
「俺、友達居なかったし、姫子がそう思ってくれてて助かったよ。なんでもっと早く気づいてあげられなかったんだろうって思う」
「それは私がちゃんと話しかける勇気がなかっただけだから気にしないで。
私も友達はそんなに多くなくて今はクラスに数人話し相手がいるくらいだし。中学から仲良くしてた子とは最近は疎遠になっちゃってるし・・・」
気まずそうにそう言う姫子。この世界には交友関係で悩んでいる人が多いのかしら。
「その中学からの友達って人とは今は離れ離れになってるのか?」
「いや、私たちと同じ高校に通ってるよ。宇水神楽って子。1年の時、海入君も同じクラスだったから知ってるよね。ピアノの天才だって有名にはなってるけど、頭も良くて綺麗で、正に才色兼備って感じなの。そんな子だけど、話してみるとすごく普通で話しやすかったの。でも、高校に入ってから段々と他人を寄せ付けない雰囲気になっていって、私も何だか話しかけ辛くなっちゃったんだ。できればまた前みたいに話したいんだけど・・・」
宇水神楽・・・ああ、あの人ね。去年の記憶の中に少しだけ彼女の姿があるわ。海入とは接点がなかったからどんな人かはよく分からないけど、姫子と友達だったのね。
それにしても、人ってそんな急に変わっちゃうものなのかしら。コマリもそうだったし、優秀な人ほどおかしくなる時は突然やってくるのかもしれないわね。
「宇水さんとは接点がなかったしあんまり詳しくは分からないけど、向こうもまた姫子と話したいと思っているかもしれないよ?ちょっとしたことでもいいから姫子から話しかけにいったらいいんじゃないかな」
「そう・・・なのかな。うん、そうだね。別に喧嘩とかをしたわけじゃないし、難しく考える必要はないのかな。ありがとう海入君、ちょっと勇気が出てきたから私から神楽に話しかけてみることにするね」
姫子は胸のつかえが取れたようにそう言って笑った。そうよ、難しく考えすぎると簡単なことも分からなくなるに違いないわ。解決策は意外と近くにあるかもしれないってことをいつも忘れないようにしていきたいわね。
今日はこれで解散、姫子を駅まで見送って私もアパートへと帰ったわ。
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