side.L 第5話:友達ができそうだわ
「おい、藤山ってあんなに強かったんだな・・・」
「噂だと体力とか全然ないって話だったけど・・・」
「いや、夏休みの間に変わったんじゃね?口調がオカマっぽくなってるし、ゴリゴリのおネエのところに修行しに行ったとか・・・。オカマは強キャラが多いしな」
教室に戻ると、さっきの私たちのやり取りを見ていたのか、あちこちからヒソヒソ声で私の話をしているのが分かった。
ああ、完全にやらかしてるわね・・・。ちょっとでも海入の恨みを少しでも晴らせればと思ったけど、これじゃ余計にクラスで孤立してしまうわ。
時すでに遅しかもしれないけど、これからはちゃんと男の口調で喋らないと。
そんなことを考えながら席へ戻ると、後ろの席の姫子が話しかけてきた。
「さっき、すごかったね。私、海入君があんなに強いだなんて知らなかったわ」
軽い上目遣いで私を見てくる。この状況で私に声をかけるだなんて、意外と度胸があるのかしら、この人。
「別に、あいつらが大したことなかっただけだよ。それよりも、この状況で私に声を掛けられる姫子の方がすごいと思うよ?」
今度はちゃんと海入の口調の真似をできたわ。
「ひ、姫子って、いきなり下の名前で呼んでくれるなんて・・・。い、いえ、今したいのはそういう話じゃないわ。
私、海入君に謝りたくて・・・。私、海入君があの男子3人に悪い噂を流されてることも、たまに囲まれて小突かれていることも知ってたの。だから、本当は先生に知らせるべきだったのに・・・。
私、あの3人にされていることを海入君はそんなに気にしてないんじゃないかとか勝手に思っちゃって。そんなはずはないのに、現実を見るのを避けてしまったの。
今日、海入君があの3人に抵抗したのをみて、私も現実を見なきゃと思えた。
だから、今まで見て見ぬふりをしてしまっていたこと、本当にごめんなさい・・・」
あら、この人そんな風に思っていたのね。じゃあ、それを気にして毎日声をかけてくれていたのかしら。そうね、こちらの世界で人と関わらずに生きていくのもなんだし、一つお願いしてみようかしら。
「見て見ぬふりをしていたのは姫子だけじゃなくて他のクラスの人も同じだし、そうやって自分を顧みれるだけ姫子は偉いよ。それに、今まで抵抗しなかった海・・・じゃなくて俺も俺だし。
でも、一つ、お詫びとしてというわけではないけど聞いてほしいことがあるんだけど。姫子、もし良ければ俺と・・・」
「え!?海入君、急にそんな・・・」
私が姫子の顔をじっと見つめてお願いを言おうとすると、姫子は顔を真っ赤にして固まってしまったわ。人のお願いを聞くだけでそんなに狼狽えるものかしら?よく分からないし、気にせず続けるわ。
「俺と、友達になってくれない?」
そう言って姫子の顔を見ながら反応を待つ。でも、姫子は動かない。どうして?ここで嫌だなんて言われたらさすがにショックだわ・・・。
「あの、姫子?」
「え、ああ!うん、友達、友達ね!?私も、海入君と友達になりたかったの。それで、海入君も同じこと考えてたんだと思って驚いちゃって・・・」
ああ、そういうことだったのね。断られるわけじゃなくて良かったわ。
「良かった。それじゃあよろしくね、姫子!」
「うん。よろしく、海入君!」
姫子は涙目になるほど喜んでいるし、二人とも同じ願いを持ってたなんて運命ね!
こうして、学校でいきなり孤立しかけた私は、運良く友達を一人作ることに成功したわ。
ルティアは恋愛にはかなり疎いです。




