第17話:海入の策
俺は今、台所にいる。そしてやろうとしていることはもちろん料理。俺はミサさんに俺が作りたい料理の材料を用意してもらっていたのだ。
この世界に来て食べたものは未だにホットドッグやピザなどのアメリカ系ジャンクフードのみ。早いうちに日本食を再現してこの世界に広める必要性があると感じた。
用意してもらったものは鶏肉、卵、砂糖、塩、小麦粉、油と野菜をいくつかだ。
砂糖は高級品だし卵も油も大量に手に入るものではないのだが、そこは国が関わっているので何とでもなった。
素材的には親子丼でも作りたい気分だが、残念ながら醤油とみりんがないし、何より米がない。だから今は再現が不可能なのだ。
今から俺が作ろうとしているのはから揚げと卵焼きだ。
鶏肉は一口大に切った後少しでも味をしみこませるために塩とすりおろしたショウガをもみ込んで一旦放置。その間に卵焼きを作る。
卵4個を器に割り、塩と砂糖と水を適量入れ、かき混ぜる。水はナイフ適性のあるミサさんが魔法で出してくれた。包丁が地味にナイフ扱いになるらしく、台所で包丁を扱いながらきれいな水を扱えるナイフ適性は家事をする人には必須級なのだそうだ。
ミサさんに手伝ってもらるのはかなりありがたい。ミサさんは日本料理に興味があるみたいで喜んで手伝ってくれている。
さて、次は熱したフライパンに油を敷く。火はなんと、携帯式のガスコンロが使えた。これは一度目の転身魔法の成果で、絶賛試用期間中のものらしいが、地球から来た俺の意見も参考にしたいということで使わせてもらえる。
次は、フライパンにかき混ぜた卵液を3分の1ほど流しこんでまんべんなく広げる。
適度に固まったのを確認して、フライパンの手前から奥に向けて木べらで巻いてゆく。
そして巻き終わったら、すかさず残りの卵液の2分の1をフライパンに流し込み同じく適度に固まったら一度目の卵に巻いていく。残りの卵液も同様だ。
フライパンで作るとどうしても形が不格好になってしまうが、端っこさえ切り落としてしまえば関係ない。俺が初めての異世界で作った料理、卵焼きの完成だ。
切った端っこを味見してみたが、結構うまくできたようだ。できれば醤油も入れたかったが大して問題はない。ミサさんにも味見してもらうと、
「あらまあ、素材は卵だけなんていうシンプルな料理なのに、甘くてまるでお菓子みたいなおいしさですね!」
とおいしそうに食べてくれてちょっぴり嬉しかった。
よし、後はから揚げだ。
フライパンに油をなみなみと注ぎ、熱する。
油が高温になるまでに、さっき仕込んだ鶏肉に小麦粉をまぶす。そして、油にぶち込む。
温度計がないので火加減をうまく調整できるか分からないが、そもそもいつも殆ど温度計を見ずに揚げる手抜きっぷりなので何とでもなるだろう。
こういうのは適度なタイミングで一番大きな肉を取り出して、中の色を切って確認すればいい。うん、ちゃんと火が通ってるし大丈夫だな。
から揚げも完成した。隣でミサさんが、
「フライドポテトに似た作り方ですねー」
なんて言っているが、またジャンクフードかよ。もしかしてミサさん、ジャンクフードにハマってるのか?だとしたらすぐに太ってしまうぞ。ぽっちゃりなミサさんも悪くない気はするけど。
何はともあれ、これで俺の料理は完成だ。後はミサさんがパンとサラダを用意してくれた。
これで準備は整った。俺がなぜここまで張り切って料理をしたかというと、自分が食べたかったというのもあるが、一番の理由はこの料理でコマリさんに心を開いてもらい俺の話を聞いてもらうためというのがあった。
食卓に料理が並び、ミサさんがコマリさんを呼ぶ。果たしてちゃんと食べてくれるかどうか、それが心配だ。
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