第16話:ミサの胸中 その3
「私、お姉ちゃんが変わっちゃうのが何だか悲しくて、どうにか昔の皆に優しいお姉ちゃんに戻ってくれないかな、なんて思っちゃったんです。
そして今から数か月前、王立孤児院に今回の異世界転身魔法の話が持ち込まれました。その話を聞いて、ルティアちゃんがしばらくお姉ちゃんの側から離れればお姉ちゃんも落ち着いて元に戻ってくれるんじゃないかって思って・・・。だから私、その魔法にはルティアちゃんが適任だって推したんです。本当は他にも数人候補に挙がっていた子供も居たのに。それでまず初めにルティアちゃんにその話がいってルティアちゃんも受け入れて、話は決まりました。
私の自分勝手でお姉ちゃんからルティアちゃんを引き離すようなことをして、ルティアちゃんを異世界に送りつけるようなこともして。それでもお姉ちゃんが昔のように戻ってくれるならって思ったんですが、実際はお姉ちゃんをただ苦しめるだけの結果になってしまいました。だから私、こんなことになるのなら皆に平等に優しくなくてもお姉ちゃんが幸せでいられるように、ルティアちゃんを引き離すようなことをしなければよかったと今になって後悔しているんです・・・」
また苦しそうに表情を歪めつつもミサさんはそこまで話してくれた。
なるほど、コマリさんが今みたいになっているのは自分のせいだとミサさんは思っているのか。魔法の対象者にルティアを推したってだけで気にしすぎな気がするけど、大好きな姉が辛い思いをしていると考えると軽く考えることなんてできないんだろうな。ミサさんからはお姉ちゃん大好き!ってオーラがヒシヒシと伝わってくるし。
「そういうことだったんですね。話してくれてありがとうございます。ミサさんがコマリさんのことをすごく大切に思っている優しい妹さんだってことは分かりました。だから、何か力になれることを思い出せないか、考えさせてください」
俺もルティアの記憶からコマリさんのことを探してどうすべきか考えてみることにした。
そして思い出されるのはルティアに対するコマリさんからの数々の愛情表現、頭をなでたり、抱きしめたり。座学や戦闘の訓練でも、ルティアに付きっきりで教えてしまう場面が多く見受けられた。
だがしかし、思い出されたのはそういったものだけではない。コマリさんはルティアと出会った直後辺りでは他の子供たちと同様に接している。だから、どこかで何かきっかけがあってコマリさんはルティアを特別扱いするようになったはずだ。それを入念に探ってみよう。
そうして、一つの気になる記憶に辿り着いた。倉庫で忙しそうに授業の準備をするコマリさん、そしてそれを手伝おうとするルティア。
『ここは色々な武器が置かれているから、子供には危ない場所だ。気持ちだけ受け取っておくから出ていきなさい』
『でも、先生一人じゃ絶対に大変よ。いつもこんなに大変な準備をしてくれていたなんて知らなかったわ。私、いつも先生に助けてもらってばっかり。だから、何かお返ししなきゃって思っていたの。お願い、私にお手伝いさせて?』
そんなやりとりが行われて、コマリさんも折れて手伝ってもらうことになった。それ以降、ルティアがコマリさんをことあるごとに手伝うようになっていく。
それからコマリさんがルティアと接することも増えていくし、原因はこれなんじゃなかろうか。
ルティアも心底嬉しそうに手伝っているのが分かる。きっとその純真な心にやられたんだな、コマリさん。俺からじゃ分からないけど、このルティアの神秘的なまでに整った顔立ちから放たれる満面の笑みは、とても恐ろしい破壊力を秘めていたのは間違いがない。
まあ原因はこれだとして、後はどうすればミサさんの力になれるかだが・・・。
「色々分かりました。そこで、ちょっと思いついたことがあります。ミサさん、用意をお願いしていたものって、もうありますか?」
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