第13話:始まる学園生活 後半
指定された席へと座った俺は、先ほど先生にセバリと呼ばれた隣の席の少年を見る。銀髪で眼鏡をかけたおとなしそうな少年だ。さっきも全く騒ぐ様子がなかったし、こういう子なら安心ができる
。
「えっと、セバリ君、で合ってるよね?聞いてたと思うけど、私ルティアっていうの。隣の席だから仲良くしてね」
よし、今度は落ち着いて挨拶ができた。自分を褒めてやりたい。
「う、うん、僕はセバリだよ。その、教科書見るんだよね?どうぞ・・・」
セバリはそう答えると、教科書を俺とセバリの席のちょうど真ん中に置いて、俯いてしまった。
あれ?もしかして第一印象が悪かった?自己紹介もグダグダだったし、さっきの挨拶も変だったのかもしれない。でもこれが俺の全力なんだよ!これが通用しないなら俺は本当に日本と何ら変わらない暗い学校生活を送ることになるぞ!
しかし、もう顔を合わせてくれそうにないので、仕方なしに「ありがとう」とだけ言って、授業を受ける姿勢に入ることにした。
しかし、この教科書を見せてもらうイベント、これは中々の罠だ。これを現実に行うと、当然一つの教科書の同じ個所を二人で見ることになる。この自分の視線と相手の視線が一点で交わる時間、どうにも相手の視線が気になってしまうのだ。直接目が合っているわけでもないのに。
セバリも同じも俺と同じ感覚に陥っているのか、時たま視線が交差すると、すぐに顔を赤らめてまた俯いてしまうのだ。
教科書を見せてあげる側なのだから堂々としていればいいのに、そうやって遠慮がちにしてしまう様子に親近感が沸く。
正直この時間を90分も続かせてしまうことに申し訳なさを感じたが、気が合いそうな感じがするので、セバリが隣の席で良かったと思う。
ちなみにこの文学の授業だった。眠くなる授業の代表格だが、俺は教科書と黒板に書かれたリノス語をきちんと理解できることに感動を覚え、初めの授業で眠るような失態は犯さなかった。
今日の授業が全て終わり放課後となった。文学の授業以外は俺ができるだけ教科書を見ずに黒板と先生の話だけで理解しようとすることで、セバリが授業に集中できなくなる事態は回避した。教科書をできるだけ見ないで授業に付いていくのは大変かと思われたが、意外と何とかなったと思う。何というか、頭がとても冴えているのだ。考える意識は俺の物のはずなんだけど、脳はルティアの物を使っているので、そのスペックのお陰ですんなりと理解ができるようだ。12歳の女の子に負ける元の俺の脳って・・・って、ここは異世界なんだから元々の体のつくりが違うかもしれないし、考えない方がよさそうだ。
「セバリ、今日は一日教科書を見せてくれて本当にありがとうね。それでなんだけど私、今日初めてここに来たから知り合いが誰もいないの。だからもし良ければ、私と友達になってくれないかしら?」
こういうことを言うのはかなりの勇気を必要とするが、俺は思い切ってセバリに言ってみた。するとセバリは、
「え、僕なんかでいいなら全然いいし、嬉しいよ。でも、ルティアちゃんにはもっと選べる人がたくさんいるんじゃ・・・」
と困惑気味だ。まあ自己紹介の時の反応を見るに、確かに俺に近づきたい奴はいるだろう、でも・・・、
「いいえ、私はセバリがいいの。多分私とあなたは気が合うと思うのよ。気が合うと思うから友達になりたい、それじゃダメかしら?」
もう一押しだと言わんばかりに俺はそう言った。
「ダ、ダメなんかじゃないよ!分かった。僕もルティアちゃんとは仲良くしたいし、そう言ってくれて本当に嬉しい。それじゃあよろしくね、ルティアちゃん」
セバリは顔を真っ赤にしてそういった。
やった!俺のことを嫌っていたわけじゃなかったんだ。それにしても、そこまで顔が赤くなるほど喜んでくれるとは、嬉しい誤算だ。
「うん、よろしくセバリ!」
こうして俺の異世界での学校生活の初日は、一人の友達を得るという快挙を成し遂げたのであった。沈んでいた気分もかなり元に戻った気がするな。
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