第10話:魔法と適性武器 前半
海入視点に戻ります。リノスでの二日目です。
人生で最も濃い夜が明け朝が来た。この世界に来て2度目の起床だ。
学校に通うのは明日からの予定なので、今日は完全にフリーだ。
一応俺は地球の技術などを色々と提案することを期待されているが、無理強いはされない。定期的に王都の研究機関と連絡を取り合えばひとまずはそれでいいらしい。日本にいるルティアがこの世界で取り入れるべき技術を勉強して帰ってくる手筈となっているので、多少遅くとも正確な情報として伝えられるのだ。だから、俺にはできる範囲での協力が求められるだけなのである。
ルティアの記憶は頭に入ったが、だからといってすぐに情報提供を求められるわけではないので今日は俺がやりたいことをやろうと思う。
異世界に来て一番気になるもの、それはやはり魔法だ。
この世界に来て初めて見た魔法は、王城で俺に使われた封印魔法と刻印魔法だ。明らかに魔法使いではない鞭使いの美女と国王が魔法を扱えていた。そのことが気になり、俺はルティアの記憶からこの世界の魔法に関する情報を引っ張り出してみた。すると、この世界にはそもそも魔法使いなんていう職業が無いことが分かった。
この世界で使える魔法は、全て武器に依存している。人にはそれぞれ一つだけ自分に合った適性武器というものが存在し、自分に適性のある武器に応じて使える魔法の種類が変わるのだ。
そして、適性武器に対応する魔法はこのようになっている。
剣=雷 速さと威力を兼ね備えており、もっとも攻撃的。
斧=地 地面を盛り上げて壁にしたり、泥沼を作って相手の動きを封じたりと、地面を色々操作できる。
ナイフ=水 水は生きるのに必須、飲み水として使う他に体を清潔に保つのにも使うので、川など水源がない環境では重宝される。
槍=炎 生活、戦闘両方で役に立つ。火は簡単には手に入らないので、町の中で火を売る槍使いもいる。
弓=風 風で矢の速さを加速させたり、敵の攻撃を受け流したりできるため、扱いが難しいが使いこなせば戦闘で活躍できる。
以上の属性魔法と、
棒=空間 移動に便利な転移魔法と空間を変質させる結界魔法を扱える。防衛の要。
槌=バフ 対象の能力を向上させる祝福魔法、能力を付与する刻印魔法を扱える。どんな仕事にも合うので引く手数多。
鞭=デバフ 槌の逆で、対象の能力を下降させる呪怨魔法と能力を奪う封印魔法を扱える。魔法としても武器としても扱いにくいが、意外とできること自体は多いみたい。
ナックル=治癒 普通は後衛のはずの回復役が最も体を張るナックルなのは違和感があるが、一人で戦闘も回復もできるため意外と戦えるらしい。
以上の補助魔法があるようだ。
ちなみにルティアの適性武器は炎魔法を扱える槍。戦闘においては雷魔法の剣には劣るが、日常で手軽に火を扱えるのはありがたい。これは俺にも適性がある。
そして重要なのが、転身者は体の適性武器だけでなく、意識である俺の適性武器でも魔法を扱えるということだ。本来一人につき1種類のみの適正武器が2種類扱えるのだから面白い。
それを確かめたいので今日は適性検査をすることができる武器屋へと赴くことにした。
その旨をミサさんに伝えると、
「もう意識が体に定着したんですね。ということはもうこの世界についてあれこれ教えることもないですね・・・」
と、少し寂しそうな表情をした。
「いや、ルティアの記憶だけじゃこの世界のことが全部わかるわけじゃないですし、まだまだ教えてもらわないと困ります!」
12歳の子供の記憶だけではやはり心許ない、まだまだミサさんのに頼らなくては不安だ。
「あ、そうですよね。ルティアちゃんは勉強熱心でしたけど、勉強で知れること以外は分からない点も多いかと思います。武器屋の場所なんかもそうでしょうし。それでは私が今日も付き添いますので、聞きたいことがあれば遠慮せずに聞いてくださいね!」
ああ、やっぱりミサさんは明るい表情が似合う。この笑顔を見れば今日も大丈夫そうだと思えてくる。
こうして俺はミサさんとともに武器屋へと向かうこととなった。
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