side.L 第3話:記憶のために早く寝るわ
明日に備えて今日は早いところ寝てしまいたいわ。
でも、その前に水浴びをしておきたいわね。
元の世界ではいつもミサが水浴び用の水を魔法で出してくれていたけれど、この世界ではシャワー室というところでレバーを動かすと水が出てくるらしいわ。
それらしい小部屋を見つけたので、入って服を脱ぐ。そして、チラッと下についている物見て、少し顔が熱くなるのを感じる。
ああ、そういえばこの下腹部の変な物、元の世界の私に無くてこっちの世界の海入にあるっていうのが気になって、念入りに記憶を探ったんだったわ。
そして分かったのが、これは男性が排せつをするための器官であるということと、もう一つ・・・。こ、子作りをするときに使うとかなんとか・・・。これで女の人と交わって、どうにかなるとか・・・。
人と人の間に子供ができるのなんて普通のことだし、そのための行為に変な意味なんてないはずなのに・・・。そういうのを想像すると、何故だかおかしな気分になるわ。
2度目よ、「これ」に変な気分にさせられるのは。なんなら、自分一人でどうにかすることもできるみたいだけど・・・。
「ダメッ!人様の体で変なことをするのはダメよ!」
ふぅ・・・何故だか胸が高鳴って暴走しそうになったけれど、何とか引き返せたわ。
この世界に来ていきなり間違えるところだったわ。でもこれ、そういう知識について教えてくれなかった王立孤児院にも問題があるんじゃないかしら?もしこれから別の子がこの世界に来ることになっても同じ事態にならないように、教育項目として加えるよう伝えないと・・・。
まあ、何とか落ち着きは取り戻せたわ。さっさと水浴びを済ませてしまいましょう。
目についたレバーを捻ってみると、高いところから水が降ってきたわ。それを身に浴びて、その冷たさにネストールでの暮らしを思い出す。
そういえば、コマリ先生はどうしているのかしら・・・。いつの間にか私にばかり構うようになっちゃって、孤児院の雰囲気も悪くなってしまって。私が離れることで元の先生に戻ってくれればいいんだけれど。
まあ、それは今の私が考えても仕方のない事ね。
それにしても、魔法もなしに綺麗な水を使えるなんて、不思議ねえ。
レバーをもっと回すと温かい水になるって聞いていたけれど、それを試してみても水の勢いが強くなるだけで全然温かくはならないわね。これって、日本の技術がアメリカよりも劣っているってことなのかしら?私は冷たい水でも全然大丈夫なんだけれどね。
水浴びも済んで、近くにあった布切れで体を拭いているときに、私の横に鏡があるのに気が付いた。そういえば、まだこの海入って人の顔を知らないわね。
そう思って鏡で自分の顔を確認してみると・・・。
あら、髪の色は私と同じ黒色なのね。銀のメッシュがある私とは違って黒一色だけれども。
そして、顔立ちは・・・。特に目立った特徴はないわね。何というか、暗い感じ?
だけれど、何か安心するというか、優しい雰囲気も感じるわ。この人なら、私のわがままも許してくれると思わせるような・・・。でもこれはただの私の願望なのかもしれないわね。
異世界転身魔法の相手がどう思おうと私は私がすべきことをするだけ、そういう覚悟ではいたつもりだけれど、心の奥では気にせずにはいられないみたいね。
海入の人柄への興味も募り、私はその日を早い就寝で終わらせたわ。
~深夜~
眠っているはずの私の脳内に、鮮明な映像が流れ始めたわ。海入の記憶が思い出されてるのね。
最初の方からしばらくの間は野菜の畑と水田というらしい畑に囲まれたのどかな風景に囲まれた生活ね。祖父の畑仕事を手伝ったり、近所の子と遊んだり・・・。この頃の海入には暗い雰囲気を感じないわね。
でも、突如この田舎での暮らしが終わって発展した町に移り住んで、高校に通うようになってから雰囲気が一変したわ。
原因は、3人の同級生から受けている虐め。根も葉もない悪い噂を広められたり、すれ違いざまに肘打ちや蹴りを入れられたりしているわ。陰湿で腹が立ってくるわよ、こんなの。
もし私がこんなことをされたら、すぐにやり返してやるんだから。海入にできないんだったら、私が何とかするわ。
読んで下さってありがとうございます。
次回から海入サイドになります。




