いよいよ結果発表です
いつも読んでくださっている方々本当に本当にありがとうございます!
どうぞよろしくお願い致します!!
ドキドキビクビクしながら待つこと1週間。ついに期末試験の結果が貼り出された。早く確認したいようなこのまま永遠に確認しなくてもいいような複雑な気持ちで掲示板を見上げる。
1位エリク・ダイアモンド
同列1位ライセ・スピネル
3位ケント・エメラルド
4位リム・ルベライト
5位アミル・プラシオライト
同列5ステュアート・ベリル
7位クロエ・ガーネット
8位リィラ・アイドクレース
9位フィオ・カーネリアン
10位シトラス・ルベライト
なんとか!ギリギリ異文化研修参加のチケットを入手致しましたあぁぁ!
結果を見た時は動悸がすごすぎて口から変な声が漏れ出たし、今も若干手が震えて自分の名前がゲシュタルト崩壊して見えるしもしかしたら夢かもしれないけどさっき心優しきイケメン達が「よかったなシトラス」「一緒に異文化研修行けるのが楽しみだ」と言ってくれたのももしかしたら幻聴かもしれないけど・・・あれ?やっぱり都合の良い夢か?
「よかったな。約束のお祝い、何作ってほしい?」
ぽけらーっとしながら帰り支度をしていると、あいかわらず淡々としたフィオがそう言ってくれてやっとちょっと実感が湧いてきた。
「せっかくだから今回は一緒に作ろう?フィオもお祝いなわけだし」
「俺は別にお祝いはいらないけど・・・まぁ、シトラスがそう言うなら」
やったぁ!久しぶりに全力で和食作って食べるぞー!
私は足取り軽く馬車へと向かった。
お祝い和食と言えばお寿司!・・・だとは思うけど、残念ながらダイアモンド国で生魚を食べる習慣はない。海に面してないわけではないけど、なんとなく魚は火を通して食べるものって考えみたいなのよね。だから握り寿司は難しい。寿司職人だった前世でもないし。なので生魚を使わずにチラシ寿司を作るか生魚を使わないいなり寿司を作るかで悩んだ結果、いなり寿司にすることにしました!いなり寿司だけど、お揚げを下にして酢飯の上にトッピングする華やかないなり寿司にしようと思います。
まずは油揚げを作ります。おぼろ豆腐を作った後、水切り用の小さい穴が開いた型に水で湿らせた薄布を敷き、その中におぼろ豆腐を入れて型に敷いている薄布の余った部分で表面を覆うようにして上から平らな板で蓋をする。そしてその上に水を入れたコップなどを置いて重みで水分が抜けるのを20分くらい待つ。これでまずは木綿豆腐のできあがり。
次にこの木綿豆腐を1センチの厚さに切って薄い布で包んで再度重しを乗せて一晩水抜きする。しっかり水抜きして固くなった木綿豆腐をぬるめの油で20分ほどゆっくりじっくり揚げる。一度取り出して今度は高温で5分ほど二度揚げすれば油揚げの完成だ。
油揚げを半分に切って破れないよう気をつけながら内側を開き、油抜きのため3分ほど茹でてから水気を絞る。油抜きした油揚げをお鍋に入れてだし汁と砂糖と醤油を混ぜたもので一度沸騰させてた後弱火にして10分ほど煮る。
煮た油揚げを冷ましている間に酢飯作りだ。炊き立てごはんをボウルに移して酢と砂糖と塩を入れて切るように混ぜる。本当は木製の寿司桶で混ぜたいところだが、ないので仕方ない。できた酢飯をいくつかのボウルに分けてシンプルな酢飯の他に胡麻を混ぜたものや刻んだ生姜を混ぜたものも作る。ヒスイ国で手に入ったら今度はワサビやシソを混ぜたものも作りたいな。
酢飯を小さな俵形に握って油揚げに詰める。これだけでも美味しいのは間違いないが、今回はさらに様々な具を乗せる。錦糸卵、ほうれん草、枝豆、花の形にしたにんじん、茹でた小エビ。錦糸卵を作るついでに酢飯に細かく切ったトマトと枝豆ととうもろこしを混ぜたごはんを薄焼き卵で包んだ洋風茶巾寿司も作ってみた。
「綺麗だな」
「本当は油揚げと酢飯のシンプルなお寿司なんだけど、今日はお祝いってことで華やか仕様にしてみたの」
「なるほど」
「それでは!フィオと私の異文化研修参加権獲得を祝しまして!いただきます!」
「・・・いただきます」
この世界にはない文化だが、私が前世のクセでやり続けているためフィオにも移ったようだ。2人して手を合わせて挨拶をしてから各自いなり寿司を手に取り口に運ぶ。
じゅんわあぁぁ。噛む度に口の中に油揚げから甘じょっぱいお出汁が溢れて爽やかな酢飯と混ざり合い、卵やエビや枝豆など色とりどりの食材の風味や食感のハーモニーが素晴らしい。胡麻入りの酢飯も生姜入りの酢飯もそれぞれの個性が活きててとっても良いお味。美味しいが過ぎる。優勝。やめられない止まらないたまらない。洋風茶巾寿司もトマトの酸味と枝豆の旨味ととうもろこしの甘味が薄焼き卵のまろやかな塩気でまとめられて思わず『これ作った人天才じゃない?・・・って、私か』とバカみたいな自画自賛をしてしまうくらいのうまさ。
「うまい。見た目だけじゃなくて味も華やかだな」
「えへへ。フィオが一緒に作ってくれたおかげでちょっと凝ったいなり寿司と茶巾寿司ができたわ。ありがとう」
何個でも食べられるけど、さすがにちょっと多く作り過ぎたから、リムにもお裾分けした方がいいかな?リムも異文化研修参加できるからお祝いしてもいいわけだし。
そう思った私は小皿に3つほどいなり寿司を乗せているとフィオが不思議そうな顔をして首を傾げた。
「夜食用にでもするのか?」
「うぅん?ちょっと多く作り過ぎたからお義兄様にもお祝いのお裾分けしようかなと思って」
「・・・そうか」
ん?気のせいかもしれないけどフィオがなんだかちょっと不服そう?そんなことないか。表情あんまり変わらないし、何よりフィオは誰かにお裾分けするのを拒むようなけちんぼ男子じゃないし。
念のため「どうかした?」と尋ねようとしたところで厨房の扉が開いた音が聞こえた。振り返るとジル料理長が入ってきたところだった。
「おや、すみません。お邪魔してしまいましたね?」
んん、あいかわらず物腰柔らかくて大人の色気がすごい。
「何を召し上がっていたのですか?」
「ヒスイ国の『いなり寿司』です」
「彩りが綺麗で美味しそうですね」
「あ、よろしければジル料理長もどうぞ」
大皿にはまだ15個ほどいなり寿司や茶巾寿司が残っている。私が勧めるとジル料理長はうれしそうに笑みを深めた。
「よろしいのですか?では、お言葉に甘えて」
ジル料理長はそう言って小皿に乗せたいなり寿司を1つ摘んだ。
「これは美味しい。この外側の皮の甘辛さと中のごはんのさっぱり加減が絶妙なバランスですし、色々な味や食感が楽しいですね。いくらでも食べられそうです」
「よかったです。もっと召し上がりますか?」
「いえ、そんなにたくさんいただくのは申し訳ないです・・・と申し上げたいところですが、実はお恥ずかしながら今とても空腹ですのでもう少しいただいてもかまいませんか?」
空腹なの?それはいかん!
「どうぞどうぞ!ぜひたくさんお召し上がりください!」
「ありがとうございます。シトラス様も引き続き召し上がってください。私もさすがにすべては食べきれないですから」
「そうですか?では一緒にいただきます。フィオもまだまだ食べるでしょ?」
「あぁ」
ん?心なしかフィオが居心地悪そうにしてる・・・?そしてジル料理長がやけににこにこしていらっしゃる・・・・・?なんだかよくわからなかったが、深く考える前に目の前のいなり寿司の誘惑に負けた私にはジル料理長がフィオにこそっと「私が食べる方がまだマシでしょう?」と囁いたのが聞こえなかった。




