お茶会に参加しました
天候までもが彼を愛しているのだろう。
そう思えるほど今日の空は澄み渡るように青く、雲は太陽に照らされて白く、風は穏やかで暖かい。
攻略対象ってこんなところでもチートなんだなと思いながら私は茶会の会場である王城の庭園へと足を踏み入れた。
王城の庭園はその広さもさることながら美しさもこの上なく素晴らしい。綺麗に整えられた生垣と色とりどりの花にあふれた花壇が幾何学模様のように並び、まるでウェディングケーキのように何段もある噴水には虹がかかり、不思議の国へ繋がっているのではと思わせるようなフラワーアーチの小道は終わりが見えないほど長く続いている。
庭園の一角にある広場へ通されるとそこには真っ白なテーブルクロスのかかった丸テーブルがいくつも設置され、その上には一目で高級とわかるティーセットやティースタンドが置かれていた。どうやら立食形式のようで、椅子はない。ティースタンドには一口サイズのケーキやカラフルなマカロン、食べ応えのありそうなスコーンに層の美しいサンドイッチが並んでいる。
開始時刻に余裕をもって来たはずだが、ほとんどの令息令嬢がすでに揃っているようだ。『絶対エリク殿下に見初めてもらおう』『必ずエリク殿下とお近づきになろう』という圧がすごい。今回は爵位こそ様々であるもののエリクと同じ学年にあたる令息令嬢が招待されているとのことだが、大人顔負けの気迫である。中には舞踏会さながらに着飾った人もいる。おつかれさまでーす。
私はというとまるで他人事だ。だって家柄はともかくこの地味顔ですもの。教養も別に他の令嬢の追随を許さないほどでもないし、なにせモブ寄りの残念悪役令嬢だ。『でもひょっとしたら私が・・・』なんて夢見るような精神年齢でもない。身の程を弁えられるアラサーです。せいぜい王城の美しい庭と美味しいお菓子を楽しんで帰ろう。
「さすがエリク殿下主催なだけあって豪勢だね」
「そうですね」
リムの言葉に私は笑顔で頷いた。
リムの背後には彼の美貌に頬を染めている令嬢がたくさん見えるが、あえて教えることもないだろう。お嬢様方、エリク殿下が本命なのではないのですか?そこの鼻息荒い貴女、とりあえず興奮を抑えてくださらないと変質者扱いで放り出されてしまいますよ。
招待を受けた令息令嬢が全て揃い、なんとなくそれぞれテーブルを囲むように立ったところで開始時刻となったのかエリクがやってきた。後ろには専属護衛としてステュアートもいる。
これが・・・王子か・・・・・!
初めてエリクを目の当たりにした私はあまりの美麗さに目を見張った。
ダイアモンドの輝きを彷彿とさせる髪はさらさらと風に揺れ、何色とも例えられない瞳には王族らしい気高さを感じる。顔の造形は言わずもがな、爪の先まで完璧に整った容姿からは本日九歳になったとは思えないほど色気が漂っていた。舞踏会ではなく茶会ということで軽装だが、襟や袖口にネイビーのラインが入った白の開襟シャツ、落ち着いたシャンパンゴールドのベスト、満月の夜空のような濃いネイビーのパンツに上質な黒の革靴というセンスの良さには舌を巻く。
いやーコミックでも美しく描かれていたけど、実物はとんでもないな。目を見張りすぎて眼球飛び出るかと思ったわ。実際ちょっと出た。
「ダイアモンド国第一王子エリク・ダイアモンドだ。急な茶会であるにもかかわらず集まってくれたこと、心より感謝する」
全員を見渡せる位置で立ち止まると、エリクはそう切り出した。
「今日は私の誕生日ではあるが、祝してもらうつもりは毛頭ない。将来私とともにこの国をより良くするため寄与してくれるであろう同世代の者達と親睦を深めることが茶会の目的だ。爵位などの違いはあるだろうし、最低限の礼節は大事だと思うが、ダイアモンド国を担う者同士気軽に交流してもらいたい」
そこまで言ったところでエリクは今までの王子らしい荘厳な微笑みから打って変わって気さくな笑顔になった。
「・・・と、まぁ堅苦しい挨拶はここまでにして、今日はぜひ楽しんでくれ。俺も全員と話せるのを楽しみにしてる」
なんだその茶目っ気あふれる可愛い笑顔は!?こちとら危うく心臓を射抜かれるところだったわ!
まぁ射抜かれても私は精神年齢アラサーだからキラキラしたアイドル少年にときめく程度で済むけど、年相応の令嬢なら完膚なきまでに心奪われるだろうな。
横目で周囲を窺うと令嬢だけではなく令息まで頬を染めてエリクに魅入ってる。腰砕けて倒れそうになっている子もいる。
恐るべしエリク。




