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AMATERASU  作者: 潜水艦7号
16/35

レベル4『対策』

それは夜の9時過ぎだった。


ビーッ!ビーッ!

司令室に警報が鳴り響く。


「黄泉ですっ!」

久しぶりの事態だ。一気に緊張感が高まる。


「場所は?!」

「‥‥E地区です!画像、転送します!」


中央モニターに、街中に取り付けられた監視カメラの画像が映し出される。


「う‥‥!」

言葉に詰まる。


「デカいな‥‥」

画像で見るだけでも15m~20mほどはあろうか。


「E地区か‥‥くそっ、『近い』のはどこの班だ?」


本来、E地区は葛城班の担当だが、今はチームが編成出来ていない。


「鮎川班との混成チームが待機していますが‥‥」


「いきなりは難しいな‥‥仕方ない、近隣の担当班に応援要請を出せ。それと鮎川班には『無理をせず、状況把握を第一に努めろ』と伝えろ」


「了解です。鮎川班、こちら司令室‥‥」

司令室が慌ただしくなる中。


当直の司令である山倉は、手元にあった直通電話の受話器を取り上げた。


「‥‥山倉だ。黄泉が出た。おそらくレベル3以上‥‥もしかすると『4』の可能性もある。『アレ』は行けるのか?‥‥そうか、分かった。うん‥‥うん‥‥『GO』だ」


やや緊張の面持ちで、山倉が電話を切る。

「‥‥いよいよ『ご登場』って訳か」




黄泉発生の現場は、いつも以上に混乱していた。


「何てこったっ!‥‥司令室、司令室!こちら鮎川班っ!ダメだ、黄泉の移動速度が早すぎて地上降下ポイントが決められない!」

ヘリから悲痛な無線が飛ぶ。


「こちら司令室、何とか先回りできないか?」


「ダメだ!急に方向を変えたりしながら不規則に動いてやがる‥‥っ!」


鮎川班のヘリには葛城も同乗して、その状況を窓から伺っていた。

‥‥もしかして、ミサイル攻撃を『覚えられた』か‥‥。


だとすれば、相手はある程度の知能を有する『レベル4』という事になる。

このままでは『最終手段』のミサイル攻撃も使えない。


司令室から、命令が飛ぶ。

「今‥‥、『上』からの許可が出た。ヘリからの機関銃掃射で牽制してくれ。何とかして黄泉の移動範囲を限定するんだ。今、他の班からも応援が廻ってくる。彼らとともにどうにか『足止め』をして欲しい!」


「‥‥了解」


街中で機銃を使うのはリスクが大きい。何しろ流れ弾が1発でも市民に当たれば大事になるからだ。

しかし今はもう、そんな事を言っていられる場合ではなかった。


「分かりました‥‥撃ちますよ?良いんですね?」

「ああ、頼んだ」


その瞬間、

バリバリバリ‥‥!!


走る黄泉の背後から機銃を撃つ。

黄泉の足が止まって、背後を振り返る。


「高度を保て!接近し過ぎると何が起こるか分からん!」

班長・鮎川から指示が飛ぶ。


周辺の空域には、仲間のヘリも到着し始めていた。


「円を描くように!逃げ場を封じて連続射撃をっ!」

司令室からの指示に従って、そのぐるりから一斉掃射が始まる。


だが。

「この野郎‥‥効いてんのか‥‥効いてねぇのか‥‥」


無論、全ての弾が当たっているのでは無いのではあろうが。

効果的なダメージがあるようには見えていない。


その時、

「‥‥うん?」


葛城はふと、遥か向こうから1台の大型ヘリが飛来してくるのを見つけた。


「おや‥‥あれは‥‥『回収班』?」


大型のコンテナを積載している事から見て、回収班のヘリだと分かる。

よく見ると数機の護衛ヘリも帯同している。


しかし、彼らの『役目』は駆除が終わってからの『回収』だ。戦闘中に用は無いハズなのだが‥‥

ゆっくりと回収班のヘリが接近し、黄泉の近くでコンテナを切り離して着地させた。

そして、そのまま方向転換して現場を離脱する。


「あの‥‥コンテナは?」


窓の外から、葛城が凝視する。

黄泉も、そのコンテナに気づいたようだ。


「機銃掃射、やめ!直ちに現場空域を離脱し、操縦者以外は安全な場所に降下せよ!」

司令室は、そのコンテナの中身を知っているようだ。


「りょ、了解‥‥」


何が何だか分からないが、ともかくヘリは黄泉とコンテナから離れていく。

すると、


ガコン‥‥


コンテナの上部が開く。

そして、中から何か真っ黒い塊が姿を表す。


「‥‥何てこった‥‥見ろ、アレは‥‥」

鮎川班のメンバーが震えながら指し示す。



コンテナから出てきたのは、明らかに『黄泉』だった。



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