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2-25. No way out 2. アリスvsヴィヴィアン

「sts『神装解放プロヴィデンスギア・レリース』――ext《神馬脚甲(スレイプニル)》!」

「サモン《ペガサス》!」


 戦闘開始と同時に二人が魔法を開放する。

 アリスは万能の移動力を持つ《神馬脚甲》を、ヴィヴィアンは最初の対戦でも猛威を振るった《ペガサス》を召喚する。

 《ペガサス》メインでの機動力に物を言わせての攻撃か。《神馬脚甲》よりも機動力が上なので苦しい戦いになるか……?

 と思ったのもつかの間、ヴィヴィアンがアイテムホルダーからキャンディを取り出し……。


「サモン《グリフォン》、サモン《コロッサス》!」


 立て続けに更に二種類、三匹の小型《グリフォン》と《コロッサス》を召喚する。

 やはり、魔力を回復させしてしまえば、召喚自体は何体でも同時に行えるということか……。つまり、私が以前恐れた『《イージスの楯》を構えたまま《ペガサス》で蹂躙する』という最悪のパターンもやろうと思えば出来るのだろう。

 ただ気になるのは、これでリコレクトを使った場合に魔力の上限以上に回復するかどうか、ということだ。上限以上回復出来るのであればとんでもない魔法なのだが、今までこれをしてこなかったということは、多分魔力量を超えてのリコレクトは出来ない――あるいは上限を超えた分は無駄に消えていってしまうのだと思う。

 逆に考えると、魔力のロスを起こす可能性があるというのに複数の召喚をしてきたということは、向こうも後に引けない戦いだと思っているということだ。

 ……やはり、この戦いが『決戦』となる。向こうもその覚悟で臨んできているようだ。


「……ふん、生半可な武器を作っても意味はないか……ならば、ext《竜殺大剣(バルムンク)》!」


 アリスも早くもキャンディで魔力を回復させ、氷晶竜を切り裂いたあの剣――《竜殺大剣》を作り出す。

 ヴィヴィアンの呼び出す魔獣はどれも非常に硬い。《鋭化》をかけただけの『槍』では少し威力不足となる。ならば、武器の形態を変えられるという柔軟性を捨ててでも、基本性能の高い装備を使った方がよい。そうアリスは判断したのだろう。

 『神装』のコストは確かに大きいが、《嵐捲く必滅の神槍(グングニル)》のような発射型でなければ他の魔法で形態を変えない限りは使い続けることが出来る。アリスの魔法の持つ『持続性』がフルに発揮されると言えよう。


「行くぞ!」


 大剣を振りかざし、アリスがヴィヴィアンへと接近する。

 その間に立つ《コロッサス》、飛び掛かってくる三匹の《グリフォン》。


「邪魔だ!」


 《グリフォン》を大剣で薙ぎ払う――が、流石に食らったら拙いとわかっているのか、巧みに剣の軌道から外れてかわそうとする。

 かわされたことは気にもせず、アリスは一直線にヴィヴィアンへと向かう。

 ……ヴィヴィアンは《ペガサス》に乗らず、なぜかその場に留まっている。《コロッサス》は強いが動きが鈍い。《竜殺大剣》の一撃をかわすことはできないだろう。そうなると次にすぐにアリスはヴィヴィアンへと切りかかると思うのだが……?

 私の想像通り、アリスは《コロッサス》の拳をかわすとすれ違いざまに足を切り付けて切断。そのまま《コロッサス》は無視してヴィヴィアンへと向かう。


「……サモン《ペルセウス》!」


 そこでヴィヴィアンが新たな召喚魔法を使う。

 ……《ペルセウス》!? 私でも名前を知っているくらいメジャーなギリシア神話の英雄だ。魔獣だけではなく、そういうものも召喚できるというのか……。


「うおっ!?」


 アリスとヴィヴィアンの間に、『それ』は現れた。

 人間と同じくらいの背丈、全身が出来の悪いポリゴンで形作られたようなのは他の召喚魔法と同じだ。

 違うのは全身が透き通るようなアイスブルーの結晶であること。そして鎧兜を纏い、右手に剣、左手に楯を装備していることだ。

 現れた《ペルセウス》が剣を振るい、アリスへと切りかかる。

 ――動きが早い!

 突如現れた《ペルセウス》に戸惑いつつも、相手の剣を《竜殺大剣》で受ける。


「くっ……!?」


 そのまま鍔迫り合いとなるが、両手で大剣を押し込もうとするアリスに対して《ペルセウス》は片手だけで拮抗している。

 他の召喚魔法よりも遥かに強力なのは明らかだ。

 拙いな、ヴィヴィアンの魔法をまだまだ過小評価していたかもしれない。

 一つ一つの魔法は強力だが同時に幾つも召喚出来ないという制限はなく、また魔力についてもキャンディで補える。そして、各召喚魔法についても『それなりに』強力、という評価だったが……《ペルセウス》は明らかに一線を越えている。

 アリス、油断していると負けるかもしれない……。忠告も出来ない。今は見守るしかないが……。

 鍔迫り合いで足を止めている間に、《コロッサス》、《グリフォン》が背後から迫ってくる。

 複数召喚の強みだ。一体に集中していると残りの魔獣が一斉に襲い掛かってくる。単純な手数が他の魔法少女に比べて多くなる。


「なるほどな、これがお前の本気というわけか!」


 それでも尚アリスの笑みは崩れない。

 余裕の――というわけではないだろう。ヴィヴィアンの底力に対してワクワクしているのだ。

 このまま《ペルセウス》と鍔迫り合いをして背後から攻撃されては拙い。アリスは《ペルセウス》へと剣を押し込むと同時にそのまま真上へと跳び、そこから離脱しようとする。


「《ペルセウス》……お願いします」


 アリスを追って《ペルセウス》もまた跳ぶ。ただのジャンプなら空を自在に翔ける《神馬脚甲》に追い付ける道理はない、が。


「おっと、こいつ……飛べるのか!?」


 《ペルセウス》はそのまま飛行しアリスへと追いすがる。

 ……アリスの『神装』の名づけに際して、色々と私たちは世界各地の神話について調べたりしていたのだが、その時に《ペルセウス》についてもちょっとだけ見た覚えがある。彼は、見たものを石に変えるという魔獣メデューサを退治するにあたって、神々から様々な贈り物をされていた。そのうちの一つが、確か――空を自在に翔ける靴だったはず。

 待てよ、ということは……まさか、あの《ペルセウス》は、神話のペルセウスと同じ能力全てを兼ね備えているということになるのか? ヴィヴィアンが同名のアイテムを単独で召喚して使っていたが、わざわざ召喚しなくても《ペルセウス》自身にその能力があるということになるのか?

 だとすると、《ペルセウス》には他にも様々な能力があるということになる。

 空中へと飛び上がり、アリスと《ペルセウス》が互いに剣を振るい切り結ぶ。

 更に背後からは《グリフォン》が、《コロッサス》が土弾を放ってくる。


「こんにゃろっ!」


 常にアリスの死角から襲い掛かる《グリフォン》の攻撃を何とかかわしているが、避けた先を狙って《ペルセウス》が的確に剣を突き立ててくる。

 距離を離して仕切りなおそうとしても《ペルセウス》はしつこく追いすがり、アリスは《竜殺大剣》で受けざるをえない。

 徐々に追い詰められている――傍から見ればアリスが劣勢であると見えるだろう。

 だが、それはあくまでそう見えるだけにすぎない。

 アリスも追い詰められているように見えて、好戦的な笑みは未だ崩れていない。


「ふふっ、楽しくなってきたではないか!

 ならば――ext《剛神力帯(メギンギョルズ)》!」


 両肩から二本、巨大なアームを生やす。極限まで腕力強化を付与した、自在に動くサブアームだ。単純なパワーなら、《コロッサス》とも取っ組み合いが可能だろう。

 キャンディを取り出して回復、更に魔法を使う。


「mk《万能物質(マジックマテリアル)》、mp」


 使ったのはマジックマテリアル生成。特に付与もかけていない『生』のマジックマテリアルを幾つも作り出してあちこちにばら撒く。

 やろうとしているのは、天空遺跡のクエストで学んだアレかな。


「……最近気づいたんだが、どーもオレは纏めて一気に攻撃する方が得意らしいぞ?」


 《ペルセウス》と切りあいながら、眼下のヴィヴィアンに向けてアリスはそういう。

 その真意はすぐにわかる。


「cl《蛇絞鞭(ヘヴィバインド)》、mp!」


 先程ばら撒いたマジックマテリアル全てに対して《蛇絞鞭》をかける。四方八方から伸びる鎖が、《コロッサス》と《ペルセウス》へと絡みつく。残念ながら《グリフォン》はサイズが小さすぎて拘束できなかったが、鬱陶しいだけで脅威度としては他よりも低い。

 動きを抑え込んだとしても、ヴィヴィアンはリコレクトで消せる……のだが、


「ここで消したら、魔力がもったいないだろう?」


 アリスもヴィヴィアンのリコレクトでは、魔力上限を超えると『無駄』が発生することに気付いていたようだ。

 動きを封じられた《コロッサス》と《ペルセウス》の両方をリコレクトしてしまうと、片方の分の魔力が無駄になってしまう。

 またキャンディで回復すればいいと考えるのは少々甘い。なぜなら、通常対戦では使用できるアイテムの数に限りがあるからだ。

 既にヴィヴィアンは2個のキャンディを使ってしまっている。アリスも同数だが、こちらは『神装』を何度も無駄撃ちしない限りはそこまで魔力は減らない。一方でヴィヴィアンの場合は召喚一回で大量の魔力を消耗してしまう。キャンディの消費量はヴィヴィアンの方が上だろう。


「っ! リコレクト……《ペルセウス》!」


 危機を感じ取ったヴィヴィアンが《ペルセウス》をリコレクトで回収する。うん、その判断は正しい――けど、彼女の召喚魔法の性質からして、複数召喚は諸刃の剣となる。


「まずは一体貰うぞ――ab《爆弾(ボム)》、ext《破壊蛇デモリッションスネイク》!」


 《コロッサス》の動きを封じた鎖に新たに『爆発』を付与し、全身を一気に爆破――動きを封じてそのまま爆殺という割とえげつない魔法だ。

 これ一発では流石に《コロッサス》を完全に破壊することは出来なかったが、アリスは《ペルセウス》を封じていた方の鎖を《剛神力帯》の腕で掴むと、それをめちゃくちゃに振り回す。


「cl《炎星(ブレイズミーティア)》!」


 狙いは飛び回る《グリフォン》の牽制だ。《グリフォン》が鎖に捕らえられたら自力での脱出は不可能となる。《グリフォン》たちは鎖を回避しようとしてアリスに近づけなくなった。

 その隙を逃さず、ボロボロになった《コロッサス》へと向けて《炎星》を放ちとどめを刺す。


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