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10-03. 少し過去の物語 ~三界制覇戦について

*  *  *  *  *




 ラスボス挑戦の10日ほど前――私たちは最後のメギストンである『ペタリス』を何とか撃破した。

 その後、マイルームでしばし皆とぐったりしてたり、メギストン戦の苦労を互いに振り返ったりとしていたのだけど……。


”……! 皆、クエストボードを見て!”


 どうせすぐには出てこないだろうと思って何の気なしにクエストボードを見た私は、あるクエストが出現しているのを見て皆を呼び寄せた。


「ん、33体クリアできてた」

「ですわね」

「……このクエスト見れば確定だよな」


 皆もクエストを確認。

 ついに『三界の覇王』が私たちの前に現れたのだ……。




 『天』界への挑戦

 勝利報酬:2,500,000ジェム

 特記事項:

  ・撤退時、クエスト自動失敗




 『地』界への挑戦

 勝利報酬:2,500,000ジェム

 特記事項:

  ・撤退時、クエスト自動失敗




 『魔』界への挑戦

 勝利報酬:2,500,000ジェム

 特記事項:

  ・撤退時、クエスト自動失敗

  ・クエスト離脱系アイテム使用時、確定でクエスト失敗




 ……これでこれらが『三界の覇王』のクエストじゃなかったらびっくりだ。


「報酬も桁違いだし、間違いないと思う」

”うん、だよね”


 各250万ジェムも報酬があるということは、それだけとんでもないモンスターが相手なのは間違いない。

 色々ととんでもない相手と戦ってきたから感覚がマヒしているけど、100万超えの報酬って基本的にはないのだ。メギストンとかでも10万単位くらいだしね。

 過去最高報酬は――『眠り病』解決の時のクエストが334万、大分間が空いて『嵐の支配者』が180万くらいだったかな? ムスペルヘイムも大体同じくらいだった記憶がある。

 ……つまりは、まぁ過去最高クラスに強大な相手だった神獣よりも報酬が多い=とんでもない相手だということを意味している。

 特記事項については……ちょっと悩ましいけど、多分『ポータブルゲート』が使えないという意味なんじゃないかなと思う。

 これは当然っちゃ当然かな。『冥界』やらアストラエアの世界やらの広大で目的も不明なクエストはともかく、討伐対象が決まっているクエストで途中撤退→マイルームでアイテム補充してから再挑戦なんてできてしまったら、ゲームとして成り立たないしね。


「うにゃ? 最後の『魔』だけもう一個特記事項があるけど……なんだろうにゃー?」

”うーん……?”


 よくわからないのは、『魔』のクエストの2つ目の特記事項だ。

 1つ目の特記事項と意味が同じなんじゃないかと思うんだけど……わざわざ書かれてるってことは、何か意味があるのには違いない。


「んー……何にしても、相手を倒すか撤退するかのどっちかしかない……」

「そ、そうだよね……じゃあ、あまり考えなくてもいいんじゃないかな……」

”ふーむ……”


 確かにその通りだ。

 1つ目の内容からして、どっちにしても撤退したらクエスト失敗するのだから同じこと……だよねぇ?

 皆もちょっと考えたみたいだけど、同じ結論に至ったようだ。

 それになにより、『やってみないとわからない』ことだしね。考えてるだけじゃ始まらない。


”今日はもう無理だから、明日から早速挑もう。

 ……で、()()から行く?”


 土日を使って『三界の覇王』へと挑むつもりではあるが、順番はどうするか……という問題がある。

 報酬額から考えればどれから挑んでも変わりはないような気はするけどね。


「『天』とか『魔』は、なんか強そう……」

「でしたら、『地』からですか?」


 ありすの意見はわからないでもない。

 『天』『魔』に比べると、何となくイメージ的には『地』は一段劣る、というかどちらかと言えば『前座』的な感じはする。


”えっと、モンスターの名前は……なんだっけ?”

「『地』はオオカミじゃないっすか?」

「バンちゃん正解にゃー。ちなみに、『天』がインティ、『魔』がアンリマユだにゃ」


 …………うーん、なんか名前からしても『オオカミ』だし、『地』が一番与しやすい気はするね。

 インティってのは正直何なのかよくわからない。あんまり仰々しい名前じゃないなー、とかくらいしか私には思えないし、他の皆も聞き覚えのない名前なのでよくわかってないみたいだ。

 で、アンリマユは――


「一番やばそうなのは、『魔』のアンリマユ、かな……名前からの判断だけど」

「う、うん……ゲームで見たことあるよ、この名前……」


 私もなんか聞き覚えがあるくらい、メジャーな名前だ。

 RPGとかでおなじみなのかな? ありすや雪彦君も知っているらしい。


「別名『アーリマン』……っていえば、わかる人も多いかも?」

「ああ、それはなんか聞いたことあるな」


 私も『アーリマン』の方で覚えていた。前世でちょこっとだけやったゲームでそんな名前のモンスターが出てきたような覚えがある。

 確か何かの神話に出てくる、とんでもない大悪魔の名前だったかな。


”うーん、どうしようか……”


 最終的には全部倒すのだけど、一歩ずつ前に進んでいる実感を得るためにも勝てる相手からできれば選んでいきたい。


「アンリマユはヤバそう……んー、でも『天』の方が上な気はする」

「オオカミ……オオカミ……? うーん、なんか引っかかるんだよね……」

「フーちゃんもにゃ? あたしもさっきからなんだよね……」

「インティは……わからないですね。名前だけなら一番優しそうな印象を受けますけど……」


 皆も色々と考えていたけど――




 最終的には、『(オオカミ)』→『(アンリマユ)』→『(インティ)』の順でまずは挑んでみる、という結論になった。

 もちろんこの順番通りに倒すというわけではない。

 とりあえず挑んでみて、ダメそうなら一旦撤退して次の相手へ……で、様子を見つつ戦術を色々と考えて倒せるやつから倒していく、という感じだ。

 ……一発でそれぞれ倒せるならそれに越したことはないけどね……メギストンの上位勢のことを思い返せば簡単にはいかないだろうとは思うけどね……。


”それじゃ、明日の午後――千夏君が部活から帰ってきてから塾の間までに挑戦を開始しよう。

 で、倒せなかったら明後日日曜以降に延長だね”

「悪ぃな、皆」


 申し訳なさそうに謝る千夏君であったが、誰も責めることはしない。

 目標である『ゲーム』クリアが目前に迫っているとはいえ、現実世界の都合の方が最優先だ。

 明日の土曜日は千夏君は午前の授業が終わった後に部活、夜には塾なのでその間だけクエストに挑戦することになる。

 クエストに挑む時間が減ってしまうのは仕方のないことだ。

 むしろ、千夏君が参加できない時はそれぞれ自由時間を過ごすなり、あるいは『三界の覇王』以外のクエストに挑んでジェムを稼いだりとそれなりに有意義な時間を過ごすことができる。

 ……まぁ、その分千夏君の自由時間が減るっていう問題はあるんだけどね……。


”千夏君もごめんね、忙しくなっちゃうし君の時間もなくなっちゃうけど……”

「全然問題ないっすよ! 何なら夜とかに『肉』の補充させてもらいたいと思ってるくらいっす」


 うん、まぁ……『肉』の補充はまだまだやっておきたいけどね。補充に関しては皆でやる必要はないし、千夏君と後都合のつく人――十中八九お姉ちゃんズとあやめになるけど――だけでやってもいい。

 それはともかく、『三界の覇王』に向けてメギストン攻略をしつつ『肉』も大分補充できている。

 とりあえず当座の戦闘には支障はないはずだ。


「なつ兄だけずるい」

「わ、わたくしたちも最後に向けて、夜もがんばりますわよ!」

”…………まぁ、気持ちだけもらっておくよ”


 やっぱり夜遅くに『ゲーム』に参加させるのは、最終手段としたい。今のところそこまで切羽詰まってない……とは思うしね。

 若干ありすたちから不満げな気配が伝わってくるが、これに関しては私のスタンスは変えるつもりはない。


”よし、じゃあさっき言った通り今日のところはこれで解散して、明日午後に集合してから『三界の覇王』に挑もう!”




 ――ここに至るまでやれることはやりつくした……と思う。

 レベルアップはこの間したので多分最後なるとは思うが、他の拡張機能――アイテムポーチの最大拡張とかレーダー強化、それにアイテムの補充も可能な限りやってきた。

 全員分の複数回のリスポーンを想定して30万ジェムほどはキープしている。

 各自の能力確認や新魔法の試し撃ち、ギフトの確認、ジュリエッタの『肉』補充……思いつく限り必要なことはしてきたつもりだ。

 『三界の覇王』を倒し、ラスボスへと挑み勝利する……そうして『ゲームクリア』をすれば全ての問題は解決するはずだ。

 ……そう私は、いや他の皆もきっと考えていたのだけど……。




 …………それがとことん甘い見通しだということを、私たちは『三界の覇王』との戦いにおいて嫌というほど味わわされるのであった……。


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