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10-02. 最終決戦の舞台へ

*  *  *  *  *




 ラストバトル:星獣ガイア討伐


 ……『星獣ガイア』、その名こそが私たちが目標としていたラスボスの名前のようだ。

 このクエストがラスボス戦であることはまぁ間違いないだろう。

 『ラストバトル』と銘打たれてるしね。裏ボスとかいてもおかしくはないけど、まぁそこを今考えても仕方ない――ピッピも特に何も言ってなかったし、考えるのはやめておこう。


”星獣……か”


 事前に名前がわかっているのだから、考えられることは事前に考えておいて損はないだろう。

 まずは『星獣』――これがモンスター図鑑における分類と一致するのかどうかはまだわからないが、おそらくは一致しているんじゃないかなって気がする。つい先日まで戦っていた『三界の覇王』も『界獣』という分類だったしね。

 ……『星』かぁ……なんかこれだけでとんでもない規模の相手ってのは伝わってくる……。

 それに『ガイア』という名前……なんだっけ、大地の神というか『大地そのもの』を現しているんじゃなかったかな。『ガイア理論』みたいな言葉もあることだし。


「ん、倒し甲斐がある」


 ありすは戦う気満々だ。

 いや、まぁどんな強敵だろうとも引くという選択肢は私たちにはないんだけどね。


「まー、結局のところ、戦ってみないとわからないっすよね」

”そ、そうだね……”


 千夏君の言う通り、事前にうだうだと考え込んでも全てがわかるわけないのだ。

 ……何も考えなくていいわけじゃないけど、考えこんで先に進めないのでは何の意味もない。


”準備はそろそろ大丈夫かな?”


 やることと言っても、水分補給とトイレを済ませておいて、後は風邪ひかないように部屋を暖めておいたり布団の用意くらいだけどね。

 どれだけ長丁場になるかはまだわからない――流石にアストラエアの世界の時みたいにはならないとは思うけど、途中で中断して休憩ってのはきっと無理だと思う。

 これが最後になる……はずなのだ。念入りに準備するに越したことはない。

 まぁ最悪、今回ダメでも相手の様子を見てまた次回、というのもラスボス戦では『有り』なのだ。『三界の覇王』の時も一度では勝てなかったので撤退して戦術を練り直して再挑戦、としていたし同じことはできると思う。

 クエストの特記事項にもその手の記載はされていないしね。


「ラビ様、部屋の準備は整いました」

”うん、ありがとう”


 あやめたちお姉ちゃんズが広めの一室を準備していたのだが、完了したようだ。

 千夏君を同室にするかどうかはちょっと悩ましい――千夏君も別部屋行くと言ってたけど――全員で『ゲーム』に行くわけだし、下手に目が届かない場所に行くのもそれはそれで怖い、ということで半ば強引に男子も同部屋だ。

 ……このあたり、やっぱり『眠り病』のことを考えちゃうよね、どうしても。まぁ正直何かあっても同部屋だから何ができるってわけでもないけどさ……。

 気分的にも、『仲間』だし近くに集まっておきたいという想いも皆持ってたようだ。

 遠慮していた千夏君だったけど、少し嬉しそうだったのは私の見間違いではないだろう。




 皆も水分補給とトイレを済ませ、準備は万端だ。


”よし、エアコンもオッケーだし、布団にも入ったね”

「ん、お泊り会みたい」

「うふふっ、またやりたいですわね♡」


 ……そうだね。全てに決着がついたその時は、お疲れ様会というか『ゲーム』クリアのパーティーを開くのも良さそうだ。

 前回よりも暖かい季節になってきたし、ちょうど皆も春休みになるので時間の都合もつけやすくなるし。


”まぁお泊り会は……ラスボス戦が終わったらゆっくり考えよう。また親御さんの了解を取らないといけないしね”


 一番の面倒はそこかなぁ……。ありすはともかくとして、他の子は一か月程度の間を開けてまたお泊りは厳しいんじゃないかなって気はする。

 だが頭ごなしに否定することでもない。

 お泊りは出来ずとも、今日みたいに昼間集まって……というのでもいいだろうし。

 何にしても、全部『ラスボス戦』が終わってからだ。


”よし、じゃあマイルームに行こう!”


 私の号令と共に、マイルームへと皆で移動していった。




*  *  *  *  *




”さて――ラスボス戦のクエストだけど……幾つか気になることがある”


 マイルームへ移動して即クエストに挑戦、というわけではもちろんない。

 クエストボードを皆で確認しておかなければならないし、最後のアイテムチェックもここで行うつもりだ。

 で、問題となるラスボス戦のクエスト――その全貌は以下のようになっている。




 ラストバトル:星獣ガイア討伐

 勝利条件:ガイアの完全撃破、もしくは撃退成功

 勝利報酬:5,000,000ジェム、称号『全てを超えし者』

 特記事項:

  ・クリア内容によりジェム増加

  ・()()()()()()。乱入対戦での敗退後、リスポーンにより再度対戦可能

  ※リスポーン地点は消滅した箇所となる

  ・撤退時、クエスト自動失敗

  ・強制移動不可




 目を惹くのは、まぁ現金だけど勝利報酬の欄だろう。

 ……500万ジェムかぁ……ラスボスだからというのもあるだろうが、このジェムの量を見るだけで相当な強敵だというのがわかる。


「……疑問なんだけど、どうしてゲームのラスボスとかって経験値やお金落とすのかな……?」


 雪彦君の素朴な疑問はもっともだ。

 ラスボス=最後の敵なわけだし、そいつを倒せるならもう経験値もお金も不要なんじゃないかなって気はする。

 『ゲーム』については、まぁジェムの総量も勝利条件になるらしいから無意味ではないけどね。


「んー、ゲームによるかも。RPGだとラスボスは何も落とさないことが多い気がする」

「そ、そういえばそうかも……」


 ドラゴンハンターとかなら、ラスボス素材で装備作るから何もドロップしないと残念な気分になるけどね。

 それはともかくとして、もっと重要なのは特記事項の方だ。


”これ、どういう意味だと思う?”


 念のため皆にも確認してみる。

 私の解釈が合っているかどうか、ちょっと自信がない。


「クリア内容によりジェム増加は、以前の『嵐の支配者』と同じですわね、きっと」


 うん、まぁそこは多分そうだろう。

 『完全撃破』または『撃退成功』ってなってるし、それによって変わるって感じで500万は最低保証額ってところかな。


「常時乱入対戦……は見たままっすよね」

「問題はその次かな? 『乱入対戦での敗退後、リスポーンにより再度対戦可能』ってところ」

「うーん……普段の乱入対戦だと、確か即時復帰できたはずにゃ。でも、そうならないでリスポーンしないとダメ――替わりにリスポーンしたらまた対戦可能ってことだと思うにゃ」


 ふむ、やっぱりそうか。

 椛の言うことは私の解釈と一致している。

 千夏君たちも『そういうことだよな』と椛の意見に納得しているようだ。

 ……これはおそらく、ナイア戦の時と実質同じことになると思っていいんだろう。

 あいつら――アビサル・レギオンとの戦いでは、こちら側は倒されても『リスポーン』で復活することになり、リスポーン後は変わらず戦うことができた。

 これが本当の意味での乱入対戦でユニット相手に倒されたのだとしたら、リスポーンではなく『即時復帰』することになったはずだ。そして、復帰できたとしてもユニットと戦うことはできなくなっていただろう。

 だが、ガイア戦ではたとえユニットに負けたとしてもリスポーンすることで復帰可能、何度でもユニットと戦うことができるというわけだ。

 ただし、※印で注釈が付いている通り、普段のリスポーンと違って『体力がゼロになった場所』がリスポーン地点になる……という違いがあるみたいだ。


”リスポーン地点が私の近くにならないのはどうにかなるかなー、と思ったけど……『強制移動不可』がちょっと面倒かな……”


 地味ながらも面倒な制約だと思う。

 もしも皆が何らかの事情でバラバラになってしまった時、強制移動で再集合できないというのはちょっと怖い。

 ……特に私が一人になってしまったら『詰み』だ。

 まぁこれに関しては、かつてのアラクニド戦の時みたいに私とユニットの子がバラバラの位置からスタートしない限りは大丈夫……だとは思うけど。今思うと、あのクエストだけなんだよね、あんな変なことになったの……。


「ん、それよりも気になることがある」

”? ありす?”

「常時乱入対戦、ってことは――このクエストは複数の使い魔が参加することを想定しているってことだと思う」

”! 確かに……!”


 ありすの言う通りだ。

 わざわざ乱入対戦のことについて記載しているってことは、つまりはそういうことなのだろう。


「……きっと、すず姉たちもこのクエストに来るはず」


 美鈴たちか……メンバーの数はこちらの半分だけど、ぶっちゃけ一人ずつの戦闘力は相当高いと思う。

 特に私が脅威に思っているのはBP(ブラック・プリンセス)だ。ナイア戦の時も、霊装並の強度であるはずの空中要塞を軽々とぶち抜く攻撃力を発揮していたし。

 ケイオス・ロアについては能力の詳細はわからないけど、ホーリー・ベルと同等――レベルアップを繰り返してる分、相当強くなっているのは間違いない。

 オルゴールもあの万能の『糸』は、敵に回ったら非常に厄介だろう。

 唯一わからないのは『アル』――アルストロメリアという4人目だけど……実際に目にしないとわからないか。


「他の使い魔も来るかもしれねーな」

「うん……僕たちだけとは思わない方がいいと思う……」

”そうだね。もう1~2組は来るかもしれない、という覚悟はしておこう”


 正直、ラスボス到達までのクソ面倒くさい上に大変な条件を満たせるチームがそう何組もいるとは思えないけど……『いる』と思っておいた方が良いだろう。杞憂に終わればそれはそれで良いが。


「んふー……すず姉と競争……」


 ……が、ありすは以前美鈴と話した『どっちが強いか』を証明する場がやってきた、と思っているみたいだ。

 最重要目標はあくまでもラスボスなわけだから、あんまりそっちに集中するわけにもいかないけど……止めるのも野暮だし、どうなるかわからないから黙っておくか。ありすもわかってないなんてことないだろうし。


「もう一個気になるのは、この勝利条件の『撃退』かな?」

「撃破と撃退って何が違うにゃ?」


 楓たちが気になっているところも、確かにそうだ。

 が、これについてはドラゴンハンターをプレイしている私やありす、あとは桃香もどういうことかはピンときていた。

 ……ま、だからこそ特に気にしなかったわけなんだけど。


「ん、ふー姉とはな姉はドラハンやってない?」

「やってない」

「あたしもだにゃー」


 星見座姉妹って、あんまりゲームは普段やらないみたいなんだよね。

 なっちゃんもまだゲームに夢中になる歳でもないし、雪彦君は少しはやるみたいだけど……RPGとか自分のペースでじっくりとやるタイプの方が好きみたいだ。


”ドラハンでも同じような条件があるんだけど、まぁ要するに『ラスボスの体力をゼロにする』が撃破、『ラスボスの体力を一定量まで削る』が撃退になるかな”


 超大型モンスターなんかで、そういうギミックの敵がいるのだ。

 ドラハンだとクエストに『時間制限』があり、制限時間内に倒しきるか、あるいは体力を一定量削っておけば時間切れでも勝利となる……そういう仕様だ。

 果たしてガイア戦に時間制限があるのかはわからないが、とにかく相手にダメージを与えられるだけ与えていけば、とどめを刺せなくても勝てる……ということになる。


「ふーん……なるほど」

「むぅ、つまり……倒しきれないくらいの体力があるってことかにゃー……」


 う、椛の言う通りだ。

 ……これは魔力が尽きても倒せない、そういうくらいの相手であるかもしれないとは覚悟しておくべきか……。

 最悪、安全な場所があれば交代で10分変身を解いて魔力回復させて……という手段も取れなくはないけど、危険だしあんまりやりたくはないかな。




 その後もクエストの表記から色々と考えたけど、後はもう実際に戦ってみるしかない、ということになった。

 とりあえず、ラスボスは異様な体力はありそうだ、ということで回復アイテムをとにかく多めに持っていくことに。

 『ポータブルゲート』は私が1つもつだけにとどめておくことにした。各自に持たせても、2つ目の特記事項――『撤退時、クエスト自動失敗』により意味がないと判断した。

 この2つ目の特記事項、実は『三界の覇王』の時にも同じ内容が記載されていたので内容はよくわかっている。

 『離脱(リーブ)』も『ポータブルゲート』も、どちらを使っても『クエスト失敗』で終わってしまうのだ。『ポータブルゲート』で一時撤退して、アイテム補充して再挑戦……とはいかないのである。まぁ考えてみればそりゃそうだよね、って感じだけど。

 なので、脱出アイテムよりも回復アイテムを1つでも多く持っておきたい、と皆主張したのでその通りにすることに。

 ……心配は心配だけど、確かに皆の言う通り回復アイテムに割いた方が今回は勝率が良くなるだろう。


 アイテムの準備も終わり、全員が変身――後はクエストを受領して出発するだけだ。


「……ついにここまで来たんだな、オレたち」

”……うん。ようやくたどり着いたんだね”


 私とアリスは互いに顔を見合わせ、ニヤリと笑う。

 ……美鈴(ホーリー・ベル)と別れた後、ありすのした決意――『このゲームのクリア』が目前に迫っている。

 この最後の戦いに勝利しさえすれば、きっと私たちは『ゲームクリア』できるし、また同時に『ゲームの勝者』となれると思う。

 あの時から大体半年くらいか……その間色々あったよなぁ、ほんと。




 ……ラスボス戦へと向かう前に、少し前のことの話をしようと思う。

 ラスボスの前座となる『三界の覇王』――やつらとの戦いについて……。


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