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5-82. Formidable Girls!! 1. 殲滅開始

*  *  *  *  *




 一時はどうなることかと思ったけど、無事にアリスとヴィヴィアンのリスポーンは完了した。

 ……実は最初にアトラクナクアが崩壊した時に『やった』と思ってリスポーンしちゃったのは内緒だ。もしあの後もアトラクナクアがピンピンしていてアビゲイルを襲ったとなったら、本当に拙い事態に陥るところだった――まぁシャロが【観察者(ウォッチャー)】でアトラクナクアのことを見てくれて、もう虫の息だってのはわかってたんだけど。

 でもそのおかげでモンスターの大群をミオ一人で抑え込む、という事態にならないで済んだ。アリスたちの復帰が後少しでも遅れていたらそうなりかねないところだったのだから、大目に見て欲しい。

 ……いや、まぁトンコツたちにはしこたま怒られたけど……。


「使い魔殿、敵は後どれくらいいる?」

”えっと、大きな反応は……やっぱりあの超巨大ムカデとダイヤキャタピラくらいかな?”


 宝石芋虫シリーズは他にも何匹かいるみたいだけど、特に危険そうなのはやはり例のダイヤキャタピラだけみたいだ。

 後は超巨大ムカデか……今は顔をこちらに向けて様子を見ているだけだけど、動き始めたらそれだけで脅威となる。果たしてどうやってここを乗り切るか……。

 私が何か考えるよりも先に、ヴィヴィアンがまず動いた。


「ご主人様、申し訳ございませんが、わたくしの魔力の回復をお願いいたします。

 ――少々無茶をいたしますので」

”……う、うん?”


 無茶は今に始まったことじゃないけど、わざわざそう宣言するってのが何か嫌な予感するけど……。


「サモン《ペルセウス》」


 一体何をするつもりなんだろう?

 わからないけど、《ペルセウス》を呼んだことで魔力が大幅に減ったのでキャンディを与えて回復させる。


「サモン《ヘラクレス》」


 また?


「サモン《ベレロフォン》」


 ……え?


「サモン《ランスロット》」


 ちょっ!?


「サモン《ガウェイン》」


「サモン《パーシヴァル》」


「サモン《クリシュナ》」


 …………。

 瞬く間に私たちの周囲を取り囲むように戦士型の召喚獣が現れた。

 その数、合計で16。

 一体でモンスターの群れとも十分渡り合える性能の、英雄を模した召喚獣が合計で16体、既に呼び出している《ナイチンゲール》と合わせて17体……。

 こ、これは……とんでもないな……。


「《ナイチンゲール》は負傷者の治療を。残りはシャルロット様たちを護衛しつつ、()()を殲滅しなさい」


 ヴィヴィアンの召喚魔法がスゴイことはわかっていたつもりだけど、まだまだ私の認識は甘かったみたいだ。

 彼女が本気を出したら――というよりも、後先考えずに全力を出したら……ひょっとして、私のユニットの中で一番殲滅力が高いのではないだろうか?

 ヴィヴィアンの号令に従い、英雄たちが周囲に散開、モンスターたちへと攻撃を開始する。

 なるほど、超巨大ムカデとかの大物以外を召喚獣で片づけつつ、今まで頑張ってくれたアビゲイルたちの護衛をさせようというつもりか。召喚獣ならユニットの一人や二人担いだまま移動することも容易い。超巨大ムカデが暴れ始めても後衛のことを心配する必要もなくなるというわけだ。


「ご主人様、わたくしは後はアイテムホルダーの分で十分ですので、姫様かジュリエッタの方を」

「……ジュリエッタももう大丈夫。だから御姫(おひぃ)様に譲る」


 ジュリエッタも手持ちのアイテムは結構使っちゃったみたいだけど、まぁ彼女の場合は私を頭に載せたまま戦うというのが結構危なっかしいという面もある。


「うむ。では、使い魔殿」

”うん”


 ヴィヴィアンはもう連続召喚とか無茶はするつもりはないらしいし、ならば魔力消費が一番激しくなるアリスの傍にいた方がいいだろう。

 敵はまだまだ無数にいるし、アリスとヴィヴィアンが近くにいられるとは限らない。

 アリスの肩にしっかりとしがみつき、振り落とされないようにする。


「……そこに隠れているやつ、出てこい」


 と、アリスがダイヤキャタピラと超巨大ムカデの丁度中間地点に当たる場所へと魔法を投げつける。

 壁の奥に何か隠れている? レーダーには反応はなかったけど……。

 破壊された壁の向こうから、二つの影が現れる。


”アンジェリカ……?”

「む……」


 現れたのはアンジェリカの面影を残した女性――彼女が成長したらこんな感じだろうな、と思わせるような大人の女性。

 それともう一つ……様々な蟲の特徴を取り込んだ、人型の蟲だった。


”あいつは……! 気を付けろ、ラビ! あいつ、無茶苦茶強ぇぞ!”


 トンコツはあの蟲人間に一度遭ったことがあるようだ。

 詳細は不明だけど、その忠告は素直に受け取っておこう。

 ……図鑑での名称は『■界の■王』――あれ? 見ている間に何か変わった?


”――『冥界への復讐者(ジ・アヴェンジャー)』”


 それがあいつの名前らしい。

 図鑑の名称が変わった瞬間、やつの反応もレーダーに映るようになった。わけがわからない……けど、レーダーに映ったってことはあれもモンスターと考えてよさそうだ。トンコツの反応からして、ジュリエッタ(メガロマニア)の時とは違う状況みたいだし、倒してもいいはずだ。

 気になるのはアンジェリカっぽい女性だけど……。


”ヨーム、あの子は……アンジェリカなの?”

”……うむ。見た目が変わっているが、間違いない”

「わかった」


 やや自信なさげだけど、ヨームがそう言うのであれば彼女はアンジェリカなのだろう。

 今までもこのクエストで遭遇したけど――そうだね、あの子のことも解決しなければならないんだった。


「ふん。これで役者が全員揃ったってわけか。

 おい、ミオとやら。貴様――誰と戦う?」


 アリスの問いかけの意図はわかっている。

 この場でまともに強敵と戦えるのは、こちらは四人。

 対してあちらはアヴェンジャー、アンジェリカ、超巨大ムカデ、そしてダイヤキャタピラたちで四種類いる。


「――あたしはあの芋虫をもらうわ。アトラクナクアにはアビーがお返ししてくれたし、あたしはあいつに復讐しなければいけない理由がある」

「ふん、オレたちもあいつには借りがあるが……まぁいい。貴様に譲ろう」


 アリスとヴィヴィアンも一度ダイヤキャタピラには敗北している。

 本音で言えばアリスだってリベンジしたいんだろう。

 でも、そこは空気を読んでミオの方に譲ることにしたらしい――大人になったなぁ、とは感心しない。だって……。


「ではオレはあの黒いやつを仕留めよう」


 ……きっとアヴェンジャーの方が強敵だと思ったからだろうし。

 この期に及んでより強敵に挑みたがるとか、余裕があるのか自信があるのか……何とも言えない。


「それではわたくしはあの悍ましい害虫を始末いたします」


 本当は蟲が嫌で嫌で仕方ないだろうに、ヴィヴィアンはさらりと超巨大ムカデを相手にする、と宣言した。

 既に英雄たちを数多く召喚してしまっている上に、流石にあの巨体に対抗できるような召喚獣なんてあるのだろうか……?

 ……いや、彼女が『やる』と決めたのであれば、きっとやり遂げるはずだ。私はそれを信じよう。


「ジュリエッタ」

「……わかってる」


 お互いにみなまで言わず、二人は頷き合う。

 ジュリエッタの相手はアンジェリカだ。

 ここに来るまで、本当に色々あった――けど、二人の因縁もここで決着がつくだろう。私は何となくそんな気がした。


「N/K@N@T#T/S$N/M/R@T$NNR@R@N@T#R@K$R@S$R@K?R@T?N/M?R@M/R@K@T/K@N/NNR@, T#T/K/T/T?/N?T/N/M/N/K$T/M?/K@N@T#R@M?R@K@T/S$T/T?N@M?R@M/R@K@T/K@N/NNR@

 T?/M/M/T?N/K@T/K@N/M/N/N?/N/N/T#R@, T?N/N?T/T?N/T#T/S$/K$T/T#T/K/T/T?/N?T/N/T#R@M?T/M?R@S$T/M/T/N?/S$/K?T/M/T/S$T/M/T/N/」


 ……何だ? アヴェンジャーから聞きなれない『音』が発せられている。

 これは、何かを語り掛けている、のだろうか……? 『嵐の支配者』の時はまだ何とか言葉らしきものなのはわかったけど、アヴェンジャーの方はそもそも言葉なのかどうかすら確信がもてないけど……。

 もしかして会話で分かり合えることがあるのかもしれない。

 でも――


「T?T/R/T/, N?/K@K@NNT/N?N@T#R@」


 アヴェンジャーが両手を広げると同時に、蟲たちが動き出す。

 ――戦いは避けられない、か。


「ゆくぞ、貴様ら――ぬかるなよ!」

「かしこまりました、姫様」

「……誰に言ってるの」

「えぇ、あなたたちもね」


 こちらもアリスの号令と共に四者がそれぞれの相手へと向かって行く。




 これが『冥界』における本当の最終決戦となる。

 私はそれを確信していた。


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