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5-57. Who are you? 4. 集結へ向けて

◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 バトーと別れ、回り道をしつつジェーンの反応に向かっていたトンコツたち。


”!? ジェーンの反応が消えた……!?”


 その道中でジェーンがレーダーから消えたことに焦るものの、


”落ち着き給え。おそらく『巻貝』の中に入って行ったのだろう”


 すぐにヨームがフォローする。

 トンコツたちの知るところではないが、実際にジェーンはラビたちと共に『巻貝』――女王の巣へとこの時侵入していたのだ。


”シャロ、ジェーンは確認できたか?”

「い、いえ……《アルゴス》がたどり着く前に中に入っちゃったみたいですぅ……」

”むぅ……”


 トンコツは唸る。

 唸りながら考える――これからどうすべきかを。


”……ヨーム、ここから一直線に『巻貝』に向かってみるか?”

”そうですね……”


 ジェーンの反応が消えた位置まで移動してから、というのもありだが時間がかかる。

 『巻貝』内部がどういう構造になっているかはわからないが、とにかく内部に入ってしまえばレーダーが再度捉えてくれるだろうという期待があった。

 問題は、バトーが警告していた『巻貝』周囲に出現するであろう超巨大ムカデの存在だ。

 襲われたとしたら今のパーティでは一溜まりもないだろう――逃げるしか出来ないが、それすら危うい巨体だ。


”……行くしかない、か”

”ですねぇ……”


 迷いはしたが選択の余地はない。

 このまま『巻貝』に近づかずにいても何も進まない。

 ジェーンがラビと共にいるという保証もない。

 もしかしたらラビかバトーが『巻貝』の中にいるであろうボスを倒してクエストクリアになるかもしれないが、そうならなかった時の方が問題だ。

 何よりも――


 ――ここでラビにおんぶにだっこじゃ、かっこつかねぇしな……。


 トンコツたちに戦力がないのはラビも承知の上だ。きっと責めることはないだろう。

 しかし、ジェーンが『巻貝』の中に向かったのは事実だ。それを知りつつ尻込みしていたとあっては、シャルロットの信頼を失ってしまう。

 それにトンコツ自身が思うように、ラビに全て任せたままというのは格好がつかない――だけではない。

 ()()()()()()()()()()()()だと思うのだ。

 成り行きと勢いでフレンドになったとはいえ、それを軽んじるつもりはトンコツには毛頭ない。


”――よし、シャロ。ジェーンは『巻貝』にいることはわかったんだ、《アルゴス》は俺たち周囲の警戒に集中させろ。大ムカデだけじゃなく、他のモンスターがいないとも限らねぇ”

「は、はい!」

”ふむ……それではフォルテはオラクルで目的地までのルートを占ってください。凛風、もしもの時はあなたに任せます”

「ええ」

「わかったアル!」


 全員の覚悟は決まった。

 後はフォルテのオラクルが発動次第に出発となる――《アルゴス》が再度周囲を警戒するのを待たないのは、時間がもったいないからだ。




 そして数分後、フォルテのオラクルが発動し、トンコツたちは『巻貝』目指して出発した。

 監視はしているが範囲外から一気に襲い掛かられたら拙い。ユニットたちはそれぞれの使い魔を抱えて全速力で『巻貝』目指して駆ける。

 途中で超巨大ムカデが出てきた場合は、一番戦闘力の高い凛風が受け持つつもりであったが――


”……ついた……?”


 道中で小型のモンスターが何度か出てきはしたものの、一行は無事に『巻貝』――女王の巣へとたどり着くことが出来た。


”シャロ、周囲の様子は?”

「は、はい……大ムカデは特に見えません……」


 シャルロットの《アルゴス》にも超巨大ムカデの姿は映っていない。

 《アルゴス》の範囲外にいるのだろうか、それ以外の理由があるのかまではわからないが……。

 ともあれ、トンコツたちは無事にたどり着くことが出来たのだ。


「んー、何かすんなりいけたけど、不気味アルな……」

「ええ。確かにオラクルで安全なルートを辿りはしましたが、妨害が少なすぎるのは気になりますね……」


 凛風とフォルテも首を傾げている。

 もちろん、特に危険もなかったこと自体は喜ばしいことなのはわかっているが、何もなさすぎて逆に不安になるくらいなのも確かだ。


”……バトー氏たちの方に向かったか、あるいは――”

”俺たちの知らない誰かのところに向かっているか、か……”


 このクエストで出会えた使い魔は少ない。

 しかし、他に全くいないとは限らないだろう――トンコツたちの知るところではないが、実際にラビたちは別の使い魔のユニットを目撃していることから、複数のチームが参加していることは確実なのだ。

 モンスターにやられずに生き残り、かつトンコツたち同様に女王の巣へと向かっているチームもいる可能性はある。そちらに超巨大ムカデが向かっていることもありえるだろう。

 どちらにしろ、《アルゴス》で見えない以上彼らの近くには超巨大ムカデはいないということは間違いない。


”アンジェリカの位置はわかるか?”

「えっと……特にモンスターと戦っているわけではないみたいですけど……位置までははっきりとは……」

”ふむ、こちらのレーダーにも映ってないようだ。レーダーの範囲外にいるのか、別階層にいるのかまではわからないが”


 気がかりの一つであるアンジェリカの行方もわからないままだ。

 バトーと情報共有した際に得た事柄から、アンジェリカも敵に――■界の■王に――操られている可能性が非常に高い。

 こちらも姿が見えない以上はどうすることも出来ないのだが。


”むぅ……。

 ヨーム、済まないが――”

”ええ。わかっていますよ、トンコツ氏。今はまずジェーン君との合流を目指しましょう”

”……すまん”


 ヨームも、そしてトンコツもアンジェリカを放置していていいとは当然思っていない。

 しかし今は居場所のわかっているジェーンとの合流の方が優先だ。

 ジェーンが合流すればトンコツたちの戦闘力は大幅に上昇する。更にジェーンがラビたちと一緒にいれば飛躍的に上昇するのは間違いない。

 何をするにしても仲間と合流して戦力の向上を図る方が今は重要だ、トンコツたちはそう判断した。


”……うしっ、じゃあ行くか!”


 危険は承知の上、トンコツたちも女王の巣へと入ることにする。




”……お、ジェーンの反応があった!”


 入ってすぐにトンコツはレーダーを確認すると、そこには予想通りジェーンの反応があった。

 だが、同様にもう別の反応――ラビたちも確認した巨大モンスターの反応もある。


”どうやら、ここがクエストの最終目的地で間違いないようですね”

”だな。これでこのデカいやつがボスじゃなければ詐欺だぜ”


 単純に大きさだけでモンスターの格が決まるわけではないが、超巨大ムカデとは違い『いかにも』な建物の中にいる存在だ。よほど捻くれた発想でもない限りは、この反応がボスだと考えて間違いないだろう。


”……むぅ、これは流石に厳しいか……”


 実際に目にしてみないことにはわからないが、これまでの経験から考えてボスと思しき存在には現在の戦力では到底敵わないだろうとトンコツたちは推測する。

 絶対的な法則ではないにしても、経験からして同レベル帯のモンスター同士の場合、体格の大きいモンスターの方が強力であることが多い。

 また、クエストのクリアのために必須となるいわゆる『大ボス』は、他のモンスターに比べてレベルが高い傾向がある。

 そこから考えるに、このクエストのボスは相当な強敵であることは容易に推測できる。


”とりあえず、まずはジェーン君臨との合流を優先させましょう。その後のことは合流してから考えればよろしい”

”ああ。そうしよう。

 ……問題はこの巣の中……結構複雑な作りになっているってことか……”

「うーん、まるでダンジョンアルな」


 モンスターが作ったとは思えないほどの複雑な構造をしていることは入ってみてわかった。

 人間がきちんと設計した建物とは異なる、雑然とした作りではあるものの自然と入り組んだ作りになっている。それでいて蜂の巣などに見られる整然とした秩序は感じられない……ひどく歪で不気味な印象を受ける。


「……巨大モンスターの体内、のようですね……」

「う、言われて見るとそれが一番近いですぅ……」


 フォルテとシャルロットが漠然と感じていたことを明確にする。

 二人は現実世界でもある程度ゲームをする。そうしたゲームの中に、超巨大モンスターが存在し、その体内へと侵入して(コア)を破壊するような展開があったことを思い出したのだ。

 この女王の巣に感じる不気味さは、そうしたモンスターの体内を連想させてくる。もちろん、この巣自体が生き物ではないのであくまで連想させるだけなのだが。


”……とにかく先に進もう。ジェーンからこっちを見つける術がないわけだしな”


 考えても仕方ない、と先へと進むことにする。

 ジェーンと合流するのが先か、それともトンコツたちあるいはジェーンがボスに遭遇してしまうのが先か……。

 とりあえずボス以外のモンスターの反応がなぜかないため途中でやられるという可能性がないのは幸いだった。

 後はボスのいる場所まで行かなければジェーンと合流出来るルートがない、ということさえなければ良いのだが……。


「……ふぅ……今日は来客の多い日だ」

”!? 誰だ!?”


 女王の巣の入口、大広間のようになっている場所から奥へと進もうとしたところで、何者かが近づいてくる。

 巣の奥へと通路から一人の人物が姿を現す。


「ほう……? これはまた大量だな」


 ボサボサの黒髪に白衣――気だるげな表情を一切変えないその女は……別の場所でラビたちの前に現れたはずの、ドクター・フーであった……。


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