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5-27. 遭遇戦 2. ジュリエッタvsガンマン

 銃声の聞こえた方へと方向転換した私たち。

 それと時を同じくして向こう側もこちらに気付いたのか、接近してくる気配がする。


”ジュリエッタ、敵かもしれないけどすぐに攻撃はしないで”

「うん、わかった」


 危険な相手かもしれないけどそうではないかもしれない。

 まぁ仮にユニットだったとして、乱入対戦を仕掛けなければ特に問題はないだろうけど。

 ……相手がクラウザーだとするとチートで乱入対戦に無理矢理参加させられることはあるか。

 うーん、でもこの間のクラウザーと一緒にいたユニットは『刀』を使っていたし、この銃声とは無関係なんじゃないかって気はする。前回の戦いの後に、ジュリエッタの代わりの新しいユニットを追加した可能性もあるにはあるが。


”……いた!”


 モンスターを倒しつつ進んで行き、幾つかの障害物を越えて行った先に相手の姿が見えた。

 人影が二つ――間違いない、ユニットだ!


”良かった、クラウザーじゃなかった……”


 見えている人影のうち、片方に抱かれている『馬』のぬいぐるみを見て一先ず安心する。あの『馬』が使い魔なのだろう、ということはクラウザーではないということだ。

 ただ、私たちの知らない使い魔とユニットということは間違いない。


「……ガンマンと、巫女?」


 そうだね、ガンマンと巫女だね……また変わった姿のユニットだなぁ……って私の方の三人も人のことは言えないか。魔法少女らしい魔法少女って、実はホーリー・ベルくらいしか見たことないや。

 ともあれクラウザーではないし向こうもモンスターと戦ってたようだし、まずは話し合いたいところだ。

 向こうもこちらの姿を確認。ガンマンの方が巫女と使い魔を庇うように前に出て来る。

 警戒されているか。まぁ仕方ない。お互い初対面だしね。

 となると余り近づかない方がいいかな……? 迂闊に近づきすぎたら余計に警戒されてしまうかもしれないし。


”ジュリエッタ、ここで止まって”


 ガンマンの射程距離ではあるけど仕方ない。

 大体15メートルくらいの距離で私たちは対峙する。

 その時だった。


『Ready Fight!!』


 ――は?


「……殿様!?」

「っ! あんたたち……っ!!」


 空中に突如対戦開始を告げる文字が浮かび上がる。

 それを見てジュリエッタは戸惑い、ガンマンは怒りの形相を浮かべ手に持っていた銃をこちらへと向ける。

 どうして!? 私は乱入対戦の承諾なんてしてないし、そもそも乱入対戦の依頼すら来ていないのに……!?


”ちょ、ちょっと待っ――!”


 戸惑っている暇はない。

 すぐに誤解を解こうと声を掛けようとしたが、それよりも早くガンマンが銃弾を放つ。


「……よくわからないけど、撃ってきたなら仕方ない」


 最初の銃弾は横に跳んでかわすことが出来た。

 ……が、撃たれたことによりジュリエッタの中で相手を『敵』認定したらしくスイッチが切り替わる。


「ライズ――《アクセラレーション》」


 私が止める間もなくジュリエッタも魔法を使い自身を強化。一気にガンマンの懐へと潜り込もうとする。

 何が何だかわからないけど、このままは拙い……んだけど、向こうも完全にやる気になっているし、どう収拾つければいいんだ、この状況!?




*  *  *  *  *




 敵となってしまったガンマンと巫女――だが、巫女の方は後ろに控えたまま動かない。見た目通りのサポート系なのだろうか? 使い魔を抱いたまま前へは出ないでいる。

 ジュリエッタの性格なら一気に後ろの使い魔を狙うかと思ったが、今回に限ってはガンマンの方に狙いを絞っているようだ。

 おそらく、ガンマンの銃撃を警戒しているのだろう。迂闊に後ろへと攻撃を仕掛けようとして、背後から銃で撃たれたとなっては洒落にならない。

 ……このガンマン、今までとは種類が違うがかなり警戒した方がいいと私も思う。

 何しろ、持っている霊装が霊装だ。射程距離も攻撃速度も、そして威力も見た目通り『銃』そのものだと思った方がいいだろう。下手をすれば一撃で体力の大半を消し飛ばされかねない。

 もうこうなっては仕方ない。どこかで戦闘を止めたいところだけどその前にやられてしまっては意味がない。

 私はスカウターでガンマンの能力を見れる分だけ把握する。


「コンセントレーション!」


 さて戦いの方だが、《アクセラレーション》によって加速したジュリエッタが横へと回り込み、一気にガンマンへと距離を詰める。

 銃撃は距離が空いていれば一方的に攻撃できる。かといって、至近距離から撃って効果がないというわけでもない。それでもジュリエッタとしては距離を詰めなければ何も出来ないのだからその選択は正しい。

 《アクセラレーション》によって加速したジュリエッタのスピードは驚異的と言える。格闘戦に慣れていないユニットであれば目で追うことも出来ず、一方的に蹂躙されるだけだろう。

 ――だが、


「……!?」

「そこだ!」


 ガンマンはその場から動かず、しかしまるでジュリエッタの動きを予測したかのように無造作に銃を横に向けて発砲する。

 明らかにジュリエッタのスピードに着いていけてなさそうだったのに、なぜ?

 疑問について考えている余裕はない。

 銃弾がジュリエッタの右太ももを貫く。


「ぐっ……」


 ……にわかには信じがたいことが起こった。

 今までジュリエッタは敵の攻撃を見事に捌き切ることでダメージをあまり受けずに戦って来られた。それはモンスター戦においてだけでなく対ユニット戦においてもだ。アリスたちとの戦いでさえ、ほとんど攻撃を受けずに戦っていたのだ。

 だというのに、今の銃撃は直撃した。流石に足一本を失うことはなかったものの、的確に太ももを貫かれてしまっている。

 弾丸の速度が速くて回避しきれなかった、というのもあるだろう。

 だが今のは違う。ジュリエッタは回避()()()()()()のだ。


「――メタモル!」


 足を撃たれたくらいで止まるジュリエッタではない。

 すぐさまメタモルで両腕を硬い甲羅へと変化させ、傷ついた足を無理矢理動かしてガンマンへと迫る。


「ちっ……リローデッド《貫通弾(ピアサー)》!」


 《アクセラレーション》は既に切れている。今のジュリエッタの動きなら目で追えるだろう。

 詳細は分からなくてもジュリエッタの両腕が『楯』のように変化したのを見て、ガンマンは舌打ちすると新たな魔法を使う。

 この魔法は――拙い!


”ジュリエッタ、避けて!”


 突進するジュリエッタに向けて警告を発する。

 が、間に合わない!?

 放たれた銃弾を『楯』で受け止めてそのまま押し切ろうとするジュリエッタだったが、連続で6発放たれた弾丸が命中する。

 三発目までは『楯』は受け止めることが出来たが、四発目でついに弾丸が『楯』を貫通――残り二発が腕を貫き、ジュリエッタの胴体を抉る。


「ぐぅっ……!?」


 ジュリエッタの体力ゲージがごそっと減る。

 彼女は体力のステータスがそれほど高くない。まだ致命傷とは言えないけど、この調子で後数発も食らえばレッドゾーンに突入してしまう。


「リローデッド《跳弾(スキッパー)》!」


 更に続けて魔法を使う。

 一気に畳みかける気か!


”ジュリエッタ!”


 魔法の詳細を伝える余裕すらない。相手の動きが素早すぎる!

 ジュリエッタには警告することしか出来ない状態だ。

 致命傷を受ける前に回復もしないと……。

 相手の攻撃を受け止めることは無理だとわかったジュリエッタは痛みを堪えつつ相手の横へと回り込み逃れようとする。

 そんなジュリエッタを追いかけるようにガンマンが発砲する――が、動き回るジュリエッタには当たることはない。

 このまま回避しつつ回り込んで接近する――そう考えたであろうジュリエッタだが、このままではいけない!


”ジュリエッタ、防御して!”

「!? メタモル、ライズ《ハードスキン》!」


 私の警告の意味がわからず、しかし言われた通り全身を――私も含めてメタモルで作った『髪』で覆い、更にライズで防御力自体を上げる。

 次の瞬間、ジュリエッタの全身に突如として弾丸が襲い掛かる。


「……なん、で……!?」


 間一髪だった。もしジュリエッタの防御の展開が遅れていたら、今の一撃でやられていたかもしれない。


「くっ、仕留めそこなった!?」


 一方でガンマンは今の攻撃でジュリエッタを倒せるつもりだったのだろう、当てが外れて表情に焦りが見える。

 このまま動かないでいればいずれ接近されると判断し、ガンマンの方からジュリエッタと距離を取ろうとする。

 ……ここで追い詰められれば良かったのだが、ジュリエッタのダメージは浅くない。グミで回復しつつ、メタモルで傷の修復を行い仕切り直しだ。

 その間に私はスカウターで見たガンマンの能力について説明する。

 判明した能力は、魔法が三種類だ。ギフトについてはマスクされていてわからなかった。

 ただ、見えてもよく効果がわからないものもあったんだけど……。


「むー、厄介な相手……」


 お互い距離を取ったまま油断なく相手の動きを見張りつつ、膠着状態へと陥った。

 『厄介な相手』――初見で能力が不明だったとは言え、ジュリエッタにそう言わせるとは……このガンマン、かなりの強さだと言える。

 倒せるか……?


”……って、そうじゃない! ちょっと二人とも待って!”


 私たちの目的はガンマンたちを倒すことじゃない。

 なぜか乱入対戦が始まってしまっているけど、私は――そして多分相手も――対戦をしようとは全く思っていなかった。

 この戦い、これ以上続けても意味がない。

 何とか止めないと――!!


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