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3-17. キング・アーサー討伐戦 10. Repaint it black

2018/12/30 旧第2章分割に合わせ通番を修正

◆  ◆  ◆  ◆  ◆




 聖剣のチャージが終わり、再度《極光聖剣・一刀両断》が撃てるようになるまでおよそ2分くらい――アリスはそう判断した。

 この2分を乗り切るだけで勝利ができるわけではない。例えもう一度《極光聖剣・一刀両断》を放ったとしても、キング・アーサーは倒れないし、再び《エクスカリバーの鞘》の力で回復してしまうだろう。

 だから、やるなら『一撃必殺』だ。回復の隙を与えないほどの攻撃で、一刀のもとにキング・アーサーを倒す……それしか手段はない。


 ――出来るか?


 キング・アーサーへとヴィヴィアンの召喚獣と共に猛攻を繰り出しつつ、アリスは自問自答する。


 ――このままでは無理だ。


 ラビが分析している通り、《極光聖剣・一刀両断》の威力は神装とそう変わらない。だから、神装を同時に撃ったとしてもキング・アーサーを倒すことはきっと出来ない。


 ――では諦めるか?


 ここで諦めるということは、実質『ゲーム』からの離脱を意味する。

 きっとキング・アーサーはこの後もクエストに行く度に現れるし、そうなったらモンスターを先に倒されてしまいジェムは得られない。

 『ゲーム』のクリア方法は未だ不明だが、クエストに失敗し続けてるのにクリアできるとは到底思えない。他のプレイヤーがいるのだからなおさらだ。


 ――冗談じゃない!!


 強敵に負けることもあるだろう。負けるつもりは毛頭ないが、それでも前にヴィヴィアンとの対戦で『うっかり』負けてしまったように、テュランスネイルに捕まって潰されてしまった時のように、何かの拍子で負けることはある。それは仕方ないことだ。

 しかし、『ゲーム』に敗北することだけは絶対に嫌だ――アリス(ありす)はそう思う。

 この『ゲーム』自体は嫌いではない。むしろはっきりと好きである。だが同時に、この『ゲーム』はアリス(ありす)の『敵』であると認識している。『ゲーム』のクリアとは、彼女の中では最大の敵を打倒することとイコールとなっているのだ。

 途中で戦うモンスターや他のプレイヤーは立場上は確かに敵ではあるが、倒すべき敵――目標ではない。あくまで最終的に倒すべきは『ゲーム』そのものなのだ。

 だから、キング・アーサーを倒すことを諦めるなど絶対にあってはならない。『ゲーム』のクリアが出来なくなるということは、『ゲーム』に対してアリス(ありす)が敗北することを意味するのだから。


 ――なら、勝つ方法を考えろ! 考えろ! 考えろ!!


 剣を振るい、魔法を放ち、キング・アーサーの放つロンゴミニアトをかわし、聖剣を受け止め、《王剣無双・一刀斬破》を撃たせまいとする。

 一瞬たりとも油断できない『殺し合い』を演じながらも必死にアリスは考える。

 ……彼女はラビやヴィヴィアンが思う程、普段の戦いも余裕があるわけではない。もちろんメガリスのような『格下』相手ならその限りではないが。

 天空遺跡での氷晶竜との戦いからヴィヴィアンとの決戦に至るまで、いずれも油断など微塵もできない、強敵ばかりであった。

 ラビの助言やサポートのおかげで勝てた面ももちろんある。

 けれども、最大の勝因は戦いながらも必死に思考を続け、勝つための道筋を見出そうとしたアリス自身にあった。


 ――今のままじゃあいつに勝てない……!

 ――オレの力では届かない……!

 ――ヴィヴィアンの力でも届かない……!


 アリス自身の神装、ヴィヴィアンの呼び出す数々の召喚獣――更には神装に匹敵する《エクスカリバー》……そのいずれもキング・アーサーを打倒するには至らない。

 ならばどうするか? アリスは考え抜き――そして、一つの結論を出した。


 ――オレの力で届かず、ヴィヴィアンの力でも届かないのであれば……二人の力を合わせればいいだけか。


 奇しくも戦闘前にヴィヴィアンに向かって言い放った自身の言葉が、既に答えとなっていた。

 もし、アリスのこの時の思考を言葉にし、ラビたちに伝えたとしたら……その真意は伝わるまい。現に今力を合わせて二人で戦っているじゃないか、と反論されただろう。

 アリスの思う『力を合わせる』とは()()()()()()ではないのだ。


「……くっ、ふふっ……!」


 自らの導き出した結論、勝つための道筋に思わず笑みが零れる――ラビの言う『好戦的な笑み』だ。

 キング・アーサーに勝つ――そのためだけに、アリスは新たな領域へと踏み出そうとしていた……。




「――よし、《エクスカリバー》充填完了!」


 再度、《エクスカリバー》が光を纏う。

 これでいつでも《極光聖剣・一刀両断》を放つことは出来るが、それだけではキング・アーサーは倒せない。

 だから、『力を合わせる』のだ。

 そのためには今少しの時間が必要だ。


「ヴィヴィアン! 《ヒュドラ》を出せ! あいつの動きを押しとどめてくれ!」

「は? はい!」


 《ペルセウス》だけではもはやキング・アーサーは押しとどめられない。

 《コロッサス》で動きを止めたように、巨体で押しつぶすしかない。それでも止められるのはほんの一瞬しかないが。

 その一瞬で、勝負を決める。


 ――今オレに必要な魔法は……。


 心の中で『やりたいこと』を思い描く。

 それが実現可能なことであれば、勝手に使うべき魔法が思い浮かんでくる。この時思い浮かべる魔法は、具体的であればあるほどいい。漠然とした『やりたいこと』だけでは、上手く魔法が実現できないことがあるからだ。

 『やりたいこと』に対して何も返ってこない。イメージが漠然としすぎているからか。


 ――もっとだ……もっと『力』を……!


 焦らず使うべき魔法をより具体的に思い浮かべようとする。

 イメージするのは、キング・アーサーの放つ《王剣無双・一刀斬破》――解き放たれた聖剣の光を打ち破る力だ。


 ――あの光を呑み込め……! 聖剣の光を、更なる力で食いちぎれ……!


 《極光聖剣・一刀両断》では届かない。更なる光によって逆に呑み込まれるだけだ。それは既に一度証明されている。

 それゆえに、アリスは強くイメージする。

 聖剣の光すらも呑み込む――果てしない、深淵の如き『闇』を。


 ――『黒く塗りつぶせ』――


 アリスのイメージに応え、新たな魔法が思い浮かぶ。

 それは、今までの魔法とも、神装とも異なる効果を持つ、新しい魔法――


「――ext《滅界・無慈悲なる終焉(ラグナレク)》ッ!!」


 アリスの体から噴き出した『闇』が、《エクスカリバー》の刀身を包み込む。

 彼女の思いに応え、黒く……光を呑み込む『黒』へと聖剣が染まる。

 『二人の力を合わせる』――その言葉に対してアリス(ありす)が導き出した答えが『これ』だ。

 単純に二人で連携して戦う。確かにそれが一般的に言う『力を合わせる』だろう。

 だが、それだけではキング・アーサーには届かない。

 文字通り、二人の力を()()()()――つまり、二人の魔法の力を『合成』するのだ。

 《エクスカリバー》が完全に闇に飲み込まれ、漆黒の刀身へと様変わりする。

 虹色の光は消え、代わりに暗黒の炎が噴き出す。


「喰らえ――《裂界魔剣・一刀殲滅エクスカリバー・ラグナレク》!!」


 聖剣の光も、そして世界そのものさえも呑み込む『闇』の奔流がアリスの振り下ろした聖剣――いや、魔剣から解き放たれた……!


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