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3-13. キング・アーサー討伐戦 6. 難敵に立ち向かう

2018/12/30 旧第2章分割に合わせ通番を修正

*  *  *  *  *




 翌日には持ち越さない。今日中にキング・アーサーとの決着はつける。それが私たちの総意だ。

 幸い時間にはまだ余裕はある――とは言っても、美奈子さんが帰ってくる前に桃香を帰さないと色々と面倒なことになりかねない。それに、今夜は台風がこちらに近づいてきているという。早めに帰らないと、桃香の家の人を心配させてしまう。次のクエストが一区切りとなるだろう。その後は桃香は一旦家に戻り、自室からクエストに参加してもらうことになる。

 けれど、このクエストで終わらせるつもりだ。

 理由は――桃香のメンタル面のことを考えてのことだ。

 ここでしっかりとキング・アーサーを倒して問題を解決させないと、桃香は延々と思い悩んでしまうだろう。

 折角クラウザーから解放されて、純粋に『ゲーム』に挑めるようになったのだ。いつまでも暗い気分でいて欲しくはない――尤も、桃香が望めばユニットを解除するという道もありうるのだけど、私個人としては嫌な思いを抱えたまま離脱というのはちょっと歓迎できない。例え『ゲーム』から離脱した時に記憶が失われるとしてもだ。


「よし――キング・アーサーは今のところいないな?」


 挑んだクエストはまたしても平原での風竜退治だ。本当に何でこんなに風竜ばっかり出るんだろう……? 接近している台風に影響しているのだろうか? 風の神獣だし、ありえそうな話ではあるが……。

 風竜に対する疑問は今は置いておく。

 さて、このクエストではまだキング・アーサーは出現していないようだ。近くに風竜の姿も見えないし、もしかしたら私たちがモンスターと遭遇したタイミングで出てくるかもしれない。

 が、今回に限ってはモンスターをすぐには探さない。私たちの目的はキング・アーサーの討伐なのだ。


「ヴィヴィアン、頼む」

「……かしこまりました、姫様」


 ヴィヴィアンに呼んでもらうのは《エクスカリバー》である。

 私たちの推測が正しければ、《エクスカリバー》を手に取った瞬間にキング・アーサーはこちらへと現れるはずだ。

 すぐに戦闘を開始できるように、アリスは《神馬脚甲(スレイプニル)》に《剛力帯(パワーベルト)》を纏い、ヴィヴィアンも先に《ペガサス》を呼んでおく。もちろん、その後はキャンディで最大まで魔力を回復することを忘れない。


「サモン……《エクスカリバー》」


 《エクスカリバー》の召喚は成功。だが、まだキング・アーサーは現れない。おそらく、召喚された《エクスカリバー》を誰かが手に取ったら現れるのだろう。


「よし、ヴィヴィアン、使い魔殿を頼んだぜ」

「はい……」


 私は今回もヴィヴィアンに抱かれた状態だ。流石に《エクスカリバー》の撃ち合いになるであろうアリスの邪魔は出来ない。

 《ペガサス》にまたがりアリスから離れようとする。


「安心しろ、ヴィヴィアン」


 なおも不安そうなヴィヴィアンに向けて笑顔を浮かべてアリスは言う。

 一切の気負いも迷いもない、いつも通りのアリスだ。

 彼女の笑顔は、欠片も自分たちの敗北などない、と言わんばかりである。実際、負ける気など微塵もないのだろう。


「オレが証明して見せるさ――貴様のすごさを。そして、勝つ」


 アリスに促され私たちは《ペガサス》に乗ってその場から離れる。

 いよいよだ……アリスが《エクスカリバー》に手を伸ばす。


『キング・アーサァァァァァァァァッ!!』


 予想通り、どこからともなく例の叫び声が聞こえてきたかと思うと、アリスのすぐ側にキング・アーサーの巨体が出現する。

 ……やはり、《エクスカリバー》を手に取ろうとするとそちらを優先するようだ。どうも全くの無関係というわけではなさそうだけど……一体あいつは何なんだろうか。


「よう、キング・アーサー。

 早速で悪いが……今度こそ倒させてもらうぜ」


 手に取った《エクスカリバー》の切っ先をキング・アーサーへと向けて不敵に言い放つアリス。

 アリスの言葉を受けてもキング・アーサーは答えず――こちらも無言で剣を構える。

 互いに聖剣を構え――


『キングッ!!』

「うりゃあぁぁぁぁっ!!」


 真正面から切り結ぶ!

 ギィンッ! と離れたこちらにまで聞こえる甲高い、金属同士がぶつかり合う音が響く。

 ……よく考えたら、《エクスカリバー》が普通に『剣』として振られたのは今回が初だ。すっかり謎のビーム兵器として扱っていたけど……。

 二人は鍔迫り合いの姿勢となり押し合う。


「ぬぐっ……」


 《剛力帯》で腕力を強化しているとはいえ、元々の体格が違いすぎる。アリスの方が押し込まれてしまっている。

 このままでは《王剣無双・一刀斬破》を使われるまでもなく、押し切られて真っ二つにされてしまうだろう。

 当然、アリスがそのままでいるわけがない。

 相手に押されるまま体をいなし、剣を受け流そうとする。

 それと同時に足を蹴り上げ、キング・アーサーの左脛を蹴る。


『キンッ!?』


 流石に《神馬脚甲》で強化しているとは言え、攻撃力特化の強化ではない。蹴り砕くまでには至らなかった。が、バランスを崩すことには成功する。

 態勢を崩された上、アリスが横へと逃げたために勢いの止まらないキング・アーサーの剣が地面へと突き刺さる。その一撃で大地が大きく裂ける――もしまともに食らったとしたら、間違いなく真っ二つにされるだろう。

 アリスは止まらずに至近距離から魔法を放つ。


「cl《赤色巨星(アンタレス)》!」


 使うのは最大威力の質量攻撃魔法《赤色巨星》だ。広範囲を爆撃するのであれば《赤爆巨星(ベテルギウス)》だが、敵がキング・アーサー一体であるし、ここは衝撃力の高い《赤色巨星》の方が有効だろう。

 この一撃が決まれば大きなダメージも与えられる――そう期待した私たちだったが、


『アーサァァァァァァァァッ!!』


 何とキング・アーサーは左腕一本で《赤色巨星》を受け止める。


「嘘だろ!?」


 『神装』以外では最も攻撃力の高い魔法を、『食らっても無事』ではなく受け止められたことに流石にアリスも衝撃を受ける。食らっても無事というのであれば、頑丈な殻で身を守ったテュランスネイルや、異様に高い体力で耐えきったヴィヴィアンがいるが、魔法を押しとどめたのはキング・アーサーが初だ。

 どうやら、キング・アーサーのステータスはものすごく高いらしい。それだけではなく、ヴィヴィアンの召喚獣特有の防御力の高さも備えているようだ。

 受け止めた《赤色巨星》に向けて、残った右腕一本で聖剣を振るい両断。飛び散る爆炎や岩も気にせずに追撃に移る。

 ……が、既にアリスも次の行動へと移っている。


「こいつなら――どうだ!?

 cl《赤・巨神壊星群(メテオクラスター)》!!」


 《赤色巨星》が受け止められたのを見て、すぐさまその場から飛びキング・アーサーから距離を取っていたのだ。

 キング・アーサーの頭上へと飛び上がり広範囲爆撃魔法を放つ。


『キング……アーサー!!』


 これはいくら何でも受け止められまい。硬い相手にはいまいち通じずらい爆発系の魔法だが、逆に今度は受け止めるという無茶なことは出来ない。触れた瞬間にドカンだ。

 となれば、受ける手は限られる。


《王剣無双・一刀斬破(エクスカリバー)》!』


 迫りくる爆撃を避けることも受けることもできないのであれば、まとめて薙ぎ払うのみ。私たちの思惑通りだ。

 《赤・巨神懐星群》の広範囲爆撃を聖剣の光で一掃する。

 ……これを相殺すること自体が無茶苦茶なのは言うまでもない。今まで見てきた威力からして出来るだろうとは思っていたが……いざ目にするとなかなか信じがたい光景だ。

 とはいえこれはアリスの狙い通り。

 放たれた聖剣の光は魔法を相殺し、更に勢い止まらずアリスの方へと向かう――が、既にそこにアリスはいない。


「《極光聖剣・一刀両断(エクスカリバー)》!!」


 相殺されることは織り込み済みで《赤・巨神懐星群》を放つと同時に、今度はアリスは地上へとすぐさま降り立っていた。

 キング・アーサーが相殺するのであればおそらく《エクスカリバー》を振るわなければならないほどの魔法であったし、相殺しないのであればそれはそれである程度のダメージに加えて目くらましも期待できる。

 どちらにしてもその隙をついて、撃ち合いではなく一方的に《エクスカリバー》の力を使い、キング・アーサーへと食らわせる。それがアリスの考えだ。

 アリスの振るった《エクスカリバー》から放たれる極光がキング・アーサーを飲み込む。


小野山です。

エクスカリバーはビーム兵器。これはもはや聖〇士の常識!

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