3-10. キング・アーサー討伐戦 3. 異変
2018/12/30 旧第2章分割に合わせ通番を修正
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クエストの相手はまたまたの風竜の群れだ。ほんとなんか急にいっぱい出てくるようになったなぁ……。流石に風竜はキング・アーサーとは無関係だろうけど――むしろ、あの謎の少女の方に関係しているんじゃないかと思う。まぁこっちはキング・アーサーの片が付くまで保留にするしかない。
さて、クエストに挑む前にしっかりと準備は整えておかなければならない。
キャンディ、グミの補充は良し。変身も完了。
”じゃあ、最終確認ね”
今回確かめたいことは、相手の動きによって変わってくる。
すべてのパターンを想定することは出来ないけど、ある程度は事前に考えておいた方がいい。
”まず、クエストに入ってすぐにモンスターが見つからない場合は?”
「……わたくしが《エクスカリバー》の召喚を行います」
はい、オッケー。
”じゃあいきなりモンスターと遭遇する場合”
「えーっと、キング・アーサーが出てくる前に《エクスカリバー》を召喚する……だったか」
”うん。で、じゃあすぐにキング・アーサーが出てきた場合は?”
「その時も同じく、わたくしが《エクスカリバー》を呼び出します。そして、キング・アーサーがモンスターと戦うのは無視して、キング・アーサーへと攻撃を仕掛けます」
「おう、攻撃するのはオレが担当だ。ヴィヴィアンは《エクスカリバー》を呼んだら、使い魔殿を守っててくれ」
まとめると、とにかくヴィヴィアンは《エクスカリバー》の召喚を優先する。後は基本的には後方に下がってアリスの援護……最悪、退避だ。
アリスの方はキング・アーサーとの戦闘がメインとなる。なかなかキング・アーサーが現れない場合だけちょっと悩ましいところではあるが、とりあえず今回のクエストは失敗してしまってもいい。目的はあくまで確認である。
”よし、それじゃあ行こう!”
事前確認も終わった。私たちはクエストへと挑む。
クエスト開始と同時にレーダーに風竜の反応あり。すぐにモンスターとの戦闘が始まるパターンだ。
場所は最初にキング・アーサーと激突した草原。ほどほどに見通しがよい場所だ。風竜はいつもの鮫型が五匹――割と近いところの空中にいる。
『キング・アーサー!!』
こちらもいきなり出現してきた!
展開早いわ。いや、いいけどさ……。
”ヴィヴィアン!”
「かしこまりました。
サモン――《エクスカリバー》!」
事前の取り決め通りまずは《エクスカリバー》の召喚が出来るかどうかの実験だ。
特に、『キング・アーサーが出現している状態で《エクスカリバー》が召喚できるか?』ということが確かめられるのはありがたい。
……これで《エクスカリバー》が召喚できなければ、一つの推測が成り立つのだが……。
「あ、呼べました……」
あっさりと《エクスカリバー》は召喚されてしまった。
前に見た時と同じ、ちょっと大きめの虹色の輝きを放つ聖剣が現れている。
……これはこれでいい。仮説その1――キング・アーサー=《エクスカリバー》という説は否定された。どういうことかというと、私は実は少しだけあのキング・アーサーがヴィヴィアンの召喚獣なのではないかと疑っていたのだ。理由は不明だが、最初に召喚した《エクスカリバー》が暴走してキング・アーサーとなり、その後これまた理由は不明だがクエストを跨って登場している……そんな仮説だった。
しかし、《エクスカリバー》が呼べたということは、この説は否定できる。なぜなら、前に実験した時にわかった通り、同じ召喚獣は重複して呼べないからだ。これでわかるのは、キング・アーサーは召喚獣ではない可能性が非常に高いということ――ありうるとしてもごくわずかな可能性でしかない――だ。
”よし、それじゃ、アリス!”
「おう! モンスターは無視して、あいつを攻撃だな!」
よくわからない存在だけど、召喚獣ではないのであれば倒したところで影響はないだろう。《エクスカリバー》とも連動していないのは確定したし、キング・アーサーを倒したら《エクスカリバー》が使えなくなる、ということもなさそうだ。最悪、《エクスカリバー》が使えなくなったとしてもそれはそれで仕方ないと割り切ろう。
……まぁ、ますますキング・アーサーが何者なのかわからなくなってきた、というのはあるんだけど……。
こちらからキング・アーサーへと攻撃を仕掛ける理由は簡単だ。一応、今キング・アーサーは積極的にモンスターへと攻撃を仕掛けてくれている――結果としてクエストは失敗になってしまっているが、あれは実は私たちの味方のつもりなのではないかという疑いを確認するためだ。要するに、はた迷惑な『NPC』なんじゃないかという考えである。もし『NPC』ならフレンドリーファイアをしても許してくれるかもしれない。ありす曰く、ゲームによっては攻撃されたら敵対するものもあるらしいけど……。
「うむ、折角だ。《エクスカリバー》使ってみるか!」
”……そうだね、使ってみようか”
ちょっと危険じゃないかなとも思ったが、呼び出したものを放置と言うのももったいない。
アリスが《エクスカリバー》を手に取り、私はヴィヴィアンにキャンディを与える。
……アリスが《エクスカリバー》を手に取った瞬間だった。
『……キング?』
あ、それセリフなの?
それはともかく、キング・アーサーがモンスターではなくこちらの方を向く。今まではこちらには目もくれずモンスターへと向かっていたのだが、明らかに反応している。
……まさか、《エクスカリバー》に反応しているのか?
「姫様、後ろに!」
『《王剣無双――』
ヴィヴィアンがアリスを庇うように前に出るのと同時に、キング・アーサーが聖剣を構える。
拙い――山一つ削り取る、あの極大攻撃がこっちに来る!?
「サモン《イージスの楯》!!」
『――一刀斬破》!!』
ヴィヴィアンが《イージスの楯》を召喚し、私たちの前に立つ。
それとほぼ同時に、全てを破壊する光の奔流が私たちへと向かってきた……!
小野山です。
通算100話目となります。
今後ともよろしくお願いいたします。