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鏡の中の異世界  作者: HGCom
鏡の中の異世界
8/103

サンダーボール

2017/10/01 13:00(8/16)

本日8部分目。

 自警団の練習していた広場を離れて、マリーと一緒に家の方に戻っていく。

 家のウラと言うだけあって、裏手の方には山が広がっていた。20m四方くらいの広さの開けた場所があり、背後は山肌がむき出しになっていて、木が生えていない。


「ここで、あっちに向かって魔法の練習するの。人が通る事もないし、木はベルナルドが燃やし尽くしたらしいから、生えてこないわ」


「そうか、ベルナルドが作った広場なんだね。なんか不自然に木がないなぁ~と思ったよ」


 そう返すと、クスクスと笑い出す。


「別に魔法の練習場を作るためとか、そういうんじゃないらしいけどね。ケンカして怒ったベルナルドが、ゲンゴロウに向かって火の特大魔法を撃ったんだって。これでも、手加減したらしいしゲンゴロウも無傷だったらしいけど」


 マジか?ベルナルドと源五郎(ひぃひぃじぃちゃん)の非常識さがすごいのか、この世界ではこれくらいは当たり前なのか。


「ちなみに、マリーもその火の特大魔法って、できちゃったりするの?」


「私は、火の魔法は無理かな。それにここまでの大きさとなると、まだまだ無理だと思うの。せいぜい、人一人分くらいの大きさの水魔法か風魔法かな?」


 ということは、マリーは光(回復)魔法も使えるって言ってたから、それに水と風と少なくとも3つは魔法が使えるのか。なんだ、やっぱ俺全然チートじゃないじゃん。


「そっかー。それって見せてもらっても良い?どんな感じで魔法を使うのかわかんなくて」


「いいわよ!

 それと、使える魔法はステータスの【技名】で確認できるはずだよ」


 マジで?

 そーいえば、【技名】という欄に【魔法】と同じ名前があるの気になってたんだよな。試し打ちのお誘いを受けたから、すっかり忘れてたけど。


------------------------------------------------------------

【技名】

 ○[火魔法][▼]

 ○[水魔法][▼]

 ○[雷魔法][▼]

------------------------------------------------------------


 ちょっと確認してみると、どうやらこれが俺の使える魔法名って事か。▼を意識すると▲になって、リストアップされてきた。


------------------------------------------------------------

【技名】

 ○[火魔法][▲]

 ・ファイヤ

 ・ファイヤーボール

 ○[水魔法][▲]

 ・ウォータ

 ・ウォーターボール

 ○[雷魔法][▲]

 ・サンダー

 ・サンダーボール

------------------------------------------------------------


 うん、『ファイヤ』みたいな属性名の魔法と『ファイヤーボール』みたいな、そのボール形状ってことか。全属性2つずつ技名があるな。


「魔法は発動のイメージを思い浮かべながら技名を口にすると、発動するわよ。それじゃ、やってみるわね。

『ウォータージャベリン』」


 マリーが右手を前に出すと、右手の平あたりから、水で出来た槍が発動してまっすぐ腕の方向に飛んで行く。それが奥のむき出しの山肌にぶつかった瞬間に、水のぶつかる音が響いていた。ぶつかった(あと)は、衝撃で槍が刺さったかのような細長い穴が開いている。現実に目にした初魔法に、俺は思わずポカーンとして、開いた口が(ふさ)がらない状態で固まってしまった。


「今のが、私のレベルだったら一番使いやすい魔法で、水で作った槍を飛ばす『ウォータージャベリン』っていうの」


「おぉー!スゲー!」


「ふふっ。たぶん、魔法を身につけた直後のセツナだと、基本魔法とボール系の魔法しかできないと思うけど、やってみようか!!」


「うん。やってみるよ!」


「イメージが大切だからね。球体の属性の固まりが目標に向かって飛んでいくイメージで発動できるはずだから」


「わかった。んじゃ、せっかくだから雷でやってみるよ」


 イメージなら大丈夫だろ!日本育ちでマンガやテレビで十分見てるだろうし、プラズマボールなんて想像しやすいものまであったしな!!


「いくよ、……『サンダーボール』!!」


 イメージして技名を叫ぶと、思い描いたような球体のボールが右手の平の前にできた。先駆放電というか、細い稲妻がピリピリ飛んでて、自分にも当たっている気がするのに、痛くもなんともなかった。徐々に球体が膨らみ、バレーボール大くらいの大きさになったところで腕を伸ばしている先に飛んで行った。

 だいたい時速30~40キロくらいだろうか?原付が走る速度くらいで飛んでいってから、山肌にぶつかった。ぶつかった衝撃で土や砂をまき散らしているので、かなりの衝撃なんだと思う。


「初めて『サンダーボール』見たけど、ボール系の魔法なのにかなりの威力なのね。『ファイヤーボール』でも、当たった時の衝撃は、ここまで強くなかったと思うし……」


 マリーが横で何か言っているが、頭には全く入ってこなかった。生まれて20年。初めて自分で発動した魔法に対する興奮がすごかった。


「うぉー、俺スゲー!!雷でたーー」


 後で思い返すと、小学生かと言いたくなるような、貧相なボキャブラリーだ。思わず体をかがめて、思いっきりガッツポーズしてしまった。

 横を見ると、マリーがこっち見て微笑んでいる。


「よかったね。初魔法」


「うん。初魔法。ありがとう」


 我ながら、微妙な返しだが、興奮でそのまんま思ったことしか言葉にできていなかった。

 マリーも、プッという吹き出しと共にクスクスと笑っていた。


「もう、いくらなんでも、衝撃受け過ぎでしょ!村の子供でも、そこまで喜んでいるの見た事ないわ!」


「だって、他人が魔法を使っているのも、自分が魔法を使ったことも無かったんだ。正真正銘生まれて初めてなんだから、そ、そ、そりゃ興奮もするサ!!」


 どもった上に声裏返ったけど、興奮しているから恥ずかしさより、スラスラしゃべれないもどかしさの方が勝ってた。

 その後も、1分くらいスゲーとか興奮しまくっていたが、ちょっとずつ興奮が冷めてきて、20歳にもなって小学生みたいな喜び方してたことに、少し恥ずかしくなった。

 あまりの事に、マリーも途中から生温かい視線でこちらを見ていた。


「おちついたかな?」


「はい、ご迷惑おかけしました」


「別に迷惑だとは思ってないけど、そこまで喜ばれるとホントに良かったねって思えるよ」


「うん。今日一番喜びを実感してたと思う。これが夢で、目がさめたら自宅のベッドの上でした。なんて事になってたら、悲しくなりそうなくらい嬉しかったよ」


「間違いなく現実だから。

 それで、魔法についての事だけど、……」


 それで、マリーからもう少し詳しく魔法について聞いたのだが、魔法の発動時間は、難しい魔法になるほど時間がかかるらしい。難しい魔法は、形状変化・複数発動・大規模など、その形態によるのだという。珍しいものでは、追尾なんて事もできるみたい。これらは、魔法のレベルが上がると、色々とできるようになるらしい。

 魔法の威力は、費やすMPを多くするイメージで発動すると、効果範囲が変わるらしい。また、ステータスだと【精神】が一番大きく影響するみたいだけど、スキルや他の影響もあるかもしれないとのこと。それによって、飛んでいく速さとか衝撃の強さというものが変わるそうだ。

 あと、『魔力制御』が高レベルになってくると、発動時間も短くなって、消費MPも少なく済むそうだ。


「へぇ~。ステータスみたら、MPが3減ってたから、あと一発しか打てないのか。MPの回復ってどうやるの?」


「MPの回復は、時間経過で元に戻っていくよ!座ったり寝たり、体を安静に休ませていると、より早く回復するから。回復は、時間あたりに割合で回復するから、どんなに最大MPが大きい人でも、一晩グッスリ寝たら翌朝には最大まで回復するわよ。

 あとは、マジックポーションのようなアイテムだと一瞬である程度回復できるんだけど、そういうアイテムはかなり高価だから、よほどのお金持ちじゃないと買う事もできないと思うわ!」


「そうか、んじゃ今日はあと一回やったら、俺はボール系の魔法打てなくなるな」


「まぁ、最初はそんなものだと思うよ。レベルが上がって最大MPが上がると、回数も増やせるからね。いっぱい回数練習したり、何かコツ(・・)みたいなものを掴むと、魔法やスキルのレベルも上がるから、反復練習あるのみだね!」


「うん、わかった。これからも練習見てもらったりして良いかな?」


「えぇ、こっちも練習するから、その付き合いで良いなら良いわよ!」


「ありがとー。よし、どんどんやって、今度はレベルアップが目標だ!」


 そう言いつつ、その日は時間回復したMPを使って、このあと二回発動して合計3回発動した。『ファイヤーボール』も試してみたが、衝撃は『サンダーボール』の方が強いから、特に属性を気にしないならメインは雷が良いかな?


 マリーも魔法の練習がだいたい終わったようで、俺がその日最後の魔法を使って家に帰る事にした。

 最後の『サンダーボール』打った直後に、軽いめまいを覚えたかと思ったら、すぐにめまいは(おさ)まった。これは何だろうかと思いつつステータスを確認すると、なんとレベルが2に上がっていた。


------------------------------------------------------------

【名前】田所(たどころ) 刹那(せつな)

【年齢】20歳 【性別】男 【種族】人族

【階級】平民  【レベル】2

【称号】異世界人


【HP】  17/  17

【MP】   4/  11

【筋力】  14

【耐久】  11(+1)

【精神】   9

【敏捷】  10

【器用】  12

【知力】  12

【幸運】  11


【スキル】

 異世界言語認識、魔力制御(Lv.1)


【魔法】

 火魔法(Lv.1)、水魔法(Lv.1)、雷魔法(Lv.1)


【技名】

 ○[火魔法][▼]

 ○[水魔法][▼]

 ○[雷魔法][▼]


------------------------------------------------------------


 さっきまで見てたレベル1のステータスと比較した感じ上昇値はこんな感じになってた。


------------------------------------------------------------

【HP】+4

【MP】+4

【筋力】+2

【耐久】+2

【精神】+3

【敏捷】+1

【器用】+2

【知力】+1

【幸運】+1

------------------------------------------------------------



「やったー!レベルも上がったぜー!!」


 突然叫んだから、直後にマリーは驚いていたけど、すぐに一緒に喜んでくれた。


「やったね。思った以上に早かったね」


「うん、これならレベル10になるのも、何年もかからないかもだ!早く、レベル10にならないかなぁ~」


「それはどうなるかわからないけど、早くなるといいわね!」


 やったね。初日にしてレベルアップするなんて。それに今日は、異世界で散歩して、魔法使った程度だったのに、全ての能力値が上がってるのが嬉しい。まぁ、マリーも一人で歩き出した子のレベルが2~3だって言ってたし、最初は全体的に上がってもおかしくないのかな?


 それからマリーに聞いたが、軽いめまいを感じたのは、おそらくMPを消費しすぎたからだろうとのこと。レベルが上がって、上昇値分回復したから、めまいもすぐ(おさ)まったのだろうって。どうやらMPが少なくなると軽い倦怠(けんたい)(かん)とか感じるらしい。まぁ、徹夜明けくらいの軽い感じだったから、走ったり戦闘したりできないわけじゃないだろうけど、マリーも判断力が落ちる事があるから、あまり0になるまで使うのはオススメしないって説教してきた。

 こっちでは、緊急時以外は0になるまでMP使わないのが常識なんだと。気を付けて置こう。心配してくれたマリーにもお礼を言って二人で家に帰って行った。

プラズマボールって、わかるかな?

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