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鏡の中の異世界  作者: HGCom
鏡の中の異世界
4/103

鏡の秘密

2017/10/01 09:00(4/16)

本日4部分目。


ステータスがチートすぎるのは、ダメっす。

これはそんなお話じゃないっす。

 異世界にいるというのが、現実だったらどうしよう。そんな事を思いながら言った『ステータスウィンドウオープン』の後で、俺が見たものは……。


------------------------------------------------------------

【名前】田所(たどころ) 刹那(せつな)

【年齢】20歳 【性別】男 【種族】人族

【階級】平民  【レベル】1

【称号】異世界人


【HP】  13/  13

【MP】   7/   7

【筋力】  11

【耐久】   9(+1)

【精神】   6

【敏捷】   9

【器用】  10

【知力】  11

【幸運】  10


【スキル】

 異世界言語認識


【魔法】

 なし


------------------------------------------------------------


 ゲームで見るようなステータスが目の前に見えていた。

 レベルは1だし、能力値はMAX3桁だとしても、かなり低いし【スキル】も最低限のものしかない印象だけど、問題はそこじゃない!!

 夢じゃないのにステータス!!これってやっぱ、レベルが上がると、各種能力値も上がっちゃう感じなのだろうか?ポイントとか出てきて自由に割り振りとかもできたりしちゃうんだろうか。


 俺がワクワクドキドキしながら、ここは地球とはどこか違う世界(異世界)に違いないと確信していた。


「ゲンゴロウが異世界だと信じた時も、こんな感じだったのかなぁ~」


 ボソッとマリアンヌの(つぶや)き声が聞こえてきた。それで意識が戻って振り向くと、3人が、微笑ましく見守っていた。俺は、注目を集めていた事の気恥ずかしさから、転移方法について質問する。


「そ、それで、源五郎は、その後どうなったかご存知なのですか?それに、鏡ってどうやって転移するんでしょうか?」


 曽々(ひいひい)祖父(じぃちゃん)は、間違いなく日本で生まれて日本で死んだはずだ。異世界に来たとしたら、当然日本に戻ったはずだ。それが、アノ(・・)鏡なのだろう。何か特別な動作とか呪文とか、必要なものがあるんだろうか?


「まぁ、順を追って説明しよう。まず、ベルナルドとは……」


 それから、曽々(ひいひい)祖父(じぃちゃん)と『付与魔術師ベルナルド』が鏡の魔道具を作って、使うところまでの話を聞いた。


 ベルナルドは、稀代(きだい)の付与魔法の腕があったらしく、あらゆる武具や防具などに付与能力で、特殊効果を付けて行ったらしい。また、その方法などは、今でも子孫に受け継がれていて、ロッテさん一家は、付与魔術を使った仕事で生活しているという。


 一方で、源五郎は誰かから召喚されてこの世界にやってきていた。いまだに誰が何のために召喚したのかわかっていないが、こちらに召喚された事で、生活するためにやむを得ず『冒険者』をやっていたということだ。一人でも活動できるくらいの名うての冒険者だったらしく、上級中位くらいのランクまでたどり着いた。そんな中で、武具に付与を頼むためにベルナルドのところに来たらしいが、その際にちょっとした事件があって、ベルナルドの妻となる女性を源五郎が助けたという。それから家族ぐるみの生活をすることになったらしい。


 しばらくして、源五郎がこことは違う世界から召喚され、いつか元の世界に戻りたいのだということをベルナルドが知ったのだ。

 恩人でもある源五郎のため、ベルナルドは研究を重ねて一つの魔法を作り出した。それは、人の意識や記憶から転移先の場所を割り出し、その座標に向かって転移するというものだ。それは、召喚魔法のように高度な技術が必要な上に、人の意識や記憶という不安定なものを使う。人の意識や記憶は、たった数秒後でも細部があやふやになったりするもので、魔法としては不完全な転移魔法だった。

 しかし、そこで稀代の付与魔術師は、その転移魔法の力を道具に付与して固定化させることで、いつでも安全に安定した転移ができるようにしたのだった。そうして出来上がったものが『転移の鏡』という魔道具なのだ。


 付与には触媒(しょくばい)となるアイテムが必要となるが、『転移の鏡』は、ベルナルドがそれまでの人生で集めた貴重な触媒の多くを使って作成されていた。さらにベルナルドは、転移魔法の理論について、子孫を含めて最後まで誰にも教えなかった。そのため、今後同じものは二度と作れないとさえ言われており、『転移の鏡』は極上の魔道具で、値段もつけられない代物となった。


 ところが、そこまでして作成された『転移の鏡』だったが、大きな問題が2つ残った。


 まず、一つは、転移先の座標である。

 転移元である『エアリアル』の座標は、正確な物が取れるのだが、転移先については源五郎の意識を元にしているため、転移先に行ったことのない(思い浮かべれない)者には使えなかった。つまり、ベルナルドのように、エアリアルの人達には、使えなかったのだ。

 一度、源五郎の妻という人物が『エアリアル』の世界に来たことがあったので、源五郎以外の人でも使えることはわかっているみたいだ。


 そして、もう一つの問題点が、装飾品も含めて衣類を身に着けては転移できないということだ。

 つまり、転移するには全裸でないといけない。


 ----------


 この事が子孫まで伝わっていたから、刹那が全裸で来た時もしょうがない事(・・・・・・・)として、さっきは話が進んだのだった。


「な、なるほどねー。それで、昨日の事を謝っていただいたんですね。それに、私がこちらに来れた理由をご存知なのも、先祖代々聞き継がれてきてたからなんですね」


「そうなるね」


「とはいっても、いきなり面白くもないものを見せられて不快だっただろうし、殴られたことは気にしてませんよ。むしろ、何の事かわかってないとはいえ、こちらこそ申し訳ない気持ちです」


「うん、そちらも事故みたいなものだったし、謝罪は先程の土下座で受け取っているからね」


「あ、土下座ってやっぱりわかるんですか?」


「土下座は、ゲンゴロウからこっちの世界に伝わったらしいよ。でも、ベルナルドの子孫にしか伝わってないから、我々以外には通じないだろうけどね」


 源五郎さんは一体こっち来て何をやらかして、土下座したんだろうか。普通、土下座するような事態にならないと、その方法を使ったり教えたりしないだろうに……。って俺もやってたか。案外同じ理由だったりするかもしれないな。


「セツナは、水車って知ってる?」


 一人考えていたら、マリアンヌが質問してくる。


「水車?水の力で回る車でしょ?知ってるよ」


「あぁ、やっぱり知ってるのね。実は、こっちの世界でも利用されているけど、あれもゲンゴロウから伝わったらしいんだよ」


「へー、源五郎がねー」


「当時、2つの世界を行き来できるようになったゲンゴロウが、元の世界の技術を色々と教えてくれて、魔法なしでも色々と使えるものを教えてくれたのよ」


 なるほど、それで源五郎(ひいひいじぃちゃん)の事を話すときに(あこが)れというか、皆良い表情で話するんだな。


 そうか、荷物を持って運べないけど、知識は運べるわけだな。ってことは、異世界生活と現代知識チートはなんとかなるのかもしれないな……。


「あの、とりあえず定期的にこちらの世界にお邪魔しても良いでしょうか?源五郎が教えた水車のようにとは、まだ言えませんが、私でも伝える事ができる知識とかあると思うんです」


「ほんとうかね?」


「いいんですか?」


 ロッテさんとスザーナさんは、期待と言うか地球の知識も聞けるんじゃないかと思っていたふしがあるようだ。


「知識を教えてもらうなら、こっちは嬉しいけど、代わりにあげる事のできるものって、あんまりないわよ?」


 マリアンヌは、タダで教えてもらえるなら嬉しいけど、対価が用意できないから申し訳ないって感じかな?


「いや、むしろこちらの世界に来た時に、ロッテさん達のこの家に来れれば助かります。知らないところや知らない人の前に出ないですむだけでも、……その、出たらいきなり全裸なので、拠点があるだけでも助かるというか……」


「それなら、さっきまで君が寝ていた部屋を君の部屋にして使ってくれて良いよ。鏡もそちらに置いたら良いし」


「ほんとうですか!?」


「だけど、どうしてこちらに来たいと思うんだ?

 聞いたら悪いのかもしれないが、こっちに来たくなるほど、そちらは生活が厳しかったりするのかい?」


「あ、いや、純粋な興味というか、こちらの世界には魔法もあるし、レベルアップもあるんですよね?

 冒険者とかになって色んな街を見て回ったりしてみたいなぁ~と。地球で見た事ないようなものも、こちらの世界ではあると思いますし」


「ふーむ。観光とかそういう感じなのかな?」


「そうですね。できるなら色々見て回りたいなぁ~と」


 異世界来たら、冒険者になってファンタジーな街々を見て回るっていうのは、楽しいに違いない!!

 そういう気分でいると、ロッテさんが考え込むように黙ってしまう。スザーナさんとマリアンヌも、表情は暗い。


「軽い気持ちでいるならやめておいた方が良いと思うよ。こちらには、モンスターもいる。

 ゲンゴロウは、犬猫のような動物はいても、異形のモンスターというものは、こちらの世界でしか見た事ないと言ってたらしい。おそらく、そちらの世界に命の危険なんて、あんまりないんじゃないかい?」


「命の危険は、……確かにあまり、ありませんね」


「もちろん、体の鍛え方や魔法なんかは教えてあげられると思うし、こちらで生活するのは構わない。

 むしろ、知識を教えてくれなくても別に来てくれて構わないよ。

 だけど、こちらで生活するなら、命の危険についての心構えが必要だし、逆に命を奪う覚悟も必要だ」


「命を奪う?」


「君が盗賊やモンスターと対峙した場合は、確実に相手を殺す事を考えないとね。

 中途半端に助けていると、簡単に寝首をかかれてしまうよ。それに、助けた恩を感じることなく、次は自分の大事な人が殺されるなんてことも、こっちの世界じゃザラにある。そういうところまで心構えができてないと、こちらに来るのは賛成できないよ。

 まぁ、村の中の生活だけならある程度安全だし、好きに遊びに来てもらって良いけどね!」


 思ったより、危険な事もありそうで、急に怖気(おじけ)づいてくる。が、せっかくの機会だ。何もせずに尻尾()いて帰るなんて、勿体(もったい)ない。どうやら俺の中では、恐怖心よりも好奇心が大きいようだ。


「冒険者になるかは、すぐに決断できませんが、こっちで生活しながら、ゆっくり考えていきたいと思います。それで、よろしいでしょうか?」


 三人を見回して気合を込めてしっかり言い切る。

 三人は、先程の暗い表情より幾分おだやかな表情になりつつ、これからもよろしくと言ってくれた。

ベルナルドの子孫はどうやってDO・GE・ZAを後世に伝えるのだろうか?

やっぱ、実践あるのみですかね?

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