バイト先の飲み会
2017/10/21 07:00
サークルが終わると、朱音と俺と部長と副部長の4人で、揃ってランチに行った。
行った先は、よく行くチェーン店のレストランで、混んでない時間だとサークルの打ち合わせとかで使うとこだ。ドリンクバーで、かなりの時間粘るんだよな。店側としては迷惑かもしれないが……。
今後も、サークルの飲み会の三次会とかで合流して一緒に飲んだりしような!って事を話したり、ライトノベルの事で聞きたい事あれば、大学の先輩として、普通に質問してイイから!など、仲間内の関係を変えなくてイイから!って事を話した。
皆インドア派で、プライベートで飲みに行く事なんてないし、一緒に遊びに行くなんて事も、サークルの企画以外なかったから、サークル関係な話になるのは、仕方ないけど、朱音も心づかいが嬉しいと言っていた。
ランチの後は、俺と2人でウィンドウショッピングしたり、カラオケしたり、街中でデートして、夕食も外で食べて2人で朱音のサークル卒業会をしたのだった。朱音は、付き合ってからの初めてのデートで楽しいって言ってたけど、食事の時にサークル卒業お疲れ様って言うと、涙流していた。周りを何も気にしなくてイイなら、本音じゃ、一緒にサークルしたい気持ちもあったから、それが少し悲しいのだと。
家に2人で帰って、その日は、サークルの思い出なんかを語り合いながら眠った。
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開けて翌日の日曜。今日はバイトがある日で、それが終わったらバイト先の会社の飲み会に、二次会から参加する。
何故、二次会からでも参加して欲しいのかわからないが、約束したからには参加してこようと思う。
今日も朝起きて、朱音と転移して、マリーも含めて魔法を練習する。その後、ロッテさん一家と朝食を頂き、自警団に参加する。
自警団に参加する直前で、2人きりで移動している時、朱音にバイト先の担当となる坂崎さんの事を話した。以前、サークルの飲み会の四次会で言ってた、気になる人の朱音が出会ってない最後の1人が坂崎さんだと。ビジネスライクな関係だと言ってたけど、何でだか飲み会の二次会に誘われてしまったのだと。
バイト先の会社の飲み会に参加する話は、朱音に既に伝えていたが、誘った相手が気になる人だとは言ってなかったので、怒ったり、気分を害すかとも思っていた。しかし、朱音の反応は、俺がそういう人だと認識してるし、こうやって自分から事前に打ち明けてくれる人だし、飲み会に行くのはイイけど、浮気したら泣いちゃいますからね!って、悲しそうな顔をしていた。
その心配そうな表情が、怒られるよりも、よっぽどくるものがあって、「そんなこと絶対しないから!」って言うと、「お願いしますね!」って、軽く拝まれてしまった。
それ以降、普段の朱音みたいだったのに、自警団の見回りの時に、マイクが何か気づいたんだ。
「セツナ、朱音とケンカしたのか?」
「え?そんなことないよ!なぁ?」
そう言って朱音に話をふると、微笑みを浮かべて朱音も答える。
「はい、ケンカなんてしてないですよ!」
「ほらな?」
「そうか……。ならイイんだけど、アカネさんも何かあったら、ちゃんとセツナに言うんだよ?」
「何かって、何だよ?」
「んー、そうだな。こないだも言ってたように、セツナから口説かなくても、相手に抱きつかれたりしたら、コロッと落ちそうな気がするし」
「!!」
「ん?」
何か朱音が反応した気がするけど、気のせいかな?
「まぁ、そんなことないだろうし、そもそも、そんな相手なんて朱音しかいないから大丈夫だろ!」
「ふー、そうだとイイけどな!」
なんだ?だてに彼女いない歴20年だった俺じゃないぞ、そんなモテ男なんて、俺には縁遠いし。
朱音は、さっき坂崎さんの話したから、ちょっと気にしてるかもしれないけど、ビジネスライクな関係なんだから、抱きつかれることなんて、ないだろ!
見回りも自警団の鍛錬もいつものように過ごして、今日は、俺だけ日本に転移してバイトにいく。朱音は、リバーシ教えて欲しいって、マリーに捕まっていたから昼食も食べて帰ってくるという。気のせいか、なんか、ほんとにちょっとだけ朱音が無理しているような気がしたんだけど、バイトから帰って来てから話したら良いかな?
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昼から合流したバイト先では、坂崎さんが俺を回収するためだけに事務所に戻ってきていて、今日の作業場であるイベント会場に二人で移動した。
イベント会場は野外で、前日から作業をしていただけあって、会場設営など結構できていたが、荷物自体は待機所でもある隣接する体育館の屋内に運び込むのだという。今日の俺の主な仕事は、引っ越し会社の社員と現地のイベント委員の指示に従って、荷物を体育館に運んで行く事だった。他にも、会場のあちこちで物を運んだりと、手伝いを頼まれることがあったら、指示に従って動くということになっていた。
今日、主に一緒に作業するのは、引っ越し会社の社員で、石丸と名乗る20代後半くらいのガッシリとした体格の人だった。大きな荷物などを2人がかりで運びこむ時の相棒ともなる人で、他に細かな荷物運びの指示も、今日は彼がメインになり、坂崎さんは別のところで作業があるそうだ。明るく人付き合いが良さそうな印象で、運動部の部活の先輩といった感じで、指示なども的確に出してくれるので、作業は遣りやすかった。
その日は、荷物運搬の大型トラックが着くたび、主に2人で荷物を運んでいった。他の場所では、他の人達が荷物を運んでいたのだろうけど、トラックの荷物がなくなると、またトラックが荷物を運びこむまで休憩という感じで、計3台分の大型トラックの荷物を夕方まで運び込んでいた。
会場の都合で、夕方までしか荷物を運び込む時間が取れず、全ての荷物の運び込みが終わったわけでなく、まだ少しだけ荷物が残っているという。だけど、イベントは明日の午後からなので、残りは明日の午前中にやれば間に合うだろうという事みたいで、17時半すぎには現場での仕事が終わり、事務所に引き上げとなった。
事務所では、結局今日一日指示をしてくれた、石丸という社員から給与をいただいて、来週水曜にまたよろしく!っと声をかけられて、バイト先を後にした。
バイト先を出て携帯を確認すると、「今日の夕食は自分の部屋の方で取りますね」って朱音からラインが来ていたから、「了解!」って返事して自宅の帰り道に、コンビニで弁当買って帰る事にした。とりあえず、バイト先の会社の飲み会も二次会から参加ということだったし、社員の石丸さんからは何も言われてなかったから、そのまま自宅のアパートに帰って行った。
家について弁当食ってると、坂崎さんからSMSが届いて、今日の飲み会の事も書かれていた。まずは今日一日、作業の事について、詳しく伝えてなくてゴメンねって事と、7割くらい石丸さんが荷運びの作業していたらしいから、今日は楽だったかな?という事と、二次会は9時半くらいから、俺も知ってるチェーン店の居酒屋に予約とってるから、そこで待っててということみたいだ。
7割くらい石丸さんが運んだ?
確かに彼の作業の指示は的確で、一人で運ぶ荷物もお互い運んだけど、総じて俺が6割以上、石丸さんは4割り弱だったはずだ。バイト相手だから、手柄はもらうぜ的な感じなのかな?まぁ、こっちはバイトなので、目くじら立てるほどではないけど、作業態度が不真面目とか理由つけられて、それで時給が落とされたら困るので、正しいところをSMSで坂崎さんに返事した。なんか、チクるみたいで嫌な感じもするけど、先に嘘言っているのは、石丸さんだから、問題ないかと思う事にした。
すると、坂崎さんから、また返事が来てた。俺の性格から、7割も石丸さんに任せるのは、ちょっとおかしいと思ってはいたんだ!って、あと飲み会はよろしくね!ということだった。ふー、とため息ついて、ここのバイト先、そろそろ辞めようかな~なんて思ったりする。ほんと、臨時のつもりだったし収入も良かったけど、あんまり人間関係こじらせてまで居たいと思わないしな。こういう時、バイトの身分って良いものだよな。正社員だったりすると、簡単に辞めれないんだろうしな。
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それから時間がたって、9時20分くらいに坂崎さんから指示されていた居酒屋に入って行った。「坂崎で予約してあると思うんですけど?」っていうと、「前の団体の片付けが終わってないから、あと5分くらいお待ちいただけますか?」と、同い年くらいのバイトっぽい男に言われたので、少し待ってから入って行った。接客の、しかも酔っ払い相手のバイトはつらいよな~なんて思いながら、6人がけの掘りごたつ式のテーブル席に通された。
こういう時、先に注文するわけにもいかないし、手持ち無沙汰だよなーなんて思いながら、スマホで、「これから飲み会です」って朱音にメッセージ送った。その後、9時40分くらいに坂崎さん達が来た。
二次会は、3~4人くらい来ると聞いていたけど、坂崎さんと、石丸さんと、もう一人は今日のイベント会場で面識だけある30歳くらいの細身の体型の男性の計3人だった。
「おまたせー」
坂崎さんがそう言って入ってくると、俺の横に坂崎さんが座って、俺の対面に石丸さんで、その横に名前がわからない男性が座って、飲み物を頼んだ。
俺だけビールだったが、二次会である他の面々は、男性二人が焼酎で坂崎さんがカクテルを頼んでいた。飲み物が届いたのでとりあえず開始の声をかけて始まる。
「「「「かんぱーい」」」」「お疲れ様です」
俺だけ、途中参加なので今日の仕事お疲れ様も言っておく。そこで、名前を知らない男性が畑山という名前だと自己紹介してくれた。すると、その畑山さんが石丸さんをねぎらっていた。
「それにしても、今日は大活躍だったようだけど、疲れてないか?」
「え、えぇ。田所君も手伝ってくれたからですね」
「やっぱ若いヤツはよく働くなぁ~」
はははって、畑山さんが言っているけど残った3人は苦笑いだ。それに気づいた畑山さんが「どうかしたのか?」って聞いてくる。すると、坂崎さんが本当のところを説明する。
「実は、今日って3~4人でやるような仕事を2人でやってくれましたよね?それで、田所君も1人分としては十分やってくれたけど、他は俺が~って石丸さんが言ってたんですけど、実際はほぼ逆なんですって。そうなんですよね?」
と、坂崎さんが石丸に話を振っると、まさに嘘がばれたみたいな感じで、しどろもどろになりながら石丸さんが答える。
「そ、そうですね。自分も1人分以上はやったつもりですけど、半分以上は田所君がやってくれたかな?な?」
すると、石丸さんが話をそらすかのように俺に同意を求めてくる。
「えぇ、まぁ石丸さんが的確に指示してくれたので、自分としは指示された場所に運ぶだけだったし、作業はサクサク進みました。ってでも、あれって多いなとは思ったけど、3~4人でやる仕事だったんですね?」
ちょっと苦笑いしながら、仕事量の多さに話をシフトして、話題を転換するようにした。あんまり非難するのも気持ちが良いものじゃないからね。すると、畑山さんが仕事量について説明してくれた。
「まぁ、ほんとはバイトをあと2~3人入れたかったんだけど、日曜の午後ということもあって誰も入りたがらなかったんだよね。それで、一応明日の午前中まで作業可能だったから、今日はできるところまでやってもらおうって思ってたんだ」
「なるほど、そうだったんですね」
確かに、いつもの単身者の引っ越しとはトラックの大きさが違って、当然荷物の量も倍以上は余裕であったんだ。ただ、以前よりレベルが上がったからか、一人で持つ物に重いと思うほどの物は無かったんだ。中には3人以上で持つべき重い物もあって、その時だけは別の場所から応援を呼んで運んだんだけど、それも実は自分一人でも持ち上げれたんだよな。まぁ、あんまり目立つのもなぁ~と思って一人で運ぶなんて言わなかったけど。
畑山さんが少し考えるような感じで話し出す。
「そっか、田所君が頑張ったんだな。バイトの子とはいえ、人間関係とかにも響くから、評価に関しては自分に厳しい目でやるようにな、石丸!」
「はい、気を付けます!」
「田所君も、今日はありがとうな!」
「いえいえ、自分も給料もらって働いてるんで、指示のとおり働くのは普通ですから!」
「そっか、そう言ってくれると助かるよ。とにかくありがとう」
そういって、畑山さんが頭を下げてきてくれた。俺は恐縮したけど、受け入れないと納得しない感じだったので、わかりましたって言葉にして返しておいた。
「それにしても、坂崎から聞いていたけど、田所君は力あるんだなぁ~」
すると、石丸さんも乗っかってきて俺を褒めてきた。
「そうなんですよ。最初見た時は、見た目細いし、マッチョというほどの筋肉の付き方でもないので、坂崎がひいき目で言っているのかと思ったんですけど、仕事ぶりはすごかったですね」
「ほう、石丸がそれだけ言うって事はかなりなんだろうな」
すると、坂崎さんも何かの話を振ってくる。
「もしかしたら、畑山さんより強いかもですよ」
そう言って、坂崎さんが腕を振る動作をする。
「そうなのか?それは……田所君ちょっと俺と勝負してみないか?」
「勝負ですか?」
「あぁ、腕相撲の勝負だ。俺、アームレスリングにはちょっと自信あってな。まぁ、専用の台でもないから、腕相撲って感じで」
すると、少し呆れた感じで石丸さんが補足を入れる。
「ちょっとじゃないでしょ?軽量級と言っても、関東でベスト4はかなりでしょうに」
「ははは。まぁ、ちょっとした余興だよ。そうだなー。田所君が勝ったらここは、俺のおごりって事にしようか。負けても何もしなくて良いから」
すると、楽しそうに坂崎さんが追加で言ってくる。
「おごりって私たちも良いですか?」
「お?おぅ、そうだな。その方が盛り上がるかな!いいぞ!」
「男に二言はダメですよ!」
「はは、わかったわかった」
坂崎さんも念押しまでして、そんな相手に俺が勝てると思っているのかな?いや、その方が盛り上がるってことか。
「わかりました、んじゃよろしくお願いします」
皆で、6人がけのテーブルの端に料理やグラスをよけて、俺と畑中さんが準備する。
「んじゃ、審判は石丸な!ギリギリで持ちこたえても、3秒以上持ち上げられなければ、それで勝負ありって事にしよう。まぁ、腕相撲だし、速攻で決めるようなヤボはしないから、思いっきりやろうか!」
「はい、わかりました」
すると、石丸さんが審判役をやってくれる。
「レディー……ゴー!!」
俺は、胸を借りる感じで思いっきりやってみるが、斜め45度くらいでピタリと止められる。そこからググッと元の位置まで戻されそうになるから、さらに思いっきりやってみると、若干俺が有利なくらいで組んだ腕が止まっている。
「がんばれ、田所君!!」
坂崎さんが応援してくれるが、畑山さんは表情を変えず真剣な様子で、力を入れてる。こっちも、この位置をキープするのでやっとだ。そのまま10秒ほどすると、徐々に勝負の均衡が崩れてくる。
俺がちょっとずつ畑山さんに押し勝っていくのだ。ちょっとずつだけど、もう、ギリギリってとこになって、石丸さんがカウントダウンする。
「3、2、……」
ぐっと畑山さんから力を感じるが、この体勢ならこの位置をキープするのは、なんとかなりそうだ。
「……、1、0!
ウィナー、田所君!」
「おーすごいすごい!田所君つよーい!!」
坂崎さんも褒めてくれるが、俺と畑山さんはかなり消耗してる感じで、「ありがとうございます」って言うのが精いっぱいだ。
すると、一口焼酎に口を付けた畑山さんが、完敗宣言してくる。
「いやー、負けた負けた。田所君、すごい強いな!
負け惜しみじゃないけど、速攻で決めれば勝てた気はするけど、若い者の持久力には負けるよ」
確かに、ゴーと同時に思いっきり畑山さんが来てたら負けてた気はする。それくらい、最初は余裕も感じたんだ。
「いやいや、おっしゃる通り、速攻ならたぶん負けてましたよ。こっちは、ゴーで思いっきりいったのに、止められましたものね」
「うん、でも負けは負けだ。しょうがない、ここはおごりだ!好きに皆飲み食いしろ!」
「やったー」「田所君よくやった!」
畑山さんは潔く負けを認めていた。すると、坂崎さんと石丸さんが同時に喜んでいた。
「ごちそうになります」
俺も、頭を下げてごちそうになるのだった。それから、仕事先の引っ越しでのおもしろ話とか、俺が大学生だから、皆さんの大学生の頃の話とか色々楽しい話を聞けて、思ってた以上に楽しく飲めた。
アームレスリングなら、速攻で負けてたかも!




