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mutation  作者: 帯藍葉介
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mutation.6【確認】

(……ああ、寝てたのか……。)


気付くとエレベーターは地上一階で止まっていた。俺は眼を擦りながらエレベーターの扉を開ける。


(お~い、起きてるか~……駄目だ寝てるわ。)


俺は私に語りかけつつ、建物から出る。建物から出た俺の視界に入った光景は……。


(嘘…だろ。)


―――絶望だった。

――

――――

――――――

――――――――

――――――――――。






【…で?地上に出たのはいいけど、地上はまさかの孤島だったって?……失念していたよ…孤島ねぇ~……悪巧みするにはこんなにベストな場所はないからね。】


そう私が言った。私の声には元気が無く、疲れているみたいだった。それもその筈、やっと脱出したと思った矢先、まさかまだ脱出出来てなかったとは……夢にも思わなかった。


【……にしても、これは酷いね。まるで地獄絵図だ。】

(……ああ、そうだな…。)


建物から出た俺の視界に、真っ先に入ってきたものは血の海だった。さっきの施設がかわいく思えるほどの地獄絵図。


(人の死体ばっかだな……。)

【そうだね。化け物の死体は一切無し…と、死体が残っていると言うことは、捕食が目的ではない?】


私はそう言ったきり黙りこむ。とにかく俺は、この地獄絵図を見たくなかったのでもう一度建物の中に入った。


(……あー、くそ。本っ当いやになるぜ!あの光景も…この顔も!!)


俺は、トイレの鏡に映った自分の顔を見る。そこに映っているのは化け物だ。驚いた事に、自分の眼が六つもあった。左右に三つ対称的にだ。


【いやいや、顔は良いじゃないか。……ふむ、何だか加善ナイトに似ているね。ふふっ、化け物なのに正義のヒーローに似る何て……実に愉快だねぇ~。】

(加善ナイト…ああ~あの特撮の…、随分懐かしいな。子供の時は大好きだったな。……あれ?おかしいな…、何で俺そんな事知て……?)

【ふむ、記憶は無いのに思い出があるのも変な話だ。……さて、さっそくだけど君。今後どうするか決めよう。】

(孤島からの脱出が優先だろ?)

【いや……動作確認がしたい。】

(動作確認?)

【うん、動作確認。】


俺は意味が分からず首を傾げる。……何なんだろう動作確認って……。


(動作確認って、何の動作を確認するんだ?)

【自分の体に決まってるだろう?君、体がデカくなってるんだぜ?しっかりと今の体に慣れておかないと、いざという時に大変な目になるだろ?最悪…死ぬのもありえる。】

(死……!?)

【しかも、眼が六つもついてあるんだ。……今は二つしか眼をあけてないけど、これからは六つ眼をあけられるようにしないと……。】

(あ~、二つまでならどの目玉でも動かせるけどな…。)


俺はそう言いながら、それぞれの眼をパチパチさせる。……以外と難しい。


【今後の課題はその目玉だね。最終的には六つ同時に、自由に動かせるようになりたい。それと体がどれだけ頑丈なのか…君、ちょっとそこの壁ぶん殴ってくれないかな?】

(……まあ良いけどよ…。)


俺は壁に拳を軽く当て狙いを定める。腕を大きく後ろに引いて、一気に拳を突き出す。爆発音が鳴ると同時に壁がぶっ壊れた。……向こうの壁が見えるので貫通したのだろう…。


(……。)

【……うん、頑丈頑丈。いやーよかったよかった、こんなに頑丈でよかった。じゃあ次は…そうだな…。】

(……貫通した……壁…。)


こんなやり取りをしつつ、今度は書類に眼を通す。さっきは時間が無かったので、今度ははじっくりと読んでいく。


【これはこれは…成る程、どうやら私達は大きな勘違いをしていたようだ。】

(大きな勘違い?)

【うん、大きな勘違い。】

(それってどういう事だ?)

【そうだね。……世界中に化け物は溢れているみたいだ。】

(…えっ?世界中!?溢れてんの!?化け物!?)

【うん、それとどうやら…私はこの施設が化け物の発生源かと思っていたけど…、いやはや、…どうやら逆らしい。】

(逆?)


私の言っている意味が分からず、俺は私に聞き返す。


【つまり、この施設は、化け物を造ることが目的ではなく。世界中に溢れた化け物に、対抗する為の化け物を造ろうとしていたみたいだね。……本当、決めつけるのは良くないね。私はてっきりここが……。】


私は口を動かし、溜め息を吐く。どうやら、わりとショックを受けているようだ。何にショックを受けているのかは分からんが。


【反逆何てとんでもない。この施設は、第三者による襲撃を受けたんだよ。】

(襲撃か……)


成る程、俺は納得する。それと同時に安堵する。どうやらあの子は反逆者じゃなかったらしい。


【……榎本(えのもと) 慈朗(じろう)…、ステルス所属の特殊捜査官。ネクスト内に潜入し、『原初個体』の確保に成功。しかし、任務中に何らかの事故が発生。帰還時には既に、右腕が変異していた。急遽保管し、そのまま経過を観察する。徐々に体が変化していき、1ヶ月後には全身が変異した。大変危険なので、薬が出来るまではこのままの状態でおいておくことを推奨。家族構成は、妻は既に他界。一人息子と二人暮らし……。息子の名前は…榎本…志郎(しろう)…だ、そうだ。】

(何だそれ?)

【私達のプロフィールだよ。】


私の言葉に一瞬唖然とし、次に驚愕する。


(はぁ!?俺結婚してんの!?)

【驚くとこそこかよ。……結婚どころか息子もいるよ。名前は志郎……自分に親い名前をつけるなんて、とんだ親バカだね。】

(いや…つか、えぇー…。)


あまりの事に、開いた口が塞がらない。……結婚してかつ息子がいる親バカ、それが俺達らしい。


(ていうか、何だ?ステルスとか原初個体とか。)

【さあ?ネクストが悪い組織で、それに対抗してるのがステルスとか、そんな感じじゃない?】

(そんな感じじゃないって、随分投げやりだな…。)

【仕方がないじゃないか。記憶がないんだ。新しい単語がぽんぽん出てきて、もうお手上げさ。】

(……この原初個体ってのは……。)

【うん、きっとあの子だね。私達のことをおじさんって言うぐらいなついてたし。】

(でも原初個体を確保した後、俺達はずっと保管、つまり寝てたんだろ?なつく時間何てあるのか?)

【助けられたら誰でもなつくよ。……酷い扱いを受けていたら尚更ね。】


俺達は考えるのを一先ずやめ、今後どうするかを話し合った。


【とりあえずは慣れだ。自分の体に慣れよう。それと並行して、この体の機能を調べていこう。】

(期限は何時までだ?)

【最高で1ヶ月、それまでに全てを終わらそう。なぁに大丈夫さ。私と君がいれば障害など無いに等しい。】






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