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mutation  作者: 帯藍葉介
2/7

mutation.2【把握】

【さて、話は変わるのだが、君は先程ドアを開けようとしたね?それは何故だい?】

(何故って――。)


ここから脱出する為。そう答ようとしたが、私の声がそれを遮る。


【はいアウトー。もしくはそれダメー。君はちゃんと考えて行動してるのかい?】

(なっ!いきなり何だよアウトって!)

【まずは周囲を見渡して見たまえ。】


私の声に従って、俺は周囲を見渡す。さっきも見渡したが、映画に出てきそうだ…ぐらいにしか思わない。この部屋が何だと言うのだ。


【綺麗だろ?この部屋。綺麗だと言うことは、まだ使われていたと言うことだ。ところでまたまた話は変わるのだが、君は外に脱出するとして、その外の世界はどうなっていると思う。】

(どうって……。)


俺は部屋の一部分を見る。俺が入っていたビーカーの向こう側、その奥行きにはビーカーが100、200とある。その全ては空っぽで、どうやら俺が最後にビーカーから出たらしい。


(化け物が蔓延した世界じゃないのか?あくまで俺の妄想だけど……。)

【ふむ成る程、確かにその光景を見たら、誰でもそう考えるだろう。しかしだね、化け物を造る、もしくは人を化け物にする等という施設が、そんな簡単に、容易く外に化け物を出すような管理体制であると思うかい?】

(ふむ、成る程。確かにそうかもしれない。)

【それにほら、私と君は、化け物がビーカーから出る事がこの施設の異常事態だと、あの少女の様子で予想したが果たしてそうなのかな?】

(……と、言うと?)

【部屋が綺麗過ぎる。まるで何も起こってないみたいに。】


確かに、俺はもう一度周囲を見渡す。今度はよく観察してだ。部屋は綺麗だ。暴れた形跡はどこにもない。


(本当、まるで何も起こってないみたいに……か。)

【ここから予想出来ることは2つ。】

(それは?というか2つ?)

【ひとつは、そうだな。他の化け物にも理性があり、暴れなかった。】

(成る程、可能性としては確かにあるな。)

【私達という前例があるしね。もうひとつは、何らかの実験で化け物が必要になり、麻酔等を打ってどこかに運んだ。】

(ふむ、成る程。)


私の仮説に成る程としか、相づちをうつことしか出来ない。


(こいつの方が妄想逞しいんじゃ……。)

【妄想ではなく、空想と言って欲しいな。私の考えではひとつめの考えの方が可能性が高いな。例え実験があったとして、全員を連れ出すとは考えにくい。そもそも私達がビーカーから、それこそ自力で出てる時点でおかしいからね。】

(ふぅん成る程。つまりあれか?他の化け物はそれほど危険じゃないと?なら安心だな。やれやれ、化け物だから危険だと思ってたぜ。やっぱり決めつけるのはよくないな。)

【いやいや、油断は禁物、予想は半信だよ。私達が勝手に施設を動き回るのが実験の目的かも知れないからね。だってほら、まだ蛍光灯がついてるよ?】

(うん?だから何だよ?人がいなくなっても蛍光灯はついてるもんじゃないのか?)

【まあそこのところは私も分からないんだけどね。蛍光灯がついてるということは、電気が活きてると言うこと。電気が活きてると言うことは……。】


私がそういうと顔が勝手に動き、部屋の一部分を見る。


【監視カメラも動いてるということさ。】

(……お前の言いたい事は分かった。けどよ、妄想するのも空想するのもいいけどよ。取り合えず外に出た方がいいんじゃないか?)

【それはちょっと待って欲しいな。先程言った通り、化け物を取り扱う施設の管理体制は甘くないと思う。つまり他の化け物は外に出てないと仮定する。】

(お前が言いたい事はあれか、俺が外に出たら、外にいる奴等がパニックを起こすと?だから出るなと?はっ!嫌だね!俺は外に出る!外に出てあの少女を――。)


捕まえる?いや違う。あの子の傍にいなければ、何故なのか分からないが、あの少女の事を考えると、傍にいなければと、そういう気持ちが浮かび上がる。


【おいおい、誰も外に出るな…何て言ってないぞ。まあ落ち着け。まずは調べるんだ。この施設の情報を。】

(調べる?この施設を?)

【そうだ、調べるんだこの施設。この施設が何の研究をして何の実験をしてどういう結果を成そうとしたのか……この施設の隅々…は危ないか。低く見積もっても200、それだけの化け物がこの施設にいるのだから。】

(化け物には理性があるって…!さっきお前が言ったじゃないか!)

【油断禁物、予想半信とも言ったぜ。私の空想も君の妄想も、どっちもただの予想だぜ?過信するのは良くないな。常に最悪を想定しよう。】

(……ふん!しゃあねーな!分かった、俺よりもお前の方が冷静だ。……指示に従う。)


この施設にとってどうとかじゃなく、俺にとってはこの状況、有無を言わさず異常事態だ。頼れる仲間は同じ自分だと言う私のみ……。


【御指名頂き至極光栄……何、私も君だ。君にとって不都合になるような事はしないさ。さて、確かに脱出するのは大切だ。しかし、優先すべきは情報。……脱出した後、もう一度この施設に入るなど、私も君もまっぴらごめんだろう?】

(ははっ!それは確かに、じゃあこれからの行動方針としては……。)

【出来るだけ情報を集めつつ……。】

(脱出、だな!)


俺達は今度こそドアに手をかけ部屋から出た。





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