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クラスメイトと物語の始まり

 「今日からこのクラスに転校生が来まーす」

 担任である桜木先生(女)の一言で教室がざわめく。

「男?女?」「外国人?」「宇宙人?」「超能力者?」「ただの人間には」「女なら興味あるゼ!」

 生徒たちの声を聞いてウンウンと頷き、

「という訳でどうぞ!」

「「「「「全部スルーされた!?」」」」」

 そのクラスに緊張した面持ち少年が足を踏み入れる。

「初めまして!夜月神弥です」

「「「「ちっ、男か」」」」

「それが転校生に対する態度か!?」

「ふっ、甘いなお前ら」

 突然、男子生徒がクラスに呼びかける.。

「男装女子という可能性になぜ気づかない!」

「「「「な、なんだってー!!」」」」

「ねえよ!そんな可能性!」

 担任はその様子を見て、

「守園ちゃん、後はよろしく」

 丸投げした。

「分っかりましたぁ」

 守園は夜月の隣に立ち、手をたたきクラスを鎮める。

「さて、・・・何をしようか」

「とりあえず、クラスの奴らを紹介してくれ」

「それならオレの出番だな」

 そう言いながら、さっきの失礼な男子生徒が夜月の隣に立つ。

「じゃ、よろしく。ロミオ君」

そういって守園は自分の席に戻った。委員長としての仕事はまるでしていない。

「ロミオ?」

「イエース。オレは愛川留美夫(あいかわるみお)という。下の名前が転じてロミオになった」

「へぇ、なんか『留美夫』って女みたいだな」

 愛川は大げさに肩を落として理由を語る。

「生まれるのが女だと思ってたんだと。で、『留美』にするつもりが男だったんで勢いでこうなった」

「なんかかわいそうな理由だな」

「あぁ、でも、まぁまぁ気に入ってるよ」

 そう締めくくって愛川は本来の仕事を始める。

「じゃあ早速、転校生への質問タイムといきますかー!」

「お前らの紹介をしてほしかったんだが?」

「細かい事は気にしない。これ、このクラスで生活するコツ。質問する奴は適当に自己紹介しろよ~」

 クラスへ呼びかけたが、反応はあまりなかった。

「ふむ、じゃあオレが質問してやろう」

「何で偉そうなんだよ」

「まずは無難に・・・彼女はいるか?」

「その質問の何処が無難だ!?」

 思わず叫んでしまった夜月に対し、愛川は反省なしに話をする。

「エロい経験はあるか?の方がよかったか?」

「もっと悪いわ!てかある奴なんかいねえだろ中2で!」

 若干赤面してしまった夜月だったが、愛川は全く気にしない。

 そして、空気がほぐれてきた事もあって、手を挙げる者も現れた。

「ども、副委員長の長田勇樹(ながたゆうき)です。得意な教科は何ですか?」

「そうだよ!そういうまともな質問が欲かったんだよ!」

「さっさと答えろ」

「お前は黙ってろ。得意な教科か・・・英語だな」

「あー、英語は苦手ですね俺」

「てか、敬語やめようぜ」

「ああ、これが素なんですよ」

 ちなみに、守園が長田をチラチラ見ているのを夜月は発見した。

 じゃあこれで、と長田が言って席に着くと、今度は女子生徒が立ち上がった。

「初めまして、私(わたくし)王花優美(おうかゆみ)と申します。これからよろしくお願いしますわ」

ーーああ、なんか優しそうな人だなぁ

「それで質問なのですが・・・」

「どーぞどーぞ」

「では・・・貴方、誰にも知られたくない弱点などありまして?」

「全然良い奴じゃなかった!?」

「む、使いパシリをさせるだけですわ。ことあるごとに」

「それを嫌な奴っつーんだよ!」

「で?質問にさっさと答えなさい」

「う”・・・、・・・・・だ」

「は?何と言ったんですの?」

 クラス一同が耳を澄まして夜月がもう一度話すのを待っている。

「だぁかぁらぁ!俺はじゃんけんが弱いんだっ!絶望的に!」

「ハァ?」

 その場の全員(夜月以外)の声が完全に一致する。

「んで、どんくらい?」

「中学入ってから一回も勝った事がない、といったら信じるか?」

          ~第一回じゃんけん大会開幕~

チョキVSグー、パーVSチョキ、パーVSチョキ、グーVSパー、チョキVSグー、パーVSチョキ、グーVSパー、、、、、、、、、、、、

 途中結果 0勝24敗

「なんせ、前の学校では『アレに負けたら死ぬ!』という言い伝えがあったほどだからな」

「ほら、次守園の番ですよ」

「う、うん」

 若干、夜月がかわいそうだと思っている守園。

「やってやるさ。どんだけでも負けてやるよ!もう!」

 じゃーんけーん、

 結果 1勝24敗

「え?勝った?」

 自分の勝利を信じられないほど負けまくっていたらしい。

「ふ、ふふふ、ふはははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」

 怖いぐらい勝利の快感に溺れている。

「勝った、勝ったぞおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!」

さすがに窓から叫ぶのはやりすぎだろう。

                  ~5分後~

「というより、守園、死ぬんですか?」

「え?私死ぬの?」

「ふはははは、勝ったあああああああああ!」

「ええい!いい加減黙れい!」

 愛川の檄で夜月はやっと我に帰った。

「ああ、スマン。ついうれしくて」

 手を打って場を仕切り直す。

「うし、続きやっぞー」

 といっても質問はもう無くなったのか、手は挙がらなかった。

 しかし、一人、立ち上がった男子がいた。

「おお、行くのかミスター平凡!」

「平凡ゆうな。佐藤太郎です。特技は・・・」

「テスト全教科平均点ピタリ賞」

「そうそれ!じゃないよ!」

「他にあんのか?」

「・・・無いけどさ。ええい!それより質問!平凡だからこその技を見せてやる!」

 息を整え、佐藤は質問をする。

「前の学校のあだ名はなんですかっ?」

 あだ名。

 初対面の相手に対してはかなり効果的な質問。

 なんせ、『あだ名で呼び合ってる奴らは仲がいい』という錯覚を周囲に植え付けるほどだ。

 そして、それに対する返答は、

「前の学校では『カミサマ』と呼ばれてました」

 『コイツ馬鹿か』という疑問を周囲に植え付けた。

「お前ら『コイツ馬鹿か』って思っただろ」

 全員が一斉に目をそらした。

「全員かよ!?まぁいいや」

 微妙な空気になってしまった。

「よし!次行こう次!」

 愛川ががんばって声を出す。

「ん?なんだ?」

 指をパチンと鳴らし、一言。

「Let's下校」

 チャイムが鳴った。


「カミサマは無いんじゃない?夜月君」

 からかうような声にため息まじりに答える。

「いやいやマジだって。本当にそう呼ばれてたんだって」

 二人の前を車が通る。

「そういやさぁ・・・」

 夜月がニヤッ、と笑い反撃に出る。

「何?」

「お前、長田の事好きなの?」

「ふぇっ!?なな何でそんな事!?」

 想いっきり動揺してしまう守園。

「あっはっは、照れちゃってえ」

 守園の背中をたたく夜月。

 ここで、Q&Aのお時間です。

Q、現在の状況は?

A、帰宅途中。ちなみに信号待ち

Q、動揺してる人間の背をたたくと?

A、前にふらついたりはするかもしれない

Q、結構なスピードを出しているトラックに人がぶつかると?

 守園の頭に浮かんだのは「あ、死んだ」というあっさりした感情だった。


 何も無かった。

 気づくとそこにいた。

 死後の世界だと言うのにあたりは真っ白だった。

 そして、歩いていた。目的地は分からなかった。

「私、死んだんだ」

 不思議な事に、死んだ事に対する怒り、悲しみは無かった。むしろ、眠りにつく前の穏やかささえあった。

ーーそれにしても、何処まで歩くんだろう?

 そう考えた時、目の前に扉が現れた。

 ノブが二つある、両手であける種類のものだった。

ーーこれを開ければいいのか

 ノブに手をかけ引こうとした瞬間、背後から怒声が鳴り響いた。

「ちょっと待ったあ!!」

 振り返ると、そこには少年が立っていた。

 少年は真っ白な世界には似合わない真黒な服に身を包んでいた。頭の上からフードをかぶり、地面に引きずるほど長いマントを身につけているので顔以外は確認できなかった。

「夜月君?」

 にもかかわらず、一瞬で正体を見破られた夜月は緊張した声で命令する。

「その扉から手を離せ、そいでこっちに来い」

「なんで?」

「何でってお前、お前を生き返らせるために決まってんだろ」

 冗談にしか聞こえなかったのか、守園はくすくす笑った。

「生き返らせるって、何様?」

「神様」

 即答だった。

 やはり冗談に聞こえたのか、守園は笑いながら言葉を返す。

「じゃ、生き返らせてもらおっかな」

 それを聞くと夜月はほっとため息をつく。

「それじゃ、君は今日から悪魔です」

「え!?」

 驚きの声も無視して夜月は恭しく一礼する。

「それでは、よい人生を」


 ベッドの上で目が覚めた。

「あれ?いつの間に寝ちゃったんだろ?」

ーーいや、確か

「トラックに跳ねられて・・・それで・・・」

「ああ、やっと目が覚めた」

 突然の声に振り向くと、ほっとした顔の夜月が立っていた。

「ちょっと待って!何で夜月君がここにいるの?いや、それより・・・」

 守園の声を夜月は手で遮る。

「分かってる。お前の言いたい事はよーく分かる。俺も昔はそうだったさ。結論から言うぞ」

 目をそらし、息を吸って、たった一言。

 

「俺、死神なんだよ」

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