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新学期と転校生

 チッチッチッ、ジリリリリリリリ、バン!ドン、ジリーーーーン!

「・・・朝か」

 そう言って女は目を覚まし、けだるい体を起こした。

 女が今しがた自分で壊した目覚まし時計を見れば、時刻は朝の7時30分になっていた。

「飛鳥ぁ、そろそろ起きなさい。今日から新学期でしょ?」

下の階から、彼女の母親の声が聞こえて来る。

 そう、今日は9月1日。すなわち2学期が始まる日である。

「わかってるって」

と飛鳥と呼ばれた女は返事をして、着替えを済ませ、階段を下りた。

「そうそう、きょうからアンタの学校に転校生が来るわよ」

 朝食を机に並べながら母親が話しかけてくる。

「・・・何でそんな事知ってんの?」

「この前となりに引っ越した来た家の子が中学生だったから。男の子よ」

「へえ、中2かな?」

「そういってたわよ」

「同じ学年か」

「さ、それはそうとさっさと食べちゃいなさい。委員長が遅刻なんかしちゃダメでしょ」

「はーい。・・・ん?」

ーー9月1日・・・新学期・・・委員長・・・

「ああ!」

「どうしたの?」

「今日、準備があるから早めに行かなきゃだった!」

 言うが速いか、彼女は急いで朝食を平らげ、玄関へ行った。

「曲がり角に気をつけてね。ラブコメが始まるかも」

「何バカな事言ってんのよ。いってきまーす!」

 

「んじゃ、行ってくる」

 家を出た彼女の目に映ったのは、同じく家を出たところであろう少年の姿だった。

ーーああ、これが隣に引っ越してきた子か

ーーとりあえず、挨拶するか

そう思って近づくと、少年の前に黒い犬がいるのが見えた。

 犬は主人の言葉を理解しているかのように『ワン!』と鳴いた。

「よし、行くか。・・・っておわぁ!」

 少年は急に人が現れた事に対して驚いたようだ。

「おはよう!えっと、・・・」

ーー名前何だっけ?

「ああ、お隣さんか。俺は夜月神弥(やづきしんや )。アンタは?」

「私は守園飛鳥(もりぞのあすか)。よろしくね、夜月君。」

「うん、よろしく。えっと、同じ学年?」

「中2だよ。どのクラスとか決まってるの?」

「えっと・・・3組」

「マジ!?同じクラス!一応委員長でーす」

 一通りの自己紹介が終わった後で二人は歩き出した。

「犬飼ってるんだ?いいなあ、名前は?」

「それが決まってなくてさ。会議はしたんだけど」

「どんな名前候補が?」

「まず最初に『クロ』」

「安直だね」

「次に『ブラック』」

「またそのままだね」

「更に『シリウス』ときて」

「嫌な予感がする」

「最後が『シリウス・ブラーーーー」

「はい、ストーーーーップ!」

 危うく某魔法少年の名付け親の名前が出るところだった。

「つー訳でアレの名前は絶賛募集中です」

「考えとくわ」

 そのあと十分ほど話をして、二人は学校へついた。

「やっぱ、学校近いのは良いなー」

「前は遠かったの?」

「自転車で三十分ほどかかりました」

「うっわ、キッツ」

「山奥だったからなー」

「大変だったんだね」

「そりゃ、もう。あぁ、俺職員室行かねばならんから」

「あっ、そう。じゃーねー」

 そうして二人は分かれた。

 一人は懐かしい学校生活を思い浮かべながら。

 一人は新しい日常に期待と不安を抱き。

 しかし、両者にも期待どうりの日常は訪れなかった。

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