神のせいで死亡して転生(笑)
ビルの谷間から朝日が射し込み、今日も今日とて爽やかな一日が始まろうというまさにそのとき。
唐突に俺は死んだ。
徹夜明けの鈍い頭で買い物に行ったのが悪かったのかもしれない。
もしかするといつもと違うコンビニに行こうとしたのが悪かったのかも。
いや、そもそも無理に課題を間に合わそうとしたのがいけなかったのかもしれない。
まったく、教員連中は質は低いくせに量ばかり出しやがるから困ってしまう。
「いや、そのどれでもないわい」
「ん? なんだ爺? って、うおっ! なんだこの白い空間は!?」
さっきまでは確かに俺の死体の上にいたはずなのに……。
「いやあ、すまんすまん。隕石をうっかりおまえさんの頭にぶつけてしまってのう。
いや、小惑星帯でビリヤードなんてするもんじゃないの。
ほんと、わしってばお茶目さんじゃの。てへっ☆ 反省っ☆」
「てへっ☆じゃねえーよてへっ☆っじゃ! ☆がすげえ苛つくんだよ!
早く生き返らせやがれこの糞神が!」
「それ無理」
「なにいいいい!!??」
ふざけんじゃねえぞぉぉぉぉ!!
「申し訳ないのう。わしのミスとはいえ規則なもんで。
変わりにほかの世界に転生させてやるから、勘弁してちょ」
「ふざけんなふざけんなふざけんな!
俺には世界征服するっつー野望があんだよ!
なのに、手違いで死亡だとお!?」
「能力つけちゃる。異世界で世界征服できるように能力つけちゃる」
「……ハーレムもつくる予定だったんだが」
「能力つけちゃる。異世界でハーレム作れるよう能力つけちゃる」
「…………仕方ねえな」
これぞまさにゴネ得……っ! 生きたっ……! 死んでるけどっ……! ゴネが生きたっ……!
「うし、同意も得られたことじゃし、それ、いくぞぉい!」
「よしこい!」
そうして俺の意識は真っ白に染まり、異世界へと生れ落ちたのだった。
某日某所
「被験者より魂の抽出、並びに人為的な変成及び他次元と推測される領域への放逐に成功」
「よし、出来たか! どうだ、他次元世界でもワームホールでもなんでもいい、観測できたか!?」
「主任、対象の消失先の特定に成功しました!」
「すぐ分析に回せ! よし、これで我々はさらに先に進むことが出来るぞ!」
「魂が跳んでいったということは知的生命体が確認されることは確定ですからね。
できれば次元跳躍やらブレーン間移動ではなく単なるワープであれば、資源採掘もしやすくていいのですが……」
「おいおい、どれだったとしても歴史的な事に変わりはないさ」
「そのとおり。しかし、被験者が同意することが放逐の条件ってのはなかなか厳しいものがありますね」
「ええ、しかしまさかあんなアホみたいな芝居で丸め込まれるとは思いませんでしたよ」
「まあそういってやるな。死んで動揺してたんだろうよ。しかし、さすがに隕石で死亡なんて信じるとは思わなかった」
「本当に。弾けとんだのは弾けとんだのでも爆薬ですからね。そもそも隕石なんてないことは見ればわかるでしょうに」
「まあそういういささか頭が弱かったから被験者に選ばれたんだ。当然といえば当然だよ」
「しかし、神に転生ってなあ」
「能力って。ねーよ」