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3-52 勇者支援会議 ― 世界の意思:勇者支援連合の報せ

 イルミナを討ってから、十日ほどが過ぎていた。


 ニース王国近郊――緩やかな丘の上に建つ臨時の駐屯地で、俺たちは休憩を取っていた。


 春の風が草原を撫で、焚き火の煙を遠くまで運んでいく。


 しばらく続いた戦いの緊張が解け、ようやく皆の表情にも穏やかさが戻っていた。


 そこへ、一人の伝令が駆けてくる。


 「勇者ユーマ殿、レンカ殿! ニース国王よりの緊急伝達であります!」


 慌ただしく差し出された封書を受け取り、俺は目を通す。


 『――大陸連合軍および勇者支援連合の結成を決議。

 各国および諸種族は、勇者一行への支援を正式に開始する。

 物資補給、情報伝達、武具強化のための連絡員を順次派遣す――』


 「……勇者支援連合、だと?」


 思わず呟いた俺に、レンカが覗き込む。


 「つまり、あたしたち専属の後方支援組織ってことね」


 「ありがたい話だな。 これで物資も魔石も安定する」


  ダリオが満足そうに頷く。


 「王都に戻らずとも、各地の補給拠点から補充が受けられる。

 まさに“動く本陣”だ」


 その時、風に乗って小さな鈴の音が響いた。


 見上げると、エリシアが丘の上に立ち、精霊の風をまとっていた。


 「精霊たちが、喜んでいるわ。

 人の国がひとつになったこと――それ自体が、風の加護を呼ぶの」


 その微笑みはどこか神聖で、以前よりも穏やかな強さを感じさせた。


 「そうか……やっと、みんなで立てるんだな」


 ミリアがほっと息をつく。


 「これまで、どこか“私たちだけの戦い”って感じだったけど、もう違うんだ」


 「おうよ」


 カイルが肩を鳴らし、笑ってみせる。


 「背中に国があるってのは悪くねぇ。 ただ――その分、負けられねぇけどな」


 「ふふ、それを言うなら、最初から負ける気なんてなかったでしょ」


 レンカが軽く笑うと、焚き火の炎がぱちりと弾けた。


 俺はもう一度、手紙に目を落とす。


 『なお、ドワーフ王国より新たな鍛冶師団を派遣。

 勇者ユーマ殿らの武具、特別製オリハルコン装備への打ち直しを希望す。

 また、エルフ女王より癒しの精霊水を贈呈――』


 「至れり尽くせりだな……」


 思わず苦笑した。


 けれど、その裏には確かに“期待”がある。


 この世界のすべてが、俺たちに未来を託している。


 「……責任、重いな」


 そう呟くと、レンカが俺の肩を軽く叩いた。


 「だからこそ、あなたが必要なのよ。 ユーマ」


 短い言葉なのに、不思議と胸の奥に熱が宿る。


 夕暮れの空。


 赤く染まる雲の向こうに、遠い魔王領が霞んで見えた。


 そこには、未だ七つの闇が蠢いている。


 「行こう」


 俺は小さく息を吐き、立ち上がった。


 「支援があろうと無かろうと、俺たちは前に進む。

 この風が、止まる前にな」


 その言葉に、全員が頷いた。


 そして、丘の上で風が鳴る。


 それはまるで、精霊たちが次の戦いへの決意を祝福するかのようだった。

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