3-51 勇者支援会議 ― 世界の意思:大陸連合評議会
ニース王国王都――王城最上階にある大評議会堂。
天蓋に刻まれた古の精霊紋章が、燭台の光を受けてゆらめく。
円卓には七つの国と二つの種族、計九名の代表が顔をそろえていた。
その中央には魔族領を示す大地図。
黒い印で塗られた“七つの瘴気の領域”が、まるで大陸を喰らうように広がっている。
「――これにて、大陸連合評議会を開会する」
ニース国王アウグスト三世の声が、静寂を切り裂いた。
「各国の報告を」
最初に立ち上がったのは、重厚な鎧を身にまとったドワーフ王ガルドゥークだった。
「北方山脈の防衛線は維持しておる。
勇者殿らの活躍により“四天王”どもは全滅し、奴らの軍勢も一時は沈黙した。
だが油断はできぬ。
“七魔王”本体は未だ姿を見せておらん」
鉄槌のような声が会場に重く響き、緊張が走る。
南方の代表、商業都市国家リューネの女公が口を開いた。
「交易路は半ば閉ざされました。
勇者たちがいなければ、各国はとうに孤立していたでしょう。
けれど四天王を倒したことで、魔族は沈黙したのではなく――次の段階に移ったのではないかと思われます」
会場がざわめく。
その言葉を受けて、淡い翠衣をまとったハイ・エルフ女王セレスティアが静かに頷いた。
「森の精霊たちも同じことを囁いております。
“闇の王たち”が、目覚めの刻を迎えたと」
彼女の瞳は湖のように澄んでいたが、その奥にはわずかな恐怖の影が宿っていた。
「ならばこそ、連携が必要だ」
アウグスト三世王が立ち上がる。
「勇者一行は、すでに四天王を討ち果たした。
彼らは我らの誰も成し得なかった“魔族の中枢への突破口”を開いたのだ。
だが――次は七魔王。
個々の国が援軍を送るだけでは、とても太刀打ちできまい」
王の言葉に場が静まり返る。
やがて、ガルドゥーク王が口髭を撫でながら唸った。
「連合軍を組む気か?」
「もちろん連合軍も組む。だが重要なのは“支援網”だ」
宰相が前に出て、羊皮紙の束を広げる。
「ニース王国が主導し、各国・各種族の物資・情報・魔術支援を統合する。
名称――“勇者支援連合”。
勇者一行を中核とし、後方より継続的な供給と情報を行う体制とする」
「勇者支援……」と誰かが小さく呟いた。
最前線に立つのは彼ら数名。だが、戦うのは大陸すべて――。
多くの代表が、その意図に頷き始める。
「ドワーフは鍛冶炉の開放とオリハルコン製装備、砲撃部隊を投入しよう」
ガルドゥーク王が腕を組み、深く頷く。
「魔王との戦いに備え、勇者殿たちの武具を新たに打ち直す」
「我らエルフは、癒しと風の加護を送ります」
セレスティア女王が静かに立ち上がる。
「精霊王の加護が再び地上に戻りつつあります。
勇者たちがそれを繋いだのです。
我らも応えねばなりません」
帝国の使者もため息をつきながら、小さく頷いた。
「ならば神聖帝国からは祈祷師団を派遣しよう。
癒しと結界の術式を供与する」
アウグスト三世王は深く息をつき、円卓を見回す。
「……では、ここに宣言する。
勇者支援連合――正式に発足する」
その瞬間、全員が立ち上がり、拳を胸に当てた。
精霊紋章が輝き、会場を包む風がざわめく。
まるで精霊王がその決断を祝福しているかのようだった。
だが――その光の奥で、誰も知らぬ闇が静かに蠢いていた。
七魔王たちもまた、この決議を“感じ取っていた”のだ。
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