3-42 最後の四天王:精霊の勇者 ― エリシアの覚醒後
光が収まり、神殿に静寂が戻った。
だが、その中心に立つ少女だけは――人ならぬ気配を纏っていた。
「……エリシア……?」
俺は息を呑む。
隣のレンカも、言葉を失っていた。
エリシアの周囲には無数の光の粒が舞っている。
炎でも風でもなく、純粋な“生命の残響”。
全ての精霊たちが、彼女の存在に共鳴していた。
「ユーマ、レンカ……」
エリシアはゆっくりと振り向く。
その瞳は淡い翠に輝き、虹の光を宿している。
頬にはまだ涙の跡が残るが、どこか安らかな笑みを浮かべていた。
「もう大丈夫。精霊は――息を吹き返したわ。」
レンカが小さく頷く。
「あなた……本当に、精霊たちの声が聞こえるのね。」
エリシアは静かに目を伏せる。
「ええ。でも……全部じゃない。
精霊王様――エリュシオン様が、少しだけ力を貸してくれただけ。
“人の身で全てを抱くな”って、そう言われたの。」
風が彼女の髪を揺らし、背の印が淡く輝く。
七色の紋章――《エリュシオンの契印》。
俺はその輝きに、ただ圧倒されるしかなかった。
「すごい……まるで神話の中の精霊使いだ」
「でも、その力……危険じゃないの?」とレンカ。
エリシアは少し沈黙した後、微笑む。
「……うん。代償はあるみたい。
精霊王の力は、“世界の流れ”そのもの。
長く使えば、私の魂が風に溶けてしまうらしいの」
俺とレンカは息を呑む。
しかし彼女は、どこか達観したように肩をすくめた。
「でもね、不思議と怖くないの。
今なら、風の声が、精霊の痛みが、みんなの想いが聞こえる。
それを守りたいって思うだけ」
俺はゆっくりと彼女の肩に手を置く。
「……だったら、俺たちもその風になる。
お前ひとりに背負わせたりしない。
この力がいつか、お前を削ることになっても――俺たちが支える」
その言葉に、エリシアは涙ぐんで笑った。
「ありがとう、ユーマ……。きっと、精霊王様も喜んでる」
幻想の森の奥から、かすかな囁きが返ってくる。
『人の子よ――その絆、確かに受け取った』
次の瞬間、彼らの足元に風が走り、三人の周囲に淡い光の輪が広がる。
まるで全ての精霊が祝福しているかのようだった。
そしてエリシアは、精霊王の聖弓の光る実体なき弦を引き絞る。
光が集まり、矢の形を成す。
イルミナが叫ぶ。
「何を! だが私の障壁を崩せるはずが――」
黒水晶をかざそうとしたその瞬間、エリシアが矢を放つ。
放たれた矢は、黒水晶ごとイルミナを貫く。
そして――。
「馬鹿な、ヴェリティア様……もうし……わけ……ご」
そこまで言ったところで、イルミナは影も形もなく消滅した。
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