3-36 最後の四天王:決戦直前の異変
夜も更け、焚き火の炎がゆらゆらと揺れる中、勇者一行は神殿前の宿営地で最後の準備を整えていた。
レンカは慎重に聖槍を磨きながら、ふと夜空を見上げた。
「……あれ?」
彼女の指差す先、星々の間にひとつだけ、微かに光が揺れている。
「流れ星……じゃないわね」
俺も目を凝らす。
確かに自然の星とは違う。
瞬きが規則的で、どこか人工的な光だった。
「精霊……?」
レンカの声に、エリシアが反応する。
「精霊の気配じゃないわ。これは……魔力の残滓ね」
その瞬間、カイルが暗がりの中で立ち止まった。
「動いた……影が」
周囲の影が、焚き火の揺らめきに呼応するように濃くなり、まるで意思を持って蠢くかのようだった。
「何者かが近くにいる……」
カイルの低い声に、俺たちは自然と身構える。
だが現れたのは敵ではなく、一体の小さな精霊だった。
水面に映る自分の姿を確かめるように、ふわふわと漂い――そして、消えた。
「……何かの警告かもしれない」
エリシアが呟く。
「精霊たちは、戦の前に異変を知らせることがあるの。良くも悪くも」
ミリアが小さく笑う。
「また何か起きると思ってたけど……こういう小さな異変も、気を引き締めるにはちょうどいいかもね」
俺は仲間たちを見渡した。
緊張感が静かに高まっていくのを感じる。
「分かった。小さな異変も気に留めつつ、明日は全力でいこう」
焚き火の光が揺れる中、全員が無言で頷き合った。
夜風に混じる不穏な気配――それは、明日待ち受ける煉獄の魔女イルミナとの決戦の、静かな序章に過ぎなかった。
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