3-31 影妖クルス
影妖クルスは焦っていた。
勇者一行の仲間割れを好機とみなし、大量の戦力を投入したが、結果は逆効果だった。
逆に一行の絆を強め、ユーマ・ヴァレンティアとレンカ・ルミナリアの覚醒を促してしまったのだ。
もう、後がない。
クルスは残った配下の戦力をすべて、古代神殿に向けた。
◆
一方、勇者一行は、レオンハルト、ダリオ、ミリア、エリシアに見張りを任せ、まだ古代神殿で調査を続けていた。
カイルは古代人の末裔であり、古代神殿の壁やモニターに書かれた文字を読むことができる。
彼が釘付けになっているのは、古代魔法の書かれたタブレットだ。
ガラスにひびが入っていたが、問題なく読める。カイルはそれを写本に書き写していた。
俺とレンカは、既に古代魔法を天界での修行で習得済みだ。
最初に習った魔法こそ、古代魔法にあたる。
習得後しばらくして、一部の魔法には制限がかけられ、禁呪指定された。
当時は疑問に思わなかったが、今、第一世代の歴史を知り、納得した。
カイルは全てを書き写し、タブレットを投げ捨て破壊する。
「とても危険な内容だ。悪用されないように」
その時、敵襲を知らせる笛の音が鳴り響いた。
俺たちは即座に合流し、敵を待ち構える。
布陣はこうだ。
前衛:ミリア、ダリオ、レオンハルト
中衛:カイル、レンカ
後衛:エリシア、俺
古代神殿の入り口の幅が狭く、7対66という絶望的な戦力差。
俺は封印していた魔導書を取り出す。
ダリオが一瞬こちらを見たが、黙って前を向いた。
◆
戦闘開始。
先制は、エリシアの天雨と、俺の強化されたファイアレイン。
だが、敵も対策済みのようで、天雨は効かない。
ファイアレインは魔導書でブーストされているため、まだ効果はある。
再び放つと、エリシアは森の導杖を取り出し、精霊魔法に切り替える。
敵の足を草木で拘束し、行進を鈍らせる。
しかし、肉薄する敵に対し、前衛のレオンハルトとミリアが覚醒し、次々と屠っていく。
ダリオは盾を構え、後衛に敵が進めないよう防ぎつつ、シールドバッシュで弾き返す。
カイルは闇属性の影魔法で前衛を援護し、レンカは聖槍でダリオの盾の隙間から敵を突き屠る。
全員が疲れ始めたところで、レンカが戦乙女に覚醒し、回復とバフを仲間にかける。
半時が経ち、俺も光の勇者に覚醒し、仲間に再度回復とバフをかける。
そして魔導書でブーストされたマジックミサイルを、残敵とクルスに向けて放った。
◆
残ったのは、ゴーレムを盾にして隠れたクルスだけ。
カイルは影の中に消え、クルスの背後から出現してバックスタブを決める。
「背中が、がら空きだぜ!」
クルスは「エ・・・エルシード・・・さ」と言葉を残し、力尽きた。
これで、魔王軍四天王は残り一人となる。
戻ってきたカイルを見て、俺とレンカは囃し立てた。
「ダークヒーローみたいだ、カッコよすぎる」
他の仲間は「ダークヒーロー」の意味が分からず、ポカンとしている。
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