3-22 獣人の国跡地
森を抜け、一行は獣人の国跡地へ向かって進む。
その道中も、ミリアは俺から忍者の修業を受けていた。
さらにダリオから新たな武具として風属性の双短剣――シルフィード・ダガーを授かり、俺やレオンハルトから双剣術を学ぶ。
風の勇者として覚醒した彼女には、風のエンチャントが施された短剣のほうが扱いやすいだろう、というのがダリオの判断だった。
なお、童子切安綱は再び俺のストレージに収められている。
ミリア曰く、あれは扱いにくいそうだ。
地道な努力の末、双短剣術や手裏剣術、忍術が彼女の魂に定着していく。
やがて、一行は獣人の国跡地に到着した。
そこは、見るも無残な光景だった。
一つとしてまともな家屋はなく、焼け焦げ、破壊され、壮絶な戦いの痕跡が色濃く残る。
しかし奇妙なことに、獣人族の遺体は一つも見当たらなかった。
俺は問いかける。
「ミリア、獣人族の遺体は……お前が弔ったのか?」
ミリアは首を左右に振る。
「それが……襲撃された時、遺体はあったんだけど、一晩中隠れていて、明け方に出てきたら、遺体も生き残りもいなかったの」
聞けば、おそらく生き残りは魔王軍に捕らわれたのだろう。
だが、遺体の行方を考えると、レオンハルトが低く呟く。
「おそらくだが、屍兵にされ、魔王軍に連れ去られたのだろう」
ミリアが問い返す。
「何故、そう断言できるの?」
「あそこに魔王軍の旗がある。灰緑に朽ちた玉座――怠惰の魔王バルドルのものだ。
そして奴は死霊使いだ。恐らくだが、グラオルのように屍兵にされたのだろう。
奴を倒さぬ限り、屍兵にされた者の魂は解放されず、今も苦しんでいるはずだ」
ミリアは憤慨して叫ぶ。
「だったら今すぐ乗り込んでバルドルを倒そう!」
だが、俺は制止する。
「まだ勇者は六名しか揃っていない。あと一人足りない。この状態で魔王に挑むのは無謀だ」
ミリアは言葉を詰まらせる。
「ユーマ師匠、でも……」
「まずは情報収集だ。生き残っている獣人もいるはずだ。
彼らの居場所を突き止めなければならない。
イーバラット戦でグラオルに従っていた数十名の獣人を見れば、何人かは魔王軍に所属していると考えていい」
そう言って、俺は人型の紙の束から数十枚を使い、式を放って周辺を捜索させる。
レンカも聖魔術で魂の痕跡を探し、レオンハルトとエリシア、ダリオは比較的損傷の少ない家屋を調査する。
取り残されたミリアはしばらく立ち尽くしていたが、やがて家屋の調査を手伝った。
結局、足跡すらなく収穫はなかったが、それがかえって不気味さを増していった。
一行は損傷の少ない家屋で一泊する。
その晩、ミリアは星空を見上げ、物悲しい鎮魂歌を口ずさむ。
五人はその歌を聞きながら、改めて魔王軍に対する闘志をみなぎらせるのだった。
◆
翌日、ミリアの提案で古代遺跡を調査することになった。
この近くに古代遺跡があり、獣人族は代々その遺跡を守ってきたらしい。
ミリアは、獣人族の巫女にのみ伝わる秘密の口伝呪文を知っており、それを遺跡の入り口で唱えると、古代遺跡への道が開けるという。
一行は遺跡へ向かう。
――その後を影が忍び寄っていることに気付かずに。
◆
影妖クルスは遠見の水晶で勇者一行を見つめ、通信魔術で暗殺者に指示を出していた。
予測不可能な実力者として、ユーマをターゲットに指定する。
戦鬼バルザグルを奇怪な術と召喚術で倒したかと思えば、ダークエルフ戦で高位魔法を披露。
今はあえて放置していたミリアを、忍者という聞き慣れない職業に就かせ指導したのだ。
クルスは、彼を中心にパーティが動いていることを察知し、脅威度を上げたのだった。
実は、今回出てきた「バルドルの旗」ですが、学園都市防衛戦でも密かに登場していました。
七人の魔王には、それぞれを象徴する旗が存在するという裏設定があります。
今後も新しい旗が登場しますので、「次はどんなデザインか?」と想像しながら読んでいただけると嬉しいです!
この物語には、あちこちに伏線を散りばめています。
「おや?」と違和感を持ったシーンがあれば、ぜひ読み返して「伏線探し」を楽しんでみてくださいね。
明日からは通常通り、7:00と20:00の1日2回投稿に戻ります。
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