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3-21 六人目の勇者? ミリア:死者の咆哮

 戦場の霧の中、重々しい獣の咆哮が響く。


 灰色の鎧に覆われた巨体――黄金のたてがみを持つ獅子の戦士が姿を現した。


 俺は息を呑む。


 「……まさか、あれは……」


 レオンハルトの表情が凍りつく。


 「間違いない。 獅帝グラオル……あの時、確かに討ち取ったはずだ」


 だが、その瞳は虚ろで、人の理性はもはや宿っていない。



 怠惰の魔王バルドルが、玉座のような骸骨の椅子から嗤う。


 「死してなお吠える忠義の獅子――これぞ我が屍兵ゾンビ

 死者は怠惰を知らぬ。永遠に戦い続ける、最も忠実な僕よ」



 ミリアは震える唇で名を呼んだ。


 「兄さん……?」


 仲間が止める間もなく、ミリアは戦場へ飛び出す。


 「兄さん! わたしだよ! ミリアだよ!」


 だが獅帝グラオルの爪が唸りを上げ、彼女の忍び装束を裂いた。


 反射的に俺が間に入り、炎の結界を張る。


 「ミリア、戻れ! あれはもうお前の兄じゃない! 屍兵だ」


 「違う! 兄さんの中に、まだ心が残ってる! ……わたし、感じるの!」


 ミリアは涙を拭い、静かに印を結ぶ。


 風と影を纏い、再び獅帝の前へ。


 俺は静かに声をかける。


 「――分かった。 お前の信じるままに行け」


 屍兵となったグラオルはかつての俊敏さを失い、緩慢で、ミリアの動きに付いていけなかった。


 ミリアは分身の術で彼を翻弄し、肉薄する。


 そして忍術「影牙閃」が兄の胸を貫いた。


 その瞬間、グラオルの瞳に一瞬だけ光が戻る。


 「……ミリア……か」


 「兄さん!」


 彼は微笑み、かすれた声で呟く。


 「すまない……俺は、守りたかっただけなんだ。 ……民を、そして……お前を」


 ミリアの頬を涙が伝う。


 「分かってる……兄さんのせいじゃない。

 わたし、妹として……兄さんの苦しみを、終わらせる」


 グラオルは静かに頷く。


 「レンカ、お願い」


 レンカは頷き、聖なる鎮魂歌(ホーリー・レクイエム)を歌う。


 魔法陣が二人を包み、ミリアの腕の中でグラオルは光となって消えていった。


 ミリアの瞳が輝く――風の勇者としての覚醒である。



 遠見の水晶で一部始終を見ていた怠惰の魔王は怒号を上げる。


 「くだらぬ情だ! 死者は従うのみ!」



 ミリアは決意も新たに叫ぶ。


 「兄の魂を弄んだ罪――妹として忍びとしても、許さない!」


 戦いの後、丘の上で彼女は風に祈りを捧げる。


 「兄さん、見てる? わたし、もう泣かないよ。

 あなたの誇りは、わたしが守るから」


 尻尾が静かに風に揺れる。


 俺は遠くからその姿を見つめ、呟いた。


 「……忍びであり、妹であり――彼女は、戦士の魂そのものだな」


 レンカが微笑む。


 「泣き虫で食いしん坊なのに、立派になったよね」


 「泣き虫も食いしん坊も、強さの証さ」


 俺は空を見上げる。


 白い雲がゆっくりと流れていく――まるで、兄妹の絆が風となって旅立っていくかのように。

 ここで、学園都市防衛戦で、獅帝グラオルがレオンハルトに敗れた後、バルドルの名を呼び、彼がバルドル配下であった事が繋がりましたね。

 気付いた方は鋭いです。

 もし『どこだっけ?』と思ったら、ぜひ読み返してみてくださいね。


 もし「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、下記の【☆☆☆☆☆】やブックマークで応援をいただけると、執筆の大きな励みになります!


 皆様の応援が、物語を完結まで導く力になります。 よろしくお願いいたします!

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