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3-20 六人目の勇者? ミリア:兄の名と真実

 森の奥で、一行は魔王軍の斥候部隊と遭遇した。


 その会話の中で、ひとつの名が耳に飛び込む。


 「……獅帝グラオルが敗れた? 学園都市イーバラットで?」


 その瞬間、ミリアは足を止めた。


 「今……なんて言ったの?」


 捕らえた斥候兵が吐き捨てるように答える。


 「貴様ら人間どもの勇者、レオンハルトとかいう奴にやられたんだよ。あの獅帝グラオル様がな」


 ミリアの瞳が大きく揺れる。


 「うそ……兄が……」


 レオンハルトは静かに立ち上がり、真っ直ぐミリアを見つめる。


 「私が倒した。戦場では、どちらかが生き、どちらかが死ぬ。それだけだ」


 胸に重くのしかかる現実に、涙が頬を伝う。


 だが、ミリアは拳を握りしめ、強く言った。


 「……ありがとう、教えてくれて。兄は……戦いの果てに、自分の信じた道を選んだんだね。なら、わたしは――わたしも自分の信じた道を進む!」


 森の静寂の中、彼女の決意が風に乗るように響く。


 「兄さん……次に会うときは、胸を張って言うんだ。わたしはもう、泣いてばかりの妹じゃないって!」



 翌朝。

 ミリアはすっかり元気を取り戻していた。


 「悲しいときこそ、いっぱい食べるの! これ、兄さんもそう言ってた!」


 俺は森の果実を次々と拾い集め、即席の果実スープを作る。


 「おお、これは……美味い!」とレオンハルトが唸る。


 「お代わりある?」とミリア。


 「もう三杯目だが……まあいい」


 俺は苦笑しながら答えた。


 「お前の底なしの食欲は、戦場の補給担当泣かせだな」


 「えへへ、それでも、みんなが笑ってくれるならいいの!」


 その明るさが、いつしか一行の士気を支える光となった。



 以降の旅で、ミリアは俊敏さと忍術を駆使し、斥候・偵察・潜入といった任務を軽々とこなすようになった。


 戦いでは、炎と風の魔法を融合させた「旋牙閃」を繰り出し、敵を翻弄する。


 「お前……もう立派な戦士だな」


 レオンハルトは驚嘆して言った。


 「でしょ? 兄さんにも胸を張って報告できるよね!」


 ミリアはにっこりと笑う。


 その夜、焚き火の光の中、俺は彼女の揺れる尻尾を見つめながら思った。


 ――血で繋がった家族が敵となったとしても、この少女の心は、決して闇に染まらない。


 ミリアの笑い声が夜空に響く。


 それは、悲しみを乗り越え、未来へ歩む彼女自身の力強い足音――希望そのもののようだった。


 焚き火の炎に照らされた瞳は、もうかつての泣き虫の妹ではない。


 兄の背中を追い、己の道を選ぶ勇者として――確かに輝いていた。

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