3-20 六人目の勇者? ミリア:兄の名と真実
森の奥で、一行は魔王軍の斥候部隊と遭遇した。
その会話の中で、ひとつの名が耳に飛び込む。
「……獅帝グラオルが敗れた? 学園都市イーバラットで?」
その瞬間、ミリアは足を止めた。
「今……なんて言ったの?」
捕らえた斥候兵が吐き捨てるように答える。
「貴様ら人間どもの勇者、レオンハルトとかいう奴にやられたんだよ。あの獅帝グラオル様がな」
ミリアの瞳が大きく揺れる。
「うそ……兄が……」
レオンハルトは静かに立ち上がり、真っ直ぐミリアを見つめる。
「私が倒した。戦場では、どちらかが生き、どちらかが死ぬ。それだけだ」
胸に重くのしかかる現実に、涙が頬を伝う。
だが、ミリアは拳を握りしめ、強く言った。
「……ありがとう、教えてくれて。兄は……戦いの果てに、自分の信じた道を選んだんだね。なら、わたしは――わたしも自分の信じた道を進む!」
森の静寂の中、彼女の決意が風に乗るように響く。
「兄さん……次に会うときは、胸を張って言うんだ。わたしはもう、泣いてばかりの妹じゃないって!」
◆
翌朝。
ミリアはすっかり元気を取り戻していた。
「悲しいときこそ、いっぱい食べるの! これ、兄さんもそう言ってた!」
俺は森の果実を次々と拾い集め、即席の果実スープを作る。
「おお、これは……美味い!」とレオンハルトが唸る。
「お代わりある?」とミリア。
「もう三杯目だが……まあいい」
俺は苦笑しながら答えた。
「お前の底なしの食欲は、戦場の補給担当泣かせだな」
「えへへ、それでも、みんなが笑ってくれるならいいの!」
その明るさが、いつしか一行の士気を支える光となった。
◆
以降の旅で、ミリアは俊敏さと忍術を駆使し、斥候・偵察・潜入といった任務を軽々とこなすようになった。
戦いでは、炎と風の魔法を融合させた「旋牙閃」を繰り出し、敵を翻弄する。
「お前……もう立派な戦士だな」
レオンハルトは驚嘆して言った。
「でしょ? 兄さんにも胸を張って報告できるよね!」
ミリアはにっこりと笑う。
その夜、焚き火の光の中、俺は彼女の揺れる尻尾を見つめながら思った。
――血で繋がった家族が敵となったとしても、この少女の心は、決して闇に染まらない。
ミリアの笑い声が夜空に響く。
それは、悲しみを乗り越え、未来へ歩む彼女自身の力強い足音――希望そのもののようだった。
焚き火の炎に照らされた瞳は、もうかつての泣き虫の妹ではない。
兄の背中を追い、己の道を選ぶ勇者として――確かに輝いていた。
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