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3-15 六人目の勇者? ミリア:森の細道にて

 森を抜けた先の細道で、甲高い悲鳴が木々の静寂を切り裂いた。


 「ぎゃあああああっ!」


 一行が駆け寄ると、木の枝に逆さづりにされた獣人の少女がいた。


 ふさふさの尻尾をばたつかせ、金色の瞳を涙で潤ませている。


 獅子の耳をぺたりと伏せ、もがく姿はどこか愛嬌があった。


 「た、助けてぇ! なんで私ばっかり罠に引っかかるのー!」


 俺とレンカは慌てて仕掛けを外し、少女を地面に下ろす。


 彼女は勢いよく跳ね起きると、ぺこりと頭を下げた。


 「ありがと! わたし、ミリアっていうの! ごめんね、いつもこうなの! 森を歩くと、なぜか必ず罠にかかっちゃうんだ~!」


 尻尾を振りながら早口でまくしたてる姿に、仲間たちは思わず目を丸くする。


 あまりの自己紹介に、一同はしばし沈黙した。


 レオンハルトが深いため息をつき、呟く。


 「……よく今まで生き延びてこられたな」


 ミリアは胸を張り、尻尾をぶんぶん振る。


 「脚は速いからね! 罠以外なら任せて!」


 次の瞬間、足元の石につまずき、盛大に転ぶ。


 「いったぁ~い!」


 その場の空気が一気に和やかになる。


 エリシアは思わず笑みをこぼした。


 「まったく……騒がしい子。でも、不思議と憎めないわね」


 ため息混じりの声には、どこか優しさが滲んでいた。


 その時、俺はふと気づく。


 ミリアが転んだすぐそば――草むらに小さな罠が仕掛けられている。


 「わ、わたし……見つけちゃったみたい!」


 得意げに尻尾を揺らすミリアに、俺は笑みを浮かべた。


 「偶然でも、役に立つなら十分だ」


 エリシアも微笑み、肩をすくめる。


 「ほんと、ドジだけど……悪くない子ね」



 道中、レンカがユーマの耳元で小声を漏らした。


 「ねえ……この子、本当に信用して大丈夫なの?」


 その声が聞こえたのか、ミリアはしょんぼりと耳を垂らした。


 「わたし、怪しい者じゃないの……ただ、みんな獣人ってだけで怖がるから……」


 俺は穏やかに答えた。


 「疑っているわけじゃない。今は魔王軍の影が濃い。慎重になるのも仕方ない」


 その言葉に、ミリアは寂しげに笑った。


 「……魔王軍。あいつらは、わたしの国を滅ぼしたんだ」


 一行が息をのむ。


 ミリアは空を見つめながら、静かに続けた。


 「数年前、獣人族のルガナは魔王軍の侵攻で滅んだ。なのに……兄のグラオルが、魔王軍に加わったって噂を聞いたの。どうしてなのか、わたし、今でも分からない」


 その名を聞いた瞬間、レオンハルトの表情がわずかに硬くなる。


 何かを言いかけたが、彼は口を閉ざした。



 夜のキャンプにて。


 焚き火の明かりに照らされながら、ミリアは旅に加わる決意を告げた。


 「勇者探し、楽しそう! わたしも行く! ……たぶん役には立たないけど、にぎやかにはできるから!」


 その“役立たず”な部分が、意外にも功を奏したのは数時間後だった。


 夜の見張りの際、森の奥で微かな物音に気づいたミリアが慌てて駆け出す。


 魔王軍の小隊が近づいていたのだ。


 だが、ミリアの騒ぎに敵は混乱し、一行はその隙に反撃の態勢を整えることができた。


 ――結果、勝利をもたらしたのは、彼女の“ドジ”そのものだった。


 こうして獣人の少女ミリアは、


 「ドジだけど憎めないムードメーカー」として仲間に迎え入れられた。


 焚き火の火が静かに揺らめく。


 ミリアの金色の瞳に、その光が映り込み、かすかに影を落とした。


 それはまるで――遠い記憶の中で失われた兄の姿を、今も探しているかのようだった。


 そしてその影が、のちに彼女を涙の運命へと導くことを、


 その夜、誰もまだ知らなかった。

 スマートフォンで読んでみたら読み辛かったので、改行を入れました。


 本文には、手を加えていません。


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