3-7 エルフの森:出立その1
一週間が過ぎ、ついに出発の日がやってきた。
次なる目的地は――ドワーフの国。
カーリオスからは、瓶と樽に詰められた大量のウィスキーと日本酒を託された。
「ドワーフは酒精の強い酒を好む。これで懐柔してくるのじゃぞ」
まさに的確な助言である。
旅支度の一環として、俺は食料や酒類をストレージへと整理して収めていく。
また、エリシアからは勇者候補についての情報も得た。
ドワーフの国には、ダリオという戦士が候補として名を挙げているらしい。
エリシアの生活必需品や下着は、すべてレンカのストレージへ整然と収納された。
彼女は精霊弓アルシエルを携え、森の導杖をバックパックに収める。
装備はレザーアーマー上下に、ミスリル銀のロングブーツと手甲。
弓の動きを妨げないよう加工されたブレストアーマー、そして緑の外套。
ほぼ俺たちと同じ構成で、準備は万端だった。
「では、気を付けて行くのじゃぞ。無事に帰ることを祈っておる」
「はい、カーリオス様。必ず勇者として覚醒し、すべてを片付けた後――この都へ戻ってきます」
「うむ。森の賢者として、立派に務めを果たすのじゃ」
「はい」
エリシアは振り返り、ふわりと微笑んだ。
「では、行きましょうか」
その言葉で、俺たちは出立した。
隊列は前衛にレオンハルトと俺、後衛にレンカとエリシア。
女性同士の気遣いや話題の共有を考慮した配置だ。
一週間の滞在は、決して無駄ではなかった。
ドワーフの国へ着いたときに備え、俺は武具の図面をあらかじめまとめておいた。
もしドワーフたちの目にかなえば――かなり複雑だが、きっと作ってくれる。
そんな淡い期待を胸に抱えながら、俺たちは森の道を歩み始めた。
だが、旅にはすでに影が忍び寄っていた。
◆
エルフの都の入口を抜け、精霊術で道を封鎖しながら森の出口へ向かっていたときだ。
エリシアを通じて、急報が入った。
――ダークエルフの一団が待ち構えている、と。
ダークエルフとは、太古の時代に魔族側についたエルフの末裔。
第一世代の文明リセット事件で地獄へ堕とされ、肌が黒く変じた一族。
その戦闘能力の高さは、エルフたちの間でもよく知られている。
即座に戦略会議が行われた。
後方から転移して先制攻撃を仕掛けるか、側面へ回って分断を狙うか――意見は割れた。
そして、導き出された結論はこうだ。
俺とエリシアが後背の高所に転移し、先制攻撃で混乱を誘う。
その隙に、レンカとレオンハルトが右側面から切り込み、隊列を分断する。
即座に二つの転移魔法陣を展開し、俺たちは二手に分かれて飛んだ。
大掃除するので。
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