表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
46/51

3-4 エルフの森:エルフの都

 その光景は、目の前に広がるだけで好奇心を強く掻き立てるものだった。

 途方もなく大きな大木の枝々には、無数のツリーハウスが建ち並び、互いは木製の吊り橋で結ばれている。


 ――空中都市。


 目の前に現れたのは、まさにその光景だった。


 近づいてみると、ツリーハウスは二階建てから三階建てほどの立派な建物で、各棟からは梯子や縄ロープが地面まで伸びている。

 時折、エルフたちが顔を覗かせ、こちらを窺う。

 好奇心、警戒心、さまざまな感情が、その視線から伝わってくる。


 地面には整然と整備された田畑やため池が広がっていた。

 田には稲穂や麦が実り、畑には多彩な野菜や豆類が育つ。

 かつての日本を思い起こさせるような、どこか懐かしい風景だった。


 そして一行は森の奥、ひときわ大きな樹に設置されたツリーハウスへと案内された。

 梯子を登り、内部へと足を踏み入れる。

 そこには年老いたハイ・エルフから若々しい者まで、総勢十数名のハイ・エルフたちが並び、こちらを見据えていた。


 エリシアは彼らに向かって、静かにハイ・エルフ語で告げる。


 『長老方、ニース王国イーバラットより来た勇者を連れてきました。カールオ校長からの紹介状も所持しているとのことです』


 長老の一人が応じる。


 『ほう、カールオからか。森を飛び出して外の世界に出たが、まだ生きておったか』


 『はい、ツーク国立学園の校長を務めているそうです』


 『教育者とな……なるほどな。ではまず、その紹介状を拝見しよう』


 『わかりました』


 区切りをつけると、エリシアはこちらを振り向き、共通語で声をかける。


 「紹介状をこちらに」


 「はい」


 俺はストレージから紹介状を取り出し、手渡す。

 長老たちはそれを見て、互いに囁き合う。


 『ストレージを使うとは、希少な術か……勇者である可能性もあるな』

 『いや、まだ断定は早いかもしれぬ』

 『まずは紹介状を読んでから判断せよ』


 多言語理解と通話のスキルを持つ俺とレンカには、長老たちの言葉も理解できる。

 一方、レオンハルトは理解できず、緊張した面持ちでその様子を見守っていた。


 紹介状をエリシアに渡すと、彼女は一番年老いたハイ・エルフに手渡す。

 長老は頷きながら読み進め、最後に他の長老たちに回す。


 全員が目を通し終えた後、カーリオスという名の最年長の長老が、共通語で口を開いた。


 「レオンハルト、ユーマ、レンカよ、エルフの都へようこそ。

 わしはカールオの曽祖父にあたるカーリオスじゃ。

 生憎、女王陛下は長い瞑想中でのう。会わせるわけにはいかんのじゃ」


 レオンハルトは丁寧に頭を下げる。


 「初めまして、レオンハルトと申します。

 こちらはユーマとレンカ、共に旅をする勇者です。

 そちらの事情は分かりました。

 それと、カールオ校長には大変お世話になりました」


 カーリオスは微笑を浮かべ、懐かしげに言う。


 「あの破天荒なカールオが、ニース王国の最高学府の校長とはな。

 元気にしておるか?」


 「はい、優秀で人格者です。とても元気でした――魔王軍四天王に襲われるまでは。

 現在は都市の復興に尽力しており、少々疲れた様子を見せています」


 「そうか、たまには戻って顔を見せてほしいものじゃな」


 そこに俺が口を挟む。


 「でしたら、魔導通信具を持ってきています。顔を見ながら通話可能です。

 いま話されますか?」


 「ほう、魔導通信具とな。ぜひ話そう」


 俺はストレージから魔導通信具を取り出し、カールオ校長を呼び出す。

 やがて映し出された校長の顔は、空中に投影される。


 『おお、カールオじゃ』『出て行った時と変わらぬな』と、しばし談笑が続く。


 「カールオ校長、お久しぶりです。今、ハイ・エルフの長老方と接触しております。

 直接お話されたいとのことで、カーリオス様と代わります」


 エリシアに魔導通信具を手渡すと、彼女はカーリオスへと手渡す。


 レオンハルトは言う。


 「つもる話もあるだろう。私たちは一旦席を外す」


 カーリオスが告げる。


 「エリシア、彼らをテラスへ案内せよ」


 「わかりました。こちらへ」


 こうして案内されたテラスには外光が差し込み、穏やかな風が通る。

 部屋を出る間際、ハイ・エルフたちは昔話に花を咲かせる声を交わしていた。


 俺たちは用意されたテーブルに腰を下ろし、静かにその場の空気を味わった。

もし、面白い。


続きが気になる。


先を読みたい。


等のご希望があれば、下記の評価とブックマークをお願い致します。


作者の励みになります。


宜しくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ