3-1 プロローグ:旅立ち前夜「託された想い」
防衛戦から二週間。
ようやく学園都市の街並みは、静けさを取り戻しつつあった。
それでも瓦礫の山や、修復の進まぬ城壁が、この街が戦場であった事実を雄弁に物語っている。
俺たちは、ここを発つことを決めていた。
――七勇者を探す旅に出るために。
「行くのだな、ユーマ君」
カールオ校長は、疲れのにじむ声音で言った。
「君たちがいなければ、この学園都市は守れなかった。
……だが、それでも行かねばならぬのだな」
「はい。 俺たちが立ち止まっていれば、次の襲撃で全てを失うことになります。
それに、俺たちが動けば魔王軍は俺たちに引き付けられるでしょう」
俺の瞳には、もはや迷いはなかった。
レンカが一歩前に出て、柔らかく微笑んだ。
「どうかご安心ください。 私たちは必ず七勇者を見つけ、この戦いを終わらせてみせます」
講堂の高窓から射し込む光が、ふたりの姿を照らす。
その光の中で、彼らは確かに“旅立つ者”の面影を宿していた。
「これは、ふたりの卒業証書だ。
森への通行証と紹介状は、事前に渡してあったな」
「ありがとうございます。 この学園で学んだすべてを、旅の中で生かしていきます」
「はい。 ユーマの言う通りです。 私もこの学園で得たものを、無駄にはしません」
「それと――以前、入学の折にも話したが、まずはエルフの森へ向かってもらいたい」
「はい。 わかりました」
その時、生徒たちが次々と駆け寄ってきた。
「ユーマ先輩、必ず戻ってきてください!」
「レンカ様、どうかご無事で……!」
「レオン先輩、今度こそ剣の稽古、お願いしますよ!」
腕を組んだままのレオンハルトは、照れ隠しのように鼻を鳴らす。
「フン、泣くな。 俺たちは必ず帰ってくる。
……この剣に誓ってな」
――夜。
静まり返った一軒家の一室で、俺とレンカは並んで窓辺に立っていた。
星々が瞬き、まるで彼らの行く先を照らすように夜空を彩っている。
「……ユーマ。 少し、怖いよ」
レンカが小さく呟いた。
「でも、あなたが隣にいるなら、どこへでも行ける」
俺はその手を静かに握り返した。
「俺もだ。 ……絶対に守る。
たとえ何度転生しようとも、俺は君と共に歩む」
その誓いは、星明かりの夜に刻まれた。
そして翌朝。
多くの仲間たちに見送られながら、俺たちは――
新たなる旅路へと、一歩を踏み出した。
もし、面白い。
続きが気になる。
先を読みたい。
等のご希望があれば、下記の評価とブックマークをお願い致します。
作者の励みになります。
宜しくお願い致します。




