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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
40/50

2-32 学園都市防衛戦:戦いの果てに

 戦場を包んでいた轟音は止み、代わりに耳に痛いほどの静寂が訪れた。

 崩れ落ちた巨体――戦鬼バルザグル。

 その横には、満足そうな笑みを浮かべて横たわる獣王グラオル。


 学園都市を脅かした二柱の四天王は、確かに討ち果たされたのだ。


 「……勝ったのか?」


 「や、やったのか……俺たちが……!」


 生徒たちの声は震え、やがて歓声へと変わっていく。

 城壁の上で剣を掲げるレオンハルトの姿に、誰もが歓呼を上げた。


 一方その中央で、俺はレンカに事の経緯を説明していた。


 「いやー実は、生前とあるボロ家の霊障を祓う仕事を引き受けてね」


 「で!」


 レンカの勢いに押されつつ、続ける。


 「調べてみたら、酒呑童子様と茨木童子様が“鬼神化”して住み着いていたんだわ」


 「……。」


 「で、極上の酒――勝駒っていう、石川県の隣の富山県の酒なんだけど――それを献上したら、えらく気に入られてさ。お礼に神級料理を作って振舞ったら、式神になるって」


 『そうだぞ嬢ちゃん。こいつといると美味い酒と飯にありつけると思ってな』


 『有無』


 レンカが疑問符を浮かべた顔になる。


 「神様以外に神級料理を出しちゃ駄目じゃなかった?」


 「いや、鬼神だぞ。鬼は鬼でも“神格持ち”の鬼だ。問題ないだろうと思って。まあ、人に害を与える存在じゃなくなっていたし」


 「十二天将は?」


 「そのまま引き継いで……今は影の中で待機してるようだね」


 『ま、俺たちが加わって十四天将だがな』


 「……そう。まあ良いわ。歓迎します、酒呑童子様、茨木童子様。私はユーマの婚約者のレンカです」


 『有無。蓮花嬢ちゃんの転生体だな。神気交じりの気は間違いない』


 『その通りだ。悠真が陰陽術を使ってくれたおかげでパスが繋がってな。これからよろしく頼む』


 「それでか。式神召喚が失敗したから、この世界では陰陽術自体が使えないと思ってました。……まあ、レンカのおかげで一か八かやってみたんだけど」


 「私の?」


 「ああ、レンカの目がな。天界に転移した時の目を思い出させてくれて、それで」


 『式神召喚は特殊な因果法則があるからな。まあ、人の子が知らんでいい法則じゃ』


 「わかりました。とりあえず影に戻ってもらえますか? 人々が怖がってますから。後でこの都市で手に入れた酒精の強い酒を振舞います」


 『承知した』『有無』


 二柱の鬼神は影へと戻っていった。


 そして前を見据えた――その時だった。


 ふと、冷たい風が戦場を撫でる。

 どこからともなく、低い笑い声が響いた。


 「……ククク。なるほど、確かにあの二人を倒したか」


 闇の中から現れたのは、影のように揺らめく人影。

 全身を黒布で覆い、赤い双眸だけが妖しく光る。


 「四天王、影妖クルス……!」

 教師の一人が息を呑んだ。


 クルスは嘲るように肩をすくめる。


 「今回はただの観察だ。……だが覚えておけ。お前たちの勝利など、魔王軍にとって取るに足らん。真なる地獄は、これからだ」


 次の瞬間、影は霧のように掻き消えた。


 勝利の余韻に浸る生徒たちの胸に、冷たい恐怖が再び刻まれる。

 それは確かに――“序章”に過ぎないと告げていた。


 俺は静かに拳を握りしめる。


 【……必ず、守り抜く。たとえ七魔王が相手でも――】


 その誓いが、学園都市防衛戦の終幕と、新たなる戦いの始まりを告げていた。

もし、面白い。


続きが気になる。


先を読みたい。


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