0-4 ヴァルハラでの修行と、神々の思惑
その頃、天界ではヤハウェが密かに動いていた。
悠真と蓮花の体に──「アダム試作零式」と「イブ試作零式」を融合させる準備をしている。
これを見た天使ラグエルが咎める。
『主よ、何をなさっているのですか?』
ヤハウェは軽やかに返す。
『ラグエル……いや、別名で呼ぶ方がいいかもしれんな』
『いいえ、その名はサタンに受肉体を奪われてから捨てています。
それより、土から生まれた人の子に、全属性で作られた試作零式を与えるのは危険です。
扱えぬばかりか、身を滅ぼすでしょう』
ラグエルの懸念を、ヤハウェは一笑に付す。
『問題ない。 “努力は裏切らない”とは良い言葉だ。
この世界に潜り込んだ“鼠”を炙り出すには、彼らほど適した存在もおるまい』
それでも不安を隠そうとしないラグエルに、ヤハウェは言った。
『そんなに心配なら守護天使として二人について行けばよい』
『はあ、わかりました』
ヤハウェは嬉々として、二人の体と試作零式の融合を進めた。
こっそりと。
◆
午前は瀬織津姫様から古神道等を学び、午後は武御雷様の指導で古武術を身につける日々。
西洋魔術を俺はマーリンから学び、蓮花は戦乙女たちと親交を深めながら修行を重ねた。
また、歴代の服部半蔵がヴァルハラで修業をしていたので、忍者の修業も受けた。
二千年に及ぶ修行を経て、ついに須佐之男命から認められ、天界へと戻った。
再び神々が揃い、ミドルアースへの転生か転移かの選択を迫られる。
俺たちは迷わず「転生」を選んだ。
理由は、転移では世界の異物として排除される可能性があるためだ。
容姿は、両親の良いところ取りにしてくれるように頼んだ。
ある神が訝しんで問うたが、俺は冗談めかして答える。
「奇抜な容姿では、母親の不貞が疑われます」
その一言に神々は笑い、納得してくれた。
神々からは、特別に以下の三つのスキルが与えられた。
多言語理解・通話、アカシックレコードへのアクセス権、ストレージ。
これらは二人への“お土産”のように手渡され、転生の儀式が始まる。
サービスだから貰っていけとの事だ。
また、ストレージには修行前後に使っていた武具や術用の道具一式、ラジエルの書の写本に、ミスカトニック大学で借りた魔導書等が入っていた。
レンカも同様のようだ。 違いは魔導書の代わりに聖魔術の書が入っているという点。
天照大御神は「汝らの光は世界を照らすだろう」と告げ、
月読命は「均衡を忘れるな」と諭す。
須佐之男命は「力は恐れるものではない」と力強く告げ、
瀬織津姫命は「絆こそ、祓いの本質である」と最後の助言を与える。
光が闇へと変わり、二人の魂は新たな世界へと流れ込んでいった。
光景は静かに幕を下ろし、胸には淡い安堵と、言葉にならない小さな不安だけが残った。
だが確かなのは、ここから全てが始まるということ。
二人はまだ幼いが、すでにその胸には未来を変える種が蒔かれている。
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