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七人の勇者と婚約者殿~世界と異世界を救う絆の物語~  作者: 童爺
第2章 学園都市イーバラット
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2-31 学園都市防衛戦:二つの決着

 雷光が奔り、剣と爪が交差する。

 城壁の上では、レオンハルトと獅帝グラオルの死闘が続いていた。


 「ガアアアアッ! 人間が、この俺をここまで追い詰めるとはな! だがその剣……悪くない!」


 黄金の鬣を逆立て、グラオルが咆哮する。


 「俺は……俺の剣で仲間を守るッ! そのためなら何度でも立ち上がる!」


 レオンハルトの剣が閃き、雷爪を弾き飛ばした。

 体中傷だらけだが、リジェネレーションが働き、わずかずつだが回復していく。

 その瞳には一片の迷いも折れも無い。


 最後の一撃を繰り出すため、両者は微動だにしなかった。


 【ユーマとレンカは問題無い。 俺はあいつらを信じる! 今はこいつに集中だ!】


 その時、レオンハルトの中で何かが“かみ合う”ような感覚が走る。

 リジェネレーションや身体強化だけでは説明できない力があふれ出した。


 次の瞬間、彼の体は閃光に包まれる。

 ――覚醒したのだ。


 閃光の勇者として。


 それを合図に、雷と剣が交わり、閃光が空を裂いた。


 「獅帝剛爪――ッ!」


 「雷迅烈閃――ッ!」


 轟音の中、両者の影が交差する。


 次の瞬間、グラオルの巨体が膝を折った。


 「馬鹿な……人間ごときに……バルドルさ、ま……」


 その言葉を残し、巨獣は地に伏す。

 だが、レオンハルトはなお閃光に包まれたままだ。

 時折、バチバチと雷が弾ける音がする。


 そう――グラオルの雷爪を何度も浴びるうちに、雷への耐性だけでなく、自身の魔力と雷を同調させる術を得たのだ。


 皮肉にも、グラオルは“雷属性を持つ閃光の勇者”を生み出すきっかけとなった。



 ――同時刻。


 戦場の中央では、俺と戦鬼バルザグルの決戦が佳境を迎えていた。


 「小僧ォ! 四属性を操ろうが、大地は揺るがぬ!」


 見ると、バルザグルの体が金属へと変じている。

 大槌が振り下ろされ、地面が裂け、岩石が雨のように降り注いだ。


 未だ気力の残る教師や学生魔導師、ギルド魔導師たちが一斉に魔法を放つ。

 だが、届かない。

 金属化したその体には、物理も魔法も状態異常も一切通じなかった。


 ユーマは冷静に観察する。


 物理攻撃は無効。

 魔法も通らない。

 バインドも状態異常も意味がない。


 【どうすればいい。何かあるはずだ……】


 その時、レンカと視線が合う。

 天界へ転移した時、泣きそうな表情でこちらを見ていた、あの目。


 ――閃いた。


 ユーマはストレージから、護符の束を取り出す。


 「何をするかと思えば、そんな紙切れで何ができる!」


 バルザグルが吠えるが、構わず接近し、護符を貼り付けた。


 「金生水! 急急如律令きゅうきゅうにょりつりょう!」


 次の瞬間、バルザグルの体表が巨大な水の塊へと変化する。


 「なっ……!」


 続けて護符を貼る。


 「水生木! 急急如律令!」


 バルザグルの体から木々が生え、覆い茂る。


 さらに貼る。


 「木生火! 急急如律令!」


 バルザグルの全身が燃え上がった!


 「小僧ぉぉぉぉ! 何をしたぁぁぁぁ! なんなのだそれは、見たことが無い! 貴様、何者だ!」


 燃え盛る自身の体を見て、バルザグルは狼狽える。


 「ぬ……ぐ、グラトス様……!」


 【後はフィニッシュだけだ!】


 そう思った瞬間、声が響く。


 『後は俺たちに任せてもらおうか!』


 ユーマの影から、鬼神が二柱飛び出した。


 「なっ! 酒呑様? 茨木様?」


 『あらよっと!』


 二体の鬼神が一瞬でバルザグルを三等分する。

 酒呑童子が燃える刀で首を跳ね、茨木童子が同じく燃える刀で胴体を二分した。


 『やっとパスが繋がったぜ! これからは俺たち式神も、こちらに顕現できる』


 酒呑童子が叫ぶ。


 『……後で美味い酒、頼むぞ』


 茨木童子の言葉に、レンカの目が吊り上がる。


 「なぜ私のご先祖様――渡辺綱を筆頭とする頼光四天王と源頼光様が討伐した酒呑童子や茨木童子が式神になっているの! 後できっちり説明してもらいますからね!」


 「わ、わかったよ……」


 【俺は婚約者殿のお怒りを鎮められるでしょうか、始祖・安倍晴明様……】


 レオンハルトはそのやり取りを見て震えていた。

 酒呑童子と茨木童子の神気に圧倒されているのだ。


 バルザグルの巨体が轟音とともに崩れ落ちる。


 静寂――。


 城壁の上で剣を掲げるレオンハルト。

 戦場の中央に立つ俺とレンカ。


 二つの戦いに、それぞれの決着が訪れた。


 だが――俺は確かに感じていた。


 戦場の片隅に潜む、あの“不気味な影”の気配を。


 【まだ終わってはいない……魔王軍が、これで終わるはずがない……!】

もし、面白い。


続きが気になる。


先を読みたい。


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