2-27 学園都市防衛戦:不穏な兆し
それは秋頃、レオンハルトがちょうど学園都市を訪れたときだった。
引率の先生に加え、レオンハルトも同行し、四年生のフィールド実戦訓練を見学しようとした矢先のことだった。
――森の様子がおかしい。
いつもならゴブリン、コボルト、オークが出現するその森から、今日はオオカミの遠吠えのような不穏な鳴き声が響いている。
そこへゴブリンの集団が、まるで逃げるように森から飛び出し、生徒たちに襲いかかった。
四年生たちは瞬時に臨戦態勢を整え、協力してゴブリンを次々と屠っていく。
しかしその背後からは、コボルトやオークが続々と姿を現し、森の中は混沌の様相を呈していた。
その光景を見て、俺は胸に不安の予感を覚えた。
隣で蜻蛉切を構えるレンカが、小声で囁く。
「ユーマ、今日の魔物、様子が変じゃない?」
「確かに、魔物氾濫――いや、モンスターパレードにしてはおかしい。あの遠吠えも異常だ……先生に相談しよう――」
振り向くと、レオンハルトが立っていた。
「確かに、普段より魔物の湧き方が異様に多い。しかも――」
彼の視線の先、森の奥に目をやると――
「……待て。あれは……鉄牙狼か?」
レオンハルトの目が鋭く光った。
通常、このフィールドに現れるはずのない危険種。
しかも、一匹や二匹ではない。十、二十……いや、群れを成して押し寄せている。
「全員、下がれッ!! これは訓練ではない!」
教師の怒号が飛び、生徒たちは悲鳴を上げ、蜘蛛の子を散らすように退避を始めた。
俺は振り返り、レンカの手を取る。
「レンカ、俺が前に出る。君は治癒に専念してくれ」
「……わかった!」
剣を抜いたレオンハルトが叫ぶ。
「俺が時間を稼ぐ! その間に退避を!」
雷鳴のような咆哮と共に鉄牙狼の群れが押し寄せ、フィールドは一瞬にして地獄の戦場へと変貌した。
その時、俺は確かに感じた。
森の奥――誰かが、この異常を操っている気配を。
【……これは偶然じゃない。誰かが仕掛けてきている……!】
学園都市に、暗い影が静かに忍び寄っていた。
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